二人の武蔵

2012年05月13日 日曜日

長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎共演の時代劇映画「二人の武蔵」。

長谷川一夫演じる平田武蔵と、市川雷蔵演じる岡本武蔵という、二人の武蔵がいたというお話。
設定は一風変わってはいるけれど、如何にもな時代劇映画。皆、この時代の大袈裟な時代劇演技、赤い程のドーランとくっきりな目張り、濃い程の描かれた眉毛、竹光ばりばりな真剣でのコントの様な殺陣等々、今見てしまうと安い作り物感一杯。ただ、映画全盛期、時代劇花盛りの1960年の映画なのでセットは豪華、衣装も華やか。
歳を取り、真面目で冷静、礼儀正しい長谷川一夫と、ガツガツ攻めまくる若い市川雷蔵との対比や因縁を巡ってのやり取りはそれなりにおもしろいのに、どちらも飛び飛びな展開で流れが悪く、盛り上がりが欠ける。次々と勝負をしていくけれど、間を持たせず始まり、終りもあっさりと言うか、行き成り終わってしまうので、見せ場なはずの殺陣場面が迫力も無く、物凄くしょっぱい。特に勝新太郎の佐々木小次郎は野球の素振りみたいに刀を振ると燕返しで一瞬で決着するしょうもなさ。早撮り監督と言われる渡辺邦男の、まさに早撮り感ばかり出てしまっている演出、編集。

これの長谷川一夫の演技は結構酷い。台詞は素人並みの台本の棒読みの様だし、殺陣も棒立ちで舐める様な切り方でしょっぱく、迫力は顔だけ。
一方の市川雷蔵は無謀で血の気の多い人物を演じていて、全然市川雷蔵の方が良い。
勝新太郎は歳行ってからの勝新に馴染みがあるので、色男的な男前な人物で長いポニーテールな佐々木小次郎に物凄い違和感。

どちらも武蔵と言う同じ名前の人物が交差する因縁話なんだけれど、何人も剣豪を出し易く、その剣豪同士の剣劇にする為の武蔵で、武蔵でなくてはいけないというモノでもない様に思えたし、その盛り上げも演出は不味いし、一番の見せ場のはずな殺陣が撫でる様な緩さでしょっぱ過ぎ、全てが台無し。有名俳優共演での話題作りの映画に思えてしまった。

☆☆★★★

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