濡れ髪喧嘩旅

2012年10月16日 火曜日

市川雷蔵主演の1960年の時代劇映画「濡れ髪喧嘩旅」。

江戸の役人が地方への出向を命じられ旅に出るが、途中で美人局に引っ掛かった所を偶然隣の部屋にいたやくざ者に助けられ、二人の珍道中が始まる。

この映画はコメディ。良い所の坊ちゃんと言うか、世間知らずな役人川崎敬三が、あちらこちらで間抜けをして詐欺に引っ掛かりまくり、それを旅は道連れでしょうがないからと市川雷蔵が助けるばかりな展開。真面目な割りに、調子乗って結構羽目外すから失敗ばかりする川崎敬三は端正な顔で、アホな感じがピッタリで、嫌味無くしっかりコメディリリーフとして話を引っ掻き回し、市川雷蔵は上手く立ち回る手慣れた生き方をする人物で話を締める。この変てこな凸凹の二人組がなかなか面白い。
それと川崎敬三演じる主人公の名前は遠山金八郎。遠山の金さんこと遠山金四郎も出て来てネタにするけれど、この人は金ぱっつぁん。劇中でも普通に「金ぱっつぁん」って呼ばれているし。

それにこの映画がおもしろいのは、時代劇なのに現代劇風な所。主役二人は武家言葉と江戸弁なんだけれど、喜劇というのもあるのだろうけれど川崎敬三も他の人も結構現代語口調で、わざとらしい時代劇口調の時代劇よりもすんなり言葉が入って来るし、皆普通に演技出来ているしで、全然良い。
昼休みは「ピッ。ピッ。ピッ。ウワ~ン」と電子音とサイレンで知らせ、皆で一斉に弁当を食べるとか、途中の芝居小屋では三人組の女性が踊りも無く、ムード歌謡的な昭和歌謡を歌ったり、更に普通に「黄色いさくらんぼ」を歌うし、と思ったらこの三人組の女性はこの「「黄色いさくらんぼ」の実際の歌手スリー・キャッツだったりと、現代劇を持ち込んだ笑いを見せ、結構挑戦的かつシュールな事をしている。この今現在の事を時代劇に入れると非常に冷めるけれど、50年以上前の映画だとむしろ「へ~。」と感心。

市川雷蔵主演なんだけれど、主人公で話の中心は川崎敬三の方。こういう当時のスターが脇的な役で活躍する展開って、スターだけで持たそうとせず、色んな工夫しているので好きな種類の映画。もちろん市川雷蔵の蓮っ葉なカッコ良さを見せているし、立回りもあるけれど、それ以上に川崎敬三が活き活きと笑わせ、ちゃんと痛快喜劇時代劇になっている。ただ、終盤になると急にお涙頂戴な話になるのが玉に傷。喜劇で通せば良い所を。まるで吉本新喜劇。それでも吉本新喜劇と比べれば、こちらの方が十分おもしろいけれど。
やっぱり日本映画の黄金期は、ちゃんと観客を楽しませる娯楽をきっちりと作っていたのだと改めて思える楽しい映画。

☆☆☆★★

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