カサブランカ

2012年07月12日 木曜日

ハンフリー・ボガートイングリッド・バーグマン共演の映画「カサブランカ(Casablanca)」。

第二次世界大戦下、フランスからポルトガルへの亡命途中の中継地フランス領のカサブランカへ亡命者が押し寄せ、そのカサブランカの酒場での昔の出会いの話。
戦争下の戦地から離れた土地でのサスペンスで始まるけれど、当時の上流階級の上品さで非常にもっちゃりしていて展開は遅く、そんなにおもしろくない。中盤からやっと恋愛映画としての話が始まるのだけれど、イングリッド・バーグマンとの思い出と現在の偶然の出会いは、今見てしまうと余りにメロドラマし過ぎていて、臭過ぎる。そのソープオペラは、渋い大人の男なはずなハンフリー・ボガートが、昔に捨てられた女性の事でグジグジ悩み、再び出会った彼女にネチネチ嫌味を言い、一方のそのイングリッド・バーグマンは実は結婚していたのにハンフリー・ボガートを誘って不倫をし、カサブランカへ来ても側に旦那がいるのに更にハンフリー・ボガートに気を持たし、彼の店へ行きたくないとも言わず、ただ自分が気持ち良い方へと行きたいだけの女性なのに悲劇の主人公の顔をしているのだから、どちらにも一切身が入らない。そのまま最後まで、「そうなるだろうなぁ…。」といったままの展開で、「ふ~ん…。へ~…。」

演出では良く分からない事も。
フランスからのフランス領のカサブランカへの亡命者の話と説明が入るのに、誰もが英語で喋り、ドイツの軍人さえも英語で喋るのだから、この状況がさっぱり分からない。単にアメリカ映画だからと言う便利さなのか?
それに戦時下のアメリカ映画でプロパガンダ的要素がある事にはあるけれど、ドイツの軍人は恐怖対象では無く、間抜けな軍人という位の扱いで、拍子抜けする扱われ方。戦時下の残酷さや、一個人の小ささの恐怖等一切無く、戦時中にしてはドロドロせず、余りにお上品。
それにやっぱり古さも。手紙が雨に濡れ、文字がドンドン滲んで行くのは、きっちり正面に手紙を向けて撮っているので、如何にもな演出で、わざとらしい。
音楽の使い方も今見ると古臭い。メロドラマ的良い場面の盛り上げ方とかは分かり易過ぎてしょっぱいし、店に警察が押し入る場面の「ジャーン!」はスペイン宗教裁判かと。それに話の途中途中にジャジーな音楽、歌が入るのだけれど、上品な雰囲気を出す為の音楽が逆に気取り過ぎ、「どう洒落ているでしょ!」感が鼻に付く。
あと、映画史にも残る名台詞とされている「君の瞳に乾杯(Here’s looking at you, kid.)」だけれど、中盤の特に印象的でも無い場面で連発し、最後の別れの場面で言った所で今更感はありあり。一回で十分。

ハンフリー・ボガートって渋い役と言うのは分かるけれど、いかつい顔に似合わない高いしゃがれ声で変な感じで、そんなカッコ良くは思えなかった。
イングリッド・バーグマンって綺麗だけれど、その綺麗さって、田舎町で一番綺麗といった素朴な綺麗さで、パリで出会った忘れ得ぬ女性というのが、いまいち合っていない気も。

この映画の駄目な所は、やっぱりイングリッド・バーグマン。自分勝手な不倫女が、昔の愛情を利用して自分の思い通りにしたいのに、扱われ方は悲劇のヒロイン。こんな彼女を見て、何に感動すると言うのだろうか?そんな身勝手な彼女を分かっているけれどやせ我慢するハンフリー・ボガートを思いやれって事なのか。そっちはそっちで、話を引っ張る割に彼の想いがいまいち伝わらないし。
当時の社会情勢や、演出、展開だという事を分かって見れば、その当時の評価が高かったのは何となく分からないでもないけれど、後年の名前の有名さや、聞こえて来る評価を前提に今見てしまうと、逆にどうでも良いうっすいメロドラマでしかなく、おもしろくはないので、大いに肩透かしを喰らった。

☆★★★★

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