ココ・アヴァン・シャネル
2012年09月18日 火曜日シャネルの起業者、ココ・シャネルをオドレイ・トトゥが演じた伝記的映画「ココ・アヴァン・シャネル(Coco avant Chanel)」。
孤児として育ち、その後姉と一緒に歌手を目指すも芽は出ず、将校の元で暮らし始める内に恋愛なのかな関係になりつつ、服飾に対する興味を追求し始める。
ココ・シャネルが主人公なのだから、彼女の洋服等の装飾品に対する姿勢や思いが中心になって来るのかと思いきや、貴族的上流社会での恋愛話に終始する。
良く分からないのは、彼女の思い。絢爛豪華な服を嫌い、質素に見える服を作り、着るのは、貧乏だったからの金持ちに対する反感なのかもはっきりしない一方で、金持ちのお屋敷で暮らし喜んでいるし、その上流階級を批判する割にそこから一向に出て行かないし。服に対する興味は、自分で衣装を縫っていたからだけでは説明としては分からないし。現在から見て、この20世紀初頭のフランスの上流階級の衣装は珍奇にしか見えないけれど、彼女もそう感じ、それを嫌うのは、今の感覚で見ればすんなり入って来るけれど、それが当たり前だった中で何故彼女がそう感じたのかが全然見えて来ない。彼女はちょっと偏屈以外の描かれ方しかなく、今でも一大ブランドであるシャネルの創業者、ココ・シャネルという人物を描く物語としては、全くおもしろくもないし、興味も引かない。内容的にはココ・シャネルでなくとも全然成立してしまう、20世紀初頭の男女の恋愛劇。
苦労からの成功譚としても結構弱い。孤児の部分は出て来るけれど、そこはあっさり。貧乏した、苦労したのも少し描かれる位で、早い段階で金持ちの将校の元で暮らし、この描かれ方だとむしろ彼女は凄く人に恵まれ、運が良い人にしか見えない。
映画としても、展開が非常に平板で、それぞれの話が流れて行く感じ。
意外だったのは、初めのシャネルの服装。シャネルと言うと、金ピカでギラギラ、ゴテゴテしているという印象を勝手に持っているけれど、この映画の彼女が作るのは、その貴族的な女性の衣装、やたらとゴテゴテと飾りを付ける帽子や服ではなく、非常に大人しい、素朴な服ばかり。今だとユニクロとかの普段着的な印象を受けた。
本編でも「年齢不詳」とネタにしていたけれど、オドレイ・トトゥの役としては若い年齢なのだけれど、どうにも雰囲気はおばちゃんっぽい。オドレイ・トトゥがおばちゃん顔というのもあるけれど、「アメリ」の時はまだ少女っぽさもあった二十代前半から、この映画では三十代になり、急に老けた感じ。役的に二十代中盤位なはずで、若い女性なはずなのに、オドレイ・トトゥがその年齢以上に老けて見えてしまうのは配役的に失敗かもしれない。
ただ演技は、将校の元では憂鬱な表情で、それ以外では明るい表情で、表情で語る部分が多いのは流石。
ココ・シャネルの話だけれど、話は彼女の恋愛の部分ばかりで、衣装の創作は描かれるけれどそれも少々で話の主題ではない。更に衣装による成功や女性解放も描かれはするけれど、それもおまけ程度の扱い。今まで散々恋愛話で来たのに、最終的に急に先進的な服飾家ココ・シャネルとしてそこでまとめようとするけれど、ただただ取って付けた感しかない。服に関しては非常に攻撃的、先鋭的なのに、恋愛は煮え切らない普通の女性で、別にココ・シャネルでする必要も無い恋愛物語でもない様に思えた。何だか、監督・脚本をしたアンヌ・フォンテーヌが、ココ・シャネルの伝記の気に入った所を抜き出してポンポンと置いて並べて行った感じの映画で、どうにも見せ方は足りないし、盛り上がりにも欠けるし、ココ・シャネルを見せるには物足りなさ過ぎる。
☆☆★★★