イルマーレ
2012年08月05日 日曜日2000年の韓国映画「イルマーレ」をアメリカでリメイクした、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロック共演の映画「イルマーレ(The Lake House)」。
湖の家から出て行ったサンドラ・ブロックと、その家を買ったキアヌ・リーブスが、数年の時を隔てているのに、何故か家前のポストを通じて文通を始める。
少しの時を隔てた恋愛話で、しかし実際に合ったりもする、ちょっと変わった話。
演出としては、そこには一緒におらず、出会わない二人の交流なので、二人の独白の切り替えしでそれを見せるのだけれど、良く考えるとそれは家の前のポストに入れないと交流出来ない設定なのに、間を開けず会話している様にしているので、完全な間違い。設定の前提があるんだから、こんな演出したら疑問ばかりで「??」で会話が入って来ない。こんな演出するなら、手紙じゃなく携帯電話やメールにすればいいのに。
それに見た目のファンタジーの演出としては良いけれど、全く意味不明な事も。過去のキアヌ・リーブスが歩道に木を植えたら、未来のサンドラ・ブロックの所に行き成り大きな木が現れたり。まず、街中のアパートメントの入り口前の歩道が、ちゃんと一段高くなっているのに何故か土むき出しなのも良く分からないけれど、歩道のど真ん中に勝手に木を植えたのに、それ以後誰もその木を何にもしないというおかしさは何なんだ。
違う時間のはずなのに、隣り合うベンチで口論し合う二人は、最早何のこっちゃ。始めは文通での会話だったはずが、普通に独り言で喋っているのに会話出来ているのは、過去と未来間で会話出来る特殊能力を手に入れたのかと。
ここら辺、時間を隔てた二人の演出はやりたい事は分かるけれど、だったらそんな設定いらず、普通に合って会話する話でいいじゃんと思えてしまう。
演出も設定の投げっ放し感があるけれど、一番気になる「何で、あのポストは二年程の過去と未来が繋がっているのか?」は完全投げっ放し。何にも理由や説明が無いので、これだとキアヌ・リーブスの父親が魔法使いか超科学者で、あんなポストを設置したとしか思えない。
その父親が設計した家、所謂デザイナーハウスとでも言うのか、全面ガラス張りで家の中まで透け透け。周りに人気が無い所だとは言え、湖の側でやたらと眺めが良いので覗きまくりで、こんな家に住みたくないし、建てた人間の気が知れない。
この時間を繋ぐタイムマシンポストは、ドラマや映画で良く見る「U.S. MAIL」と浮き出たポスト。写真集位の大きな本でも入るので、オチとしてはポストの中からキアヌ・リーブスがヌメヌメ這い出て来るのかと思った。
実際のこの映画の結末は、開始10分位の出来事で分かってしまうのだけれど、その振りは実は結末の為だけの振りで、「そんなんありなのか?」なぐったりする様な結末を迎えてしまう。待つ事が大事だったはずなのに、そこも描かれず、良い話にする為だけに何でもありで、突っ込み所ばかりの都合良過ぎな展開。
サンドラ・ブロックは何時もの喧しく、元気一杯な女性ではなく、大人しく、奥手な感じ。しかし、そんな奥手な風の割に結構積極的。見ず知らずの男性とダンス踊って雰囲気が良くなったからってキスするし、別人と同棲しててもやっぱりキアヌ・リーブスに走ってしまい、腰が軽く、始めは哀しい女性だったはずが、見て行く内に「こいつは頭の弱い人なのか…?」と思えて来てしまう女性を好演。
キアヌ・リーブスは、アクション映画でも結構感情の機微が乏しい感じがするけれど、普通な映画だとより大人しい演技で、これも大分静か、抑え切った演技。手紙で思いを募らせ、こっちは知っているけれど向こうは知らないまま会いに行き、キスまでしてしまう、ちょっと怖い感じも。
この映画がリメイク作品だとは言え、なんでわざわざ日本でも公開された映画と同じ題名を付けるのだろう?原題は「The Lake House」で、実際湖畔の家が重要な所で、イルマーレというレストランは殆ど関係無いのに。話す時や、検索する時、同じ題名だとただややこしいだけ。邦題を付ける映画配給会社は、商売だけを見ていて、内容は見て付けている訳でもないのか。自分所の商品をわざわざ落とす様な馬鹿な事やめないのだろうか?
この映画設定が特殊だから、どうしてもその設定を使った演出や展開に目が行くけれど、それがやりたい事をしてしまうだけに走ってしまった為、訳が分からない演出と、都合良過ぎな展開になってしまい、興醒めも良い所。時が離れているけれど、会えない訳でも無い、起きてしまった事は取り返しがつかない事はない、長い様に思えて一瞬で会えてしまう等々温さ満開で、これで感動出来るとどうして製作者は思ったのかが謎。
☆★★★★