タップス
2012年08月03日 金曜日ティモシー・ハットン、トム・クルーズ、ショーン・ペンがまだ20歳前後の若い時の共演映画「タップス(Taps)」。
閉校が決まった事を知った陸軍幼年学校の生徒達が、学校を占拠し、武装し、立て籠もり、犯罪者へと堕ちて行く。
これが大しておもしろくないのは、始まりから陸軍学校の学生達の日常を描く訳でも無く、ダラダラとこの映画の背景を説明的に描き、それが30分位も続くのだから非常にだるいし、退屈。その後も特に劇的な展開も無く、のっぺりし過ぎな展開で、どうにも退屈。自動車が故障してたまたま止まってしまうのは、恨まれている街の人間がたむろしている前とか、たまたま銃が暴発して撃たれるとか、展開優先の都合良過ぎる展開にも白ける。最後もそうなるだろうな展開で、そうなる前から分かり切った展開。途中に「映画や本では少し頭のおかしい司令官が出て来る。」と校長が言う台詞があるけれど、どう考えてもこれは振りで、実際そうなるのだから、分かり易過ぎで、何の仕込みなんだ。
登場人物達も、社会に対する不満とかではなく、自分達の学校が閉鎖されるからという身勝手な理由で蜂起し、上官の命令を聞くけれど、それ以上の上官の命令は聞かないという身勝手な行動で、それだけしか見えていない馬鹿な若者達の暴走を見せられた所で、何にも面白味は無い。元々、体育会系の乗りに違和感を感じる上に、宗教による選民思想もある上に、軍人エリートの自分達は優れ、他人は劣っているという選民思想も相まって、彼らは楽しむ対象ではなく、さっさと一斉射撃を浴びて皆殺しにならんかなと思うだけ。
主題は子供の時からの教育は重要という事なんだろうけれど、相当皮肉的に描いている。題材や導入的には、保守層が喜びそうな映画だと始めは思っていたけれど、段々とリベラル層向けの映画だと分かって来る。幼年学校とは言うけれど、小学生位の小さい子もこの頃から軍人として育成されている事に恐怖を覚え、更に生徒達は、悩む事無くいきなり武装し犯罪を犯しているのに、その事に関しては何ら戸惑いも感じておらず、特殊な状況下で育つと一般的な感覚の欠如が起こる怖さを描いている。校長からして、自分の銃に弾が入っている事を忘れ、撃ってしまうもうろくっぷりがあり、それで放心状態になってしまうという、偉そうな事を言っている割に、指導者が実は子供相手の裸の王様状態だったり。
でもアメリカらしいのは、子供は馬鹿で何も分かっておらず、大人はちゃんとしていて真面な事を言うという対比。これが日本のなら、若者は無茶だけれど正しく、大人は自分勝手で駄目な奴ばかりとなってしまうのだろうけれど。
役者は、ティモシー・ハットンは主役なので目立ち、気丈夫で、狂気に満ち溢れ、でも子供らしい弱さも持ち合わせている役をきっちり演技している。
ショーン・ペンもこれ以降の片鱗は少し見えるけれど余り目立たず、トム・クルーズもそんなに印象は残らない。
この映画は、相当皮肉的に若者を描いている。アメリカの保守層の若者が見れば何らか共感する所があるのかもしれないが、大人になり見ても、「この10代中盤から後半って、一番醜く、嫌な時代。」としか思わない。映画的にもまったり、のっぺりで終始早送り。話は何だか安っぽさがあり、どうにも退屈な映画。
☆★★★★