王将

2012年10月06日 土曜日

バンツマこと阪東妻三郎主演の1948年の映画「王将」。

大阪の素人将棋指し阪田三吉の、将棋しかない日々の暮らしを描く。

話は、駄目な夫とそれを支える妻という、まさに浪花節。
何と言っても阪東妻三郎の阪田三吉が非常に魅力的。今でも大阪にいる様な至って普通のおっさんで、一人で跳ねまわる様な演技と、屈託の無い人懐っこい子供の様な笑顔で可愛らしささえある。
しかし、どうにも脚本と演出がいまいち。前半はまったりと阪田三吉の日々を見せ、何処へ行くのかはっきりせず少々退屈して来たら、いきなり話を飛ばし貧乏脱出で将棋の勝負に入るし、展開の減り張りがどうに悪い。
演出も、延々とお題目を唱えながら手術場面を見せ続け、しかも行き成り今までなかった字幕で展開を見せたり、結構話は飛ぶし。将棋の勝負も、どっちが押しているのかとかさっぱり分からず、阪田三吉が難しい顔して長考しているので分が悪いのかと思いきや、その後の台詞で「快勝、快勝。」とあり、腰砕け。家族の葛藤はしっかりと描いているのに、重要な勝負の部分は試合の様子を見せず、関係無い映像に字幕で済ましてしまうのは肩透かしが大きい。
あと、「勝つだけの将棋だけで、あんな手で勝って良いのか!」と娘が泣きながら訴えるけれど、将棋を指さないわたしは良く分からない。何が酷い手とかが分からないし、勝つ為に将棋指しているんじゃあないのとか、そこが阪田三吉の葛藤の大きな盛り上がりの一つなのにどうにもついて行けなかった。更に、後悔し、悔いたから、外に向かって大声でお題目を唱えるのも、いまいち意味が分からなかった。

阪東妻三郎は、自然なおっさんで非常に良い。阪東妻三郎の映画って始めて見たけれど、もっと二枚目の俳優かと思ったら、演技派の役者だったんだなと認識。ただ、所々大阪弁が微妙にずれて、気持ち悪い。阪東妻三郎を見ていたら田村高廣を思い出したけれど、息子である田村高廣ってソックリ。
阪東妻三郎は奔放に、普通のおっさんを演じているけれど、周りの役者は舞台劇な大袈裟感がある。特に大阪弁だからだろうか、ちょっとわざとらしい。
妻役の水戸光子って、凄い芸名。
あと、娘の演技が如何にも白黒時代の子役演技で少々うっとおしく、しかも何度も彼女が歌う場面が入り、そのキンキンと耳障りな歌声で、ずっと聞いていると発狂しそうになるのでスキップ。

将棋が中心の話だけれど将棋の勝負部分は弱く、その勝負をしっかり見せると言うよりは、阪田三吉を中心に巡る家族と将棋の関係を描いた映画。話的には王道な浪花節の家族ドラマで、何より阪東妻三郎の存在が演技がこの映画を支え、彼だから魅力的に見せる事が出来ている。

☆☆☆★★

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