明日に向って撃て!

2012年11月30日 金曜日

ポール・ニューマンロバート・レッドフォード共演の1969年の西部劇映画「明日に向って撃て!(Butch Cassidy and the Sundance Kid)」。

強盗団を率いるポール・ニューマンと、彼の親友の様に一緒に行動するロバート・レッドフォード。彼らの強盗と逃避行を見せる。

所謂アメリカン・ニューシネマで、所謂無軌道な無法者の行く末を見せる。これがアメリカン・ニューシネマ流と言えばそうなんだろうけれど、西部劇の強盗団の快活な話から、重い逃避行のロードムービーになったかと思いきや、終盤では急にヨーロッパ的犯罪映画的になるし、時々で映画の雰囲気が変わり過ぎで映画をまとめる感じも無く、構成と演出が非常に微妙。

ただ、役者二人は非常に良い。ポール・ニューマンって、こういう軽い感じの役でもぴったりだし、哀しさも見せるし、やっぱり良い役者。
ロバート・レッドフォードも台詞は多くない役だけれど、渋さと言い、存在感と言い、ポール・ニューマンと双璧を成すだけの力がある。このロバート・レッドフォードはブラッド・ピットがそっくり。
ただ、今だとこの二人の役柄は逆の様な気がする。お喋りで女性には手の早い軽い男だけれど銃の腕はピカイチな役と、口数少なく考える作戦がピタリと当たる一団のボスという感じ。

この映画の衣装はあんまり西部劇的でなく、製作当時の現代的な南部の男っぽい感じだし、特に女性は60年代から70年代にかけての髪型や化粧で、物凄い時代感が出ている。男性はいいけれど、女性の風俗が余りにそこ過ぎて少々嘘臭く見えてしまう。
それにポール・ニューマンとキャサリン・ロスが自転車で戯れる場面で「雨にぬれても(Raindrops Keep Fallin’ On My Head)」がかかったのには笑ってしまった。今見ると何のアイドル映画、若者の青春映画なんだと、急な雰囲気の方向転換に苦笑い。それに終盤では行き成りスキャットが流れ始め、ヨーロッパ恋愛映画みたいな雰囲気を出すし。
一つ微妙だったのは、セピア色からカラーに変わる所。初めは古い記録映像的演出でセピア色なのは分かるけれど、そのまま本編に入り、一件あってからカラーに変わるという変な演出。カラーにするなら普通に本編が始まった所からでいいのに。途中で行き成りまたセピア色の写真で時間経過を見せるけれど、これも今までの雰囲気と違い過ぎで急に説明臭くなり、監督ジョージ・ロイ・ヒルの演出や編集が全然冴えない事。同じくポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが共演してジョージ・ロイ・ヒルが監督した映画「スティング」は非常に小気味も良かったし、演出も洒落ていたし、娯楽性も完成されていた事を思うと、この映画はまだまだ発展途上中だったという事か。

それに一つ納得したのは、この映画でも、映画史的に有名な最後の二人が飛び出して来る場面が、何かで見た時物凄くボヤッとした画質だった事に疑問を持っていたけれど、この場面は非常に遠目から撮った映像を静止画として顔の寄りまで寄っているから画質が粗いのかと分かった事。

この邦題、原題の「Butch Cassidy and the Sundance Kid」もそのまま過ぎで、素っ気無さ過ぎだけれど、「明日に向って撃て!」も何でわざわざ感嘆符を付けるのかも分からない題名。映画「俺たちに明日はない」に引っかけた、明日が無いけれどとにかく撃っているという皮肉なんだろうか?

アメリカン・ニューシネマって、当時は確かにニューシネマだったんだろうけれど、もう四十年近く経ってしまえば、ダラッとした展開と、単に登場人物の頭の悪さを見せられても、どう思ってよいか判断が付き難い。それに全体を統一的に見せる事をし難くする様な演出の方向転換で、まとまりの無い映画になってしまっているのは痛い。ただ、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード二人の魅力と演技でガッチリ捕まれる。

☆☆★★★

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