鷲と鷹

2012年10月13日 土曜日

石原裕次郎主演の1957年の映画「鷲と鷹」。

新入りの船員、石原裕次郎と三國連太郎が船内の輪を乱し、そこに船員の長門裕之の父親の殺人事件も絡んで来る。

話自体は「そうだろうなぁ。」という分かった展開で、この殺人事件の話よりも男の友情が中心。ほとんど船上で話は進み、乗組員は男だけなのでそれだと男臭くなると思ったのか、密航する女性が二人も現れ、無理矢理恋愛要素をねじ込んで来てまとまりは無くなって来る。しかもその恋愛話は分かり易い惚れた話で、まあしょうもない。別に男臭い話でいいのに、主演がアイドル石原裕次郎だから彼目当ての女性客目当ての恋愛劇を入れ込んでいて、余計な感じがする
それに登場人物は結構多く、その人達の人生模様も描かれるのにその話は大しておもしろくはないし、まったりしか話は進まず、やたらと周りの船員のコメディ場面が多いのも拍車をかけ、全体的に退屈になって来る。話の主軸になる殺人事件も、伏線張ったりして引っ張る割にあっさりと白状で事件が分かってしまい、更にその因縁を引っ張っての話をもう一幕する訳でもないしで、色々詰め込んだ割にどれも上手く機能しなかった感じのまま終わって行く。

夜の場面なのにやたらと照明当てて昼かと思えてしまうのは、白黒映画の名残りなのか、カラーフィルムの感度の悪さなのか。セットではその様な照明で、一方実際の海での撮影では昼なのに露出を絞って夜風に見せるので、画面構成のバラバラさにクラクラして来る。

石原裕次郎は当時の男前と若さだけで、演技は下手くそ。見た目も腫れぼったく、垢抜けない坊ちゃん風で、背が高い割にひょろっとしていて、あんまり船乗りには見えない。常にヘラヘラしていて喧嘩っ早く、全然カッコ良くもない役で、見ていてもうっとおしい。甲板で女性の為にウクレレ弾きながら歌歌う石原裕次郎とか、単なるアイドル映画でしょっぱ過ぎ、早送り。
石原裕次郎よりも三國連太郎の方が全然良い。演技もちゃんとしているし、渋い男臭い男前で、今見てもカッコ良い。時々の表情を見ていると、佐藤浩市がそっくり。
長門裕之はそのまま歳を取って行ったんだなと分かる、顔付き。若くて坊ちゃん顔で、良いとこの若者。演技はそれ程でもないけれど。
西村晃も出ているけれど、船員の中で一人殺気を感じる妙な個性の強い存在感。一人張り切っている感じも。
浅丘ルリ子も出ているのだけれど、歳行ってからしか知らず、この真ん丸な17歳の少女が浅丘ルリ子だとは言われないと気付かない程今とは別人。1960年代位までの女性、特に若い女性の画一的なよろめきな演出や演技で、今見ると笑ってしまう。

石原裕次郎は大して良くなく、むしろ脇の三國連太郎や西村晃に目が行く。主役なのに石原裕次郎のこの印象の残らなさは、脚本よりも彼の演技か。話もこの時代的な物なのか、大して盛り上がりもせず、起伏が乏しいままのっぺりと終り、楽しさよりもしょっぱさばかりが目に付いた。常に海の上の船での話なのに題名が「鷲と鷹」と言うのはどうなの?

☆★★★

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