「デジャヴ」のデジャヴ
2012年08月02日 木曜日デンゼル・ワシントン主演のサスペンスなのに、変なSF映画「デジャヴ（Déjà Vu）」。
フェリーの爆発事件の捜査をしているデンゼル・ワシントンが、謎の映像装置での捜査に協力して行く。
「あれっ？これ見た事あるな…」という既視感があったので、このブログを検索してみたら、5年ほど前の2007年に見ていた。過去の自分を見ると、以前はそれなりに楽しんでいた様だけれど、また見ると評価は断然落ちた。
始まりは、大掛かりな河での船爆破から、デンゼル・ワシントンの地味な現場捜査と、細かい証拠集めをしている硬派なサスペンスだったはずが、急に変な突っ込み所の多いSFになり、それが実の所はSFと言うより、説明が不十分で意味不明なファンタジーの域に突入し、それの設定が矛盾しか無く、設定は崩壊のみ、脚本はグダグダで突っ込みしかなくなる。
この装置自体が矛盾や、意味不明、荒唐無稽、都合良過ぎな事ばかりしかない。単なる映像を映しているだけのモニターに、レーザーポインターの光を当てたら過去の人がその光を見るとか、失笑も甚だしい。もうその時点でこの映画は終わった事は明らか。単なるモニターに光を当てただけで時空を超えるのに、過去にデータを通信で送りもしないなんてアホ過ぎる。簡単にデンゼル・ワシントンが過去に行くのに、これまでの実験は失敗って、都合良過ぎな展開。「分岐宇宙論」なんて話が出て来て、過去を変えたら変えた方の世界は消滅するなんて話が出て来るけれど、だったらモニターに光当てた時点で世界は消滅しなきゃおかしいじゃん。
この映画、面倒臭い理論なんて放棄しているんだから、モニターに光を当てた様に、デンゼル・ワシントンがモニターに飛び込んだら過去に行けましたで良いじゃん。
この監視装置以外も結構無茶。領域外の映像を見れるゴーグルは、皆が見ているモニターの方の装置と何が違うのかが良く分からないけれど、単に今はいない過去の人物とカーチェイスする為の制作側の理由だけでしょと思ってしまうし、普通に録画されている町中のありとあらゆる全ての監視映像から同じ鞄を認識ソフトで探し出すのが数秒って…。
脚本の崩壊も酷いけれど、致命的なのは、全ての過去の日常を除く事が出来るのに、その映される映像は通常のハンディカムやヘリコプターからの普通の映画のカメラワークや構図で、如何にもカメラマンが撮りましたな映像でしかないので、特殊な映像と言う全く説得力は無く、演出は下手くそ。あと、過去の映像の位置を動かすと「ウイーン」と言う音が聞こえるのは一体何？過去にカメラを送っている訳じゃあないのに…。
デンゼル・ワシントンも初めは正義感の強い人物だったのに、犯人を追う為には、市民が自動車事故で死んだり、大怪我しても一切構わないという無茶苦茶な人物へと崩壊。映像だけで見ていた相手が気になり、危険を冒す、ストーカー染みて来たりも。
デンゼル・ワシントンは何時も通り、きっちり人物を演じているだけに、何でわざわざこんな映画に出たのかと思ってしまう。
あと、何故かデンゼル・ワシントンの衣装が何時もダサい。そこにはこだわらない人物という事にしても、ダサいけれど小奇麗だし。
ヴァル・キルマーはかつての鋭さが無く、老けて、太って、冴えない普通のおっさん。役的なモノなのかもしれないけれど、それにして目立たない。始めはデンゼル・ワシントンと対等位の位置だったのに、何時の間にかそこにいるだけの空気感へ。
この映画、そもそもの発想だけで、特に設定を詰める事も無く作ってしまったので、あちこちに無理しかなく、全てが崩壊していて見ていても馬鹿馬鹿しいだけ。SF的な設定としては良いのに、「デジャヴ」という話の展開優先で設定を見事に適当に作った為に、SF感と犯罪がグダグダで、ただ都合良過ぎな出来になってしまった駄作。こんな映画を捧げられた、ニューオリンズ市民は一体どんな顔してこの映画見たのだろうか？
これSF要素が一切なければ、序盤の導入の雰囲気からしておもしろくなっただろうに。
☆★★★★