望郷

2012年07月11日 水曜日

ジャン・ギャバン主演の映画「望郷(Pépé le Moko)」。

アルジェのカスバで隠れ住む、警察に追われる犯罪者のお話。
全体的に微妙。ジャン・ギャバンはカスバで暗躍する裏の顔役的地位なんだろうけれど、基本はコソ泥棒で、結構イラつくので、小者感が強い。入り組んだ迷宮の様なカスバが舞台なのに、その設定を活かした様な逃げて隠れて、ギリギリでかわす様な展開も無いし、奥に潜む暗い影という事でもないし。
始まりからして、警察が追っている犯罪者のこれまでを捜査会議で詳しく台詞で説明したと思ったら、その犯罪者が潜んでいるアルジェのカスバの入り組んだ町並みを映し続け、そこに住む人々の説明を詳しい説明台詞で紹介する丁寧過ぎる程の導入は、今だとしょっぱい。
それに、カスバでの生活の閉塞感から来る故郷への想いもいまいち出ていないし、ミレーユ・バランと出会った事により触発されてというのも、ミレーユ・バランがいまいち綺麗では無く、あのほっそいほっそい水平に引かれた眉毛を見ていると気持ち悪いので、話的にも彼女に入れ込むというのもいまいち納得に至らない。

それと良く分からなかったのは、主人公が警察に囲まれて「罠だ!」と言うのだけれど、それを謀った内通者は「警察が探しているぞ。」とちゃんと知らせに来ているのだから、意味が分からない。

ジャン・ギャバンは、役柄的に渋い男前なんだろうけれど、物凄く普通なおっさんが気取った感じで、見た目もゴッツリした顔で全然カッコ良くなく、何だかボビー・ヒーナンに見えて来て、カッコ付けている様がどうにも似合わない気ばかりしていた。

どうも古臭さと言うより、古さを感じてしまう映画だった。全体的な構成のまったり感、急な惚れ方、急な望郷、取って付けた様な終わり方等々。当時はこれで良い映画だと言われるのは何となく分かるけれど、今見てもそれ程は響いて来ない映画。

☆☆★★★

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