エジプト人

2012年07月13日 金曜日

ミカ・ワルタリの歴史小説を、映画「カサブランカ」を撮ったマイケル・カーティスが監督した映画「エジプト人(The Egyptian)」。

古代エジプト時代の一人の医師の回顧録。
主人公の境遇は、捨て子から育てられ貧しい者を助ける医師になり、たまたまファラオを助け、ファラオ付きの医師になり、個人の思いと国の政治の中で翻弄されて行く話。ただその後も、かつての自分の様な孤児の医者を目指す子供に出会ったり、実はファラオの息子でしたなんて言う漫画にしてもしょっぱい盛り上げがあり、常に都合の良い、出来過ぎた展開ばかりで、まあしょうもない。
恋愛もこの時期のハリウッド映画の如何にもなメロドラマで、何らおもしろくも無い。その演出もまったりと気取った言葉を交わし、音楽もメロドラマ。主人公はおっさんなのに何故か純真で、娼婦に上手く乗せられる姿なんか見てられない。そんなおっさんの無垢さなので、その後の悲劇もしょっぱさ満載。主人公が10代20代ならまだ分かる人物と展開だけれど、見た目が30代40代なので、この純真さが見ていて気持ち悪くなって来る。

始まりは現在、と言ってもこの映画が製作されたのが1954年なので、すでに60年近く前だけれど、その現在のエジプトの姿で、そして過去数千年前の映像、それもマットペインティングだけれど、まあそんなモノかなと思っていたら、過去を語り出す主人公のいる場所が屋外セット、しかも一番初めの「スタートレック」並みの安さで、「あれっ?」とすでに思っていたけれど、その後も全体的にセットは作り物感しか感じない安さ。如何にも50年代のアメリカ映画的セットの安さ。映画自体が二時間半位の長さがあり、作品内でも時間が何十年もの年月が経つのに、何だか同じセットを何度も見ている気が。
合成場面も時代だからと言えばしょうがないかもしれないけれど、幕の前で馬車揺らしている感しかない、何ら迫力も無い、しょっぱい合成を見せられても…。
それに戦闘場面、弓矢で一斉射撃の場面は、「よーい、アクション!」で「うっ!」と言って倒れるエキストラの下手クソ演技そのままで、その安さに笑ってしまった。一番の悲劇の場面なのに、爆笑コメディになっている。

出て来る役者達はどう見てもエジプト人には見えないし、しかも皆英語でしか喋らないので、時代劇の嘘臭さばかり。欧米人のコスプレ学芸会に見えてしまう。

演出も、全編音楽が延々と流れ続けるのも見ていてうっとおしく、辛い。

同じ様な古代エジプト王朝の映画「クレオパトラ」は大作映画でお金も相当かけていたのでそれなりには見れたけれど、それでもこれも同じ様に安っぽく、嘘臭いセットと、時代劇染みた昔の映画感ばかりで、見ていても全く真実味は無い。映像に加え、話も安っぽく、そういう展開だからそうなるという設定や展開で、会話もつまらないし、見ていてもしょうもないだけ。エジプト一国の壮大な話なのに、ちんまい感じしかしないし、何故か最後に主人公はキリスト教的結論を演説して終わるし。
物語としてもしょうもないし、時代劇としてもしょっぱい。

☆★★★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply