ブラザーズ・グリム
2012年04月27日 金曜日テリー・ギリアム監督のファンタジー映画「ブラザーズ・グリム(The Brothers Grimm)」。
グリム兄弟は作家と見せかけて、単なる伝説詐欺師というのはおもしろい。民話を収集していたのは、その話を利用して真実味を出す為だったなんて、相当にグリム兄弟をおちょくってる。ここら辺は、今でも東西どこでもある、悪霊だの、悪魔だの、占いだので恐怖を掻き立て、お金を巻き上げる話は事欠かないから、この一つ捻くれた設定なんだろうけれど。
前半のグリム童話を絡めての、現代から見て嘘くさい話と、珍奇な、やはり胡散臭い道具で、想像と現実の狭間をうろつく展開や、現実の迷信や道具としてのファンタジーは非常におもしろいのだけれど、後半には完全なファンタジーになってしまうと物凄い普通なハリウッドファンタジー映画になってしまうのが残念な所。小汚いファンタジーというのは良いのに。
一番のファンタジーは、フランス占領下のドイツなのに皆英語で喋る事。フランス人がフランス訛りで、ドイツ語でも無い英語喋るのは何だかなぁ…。
音楽の使い方が物凄くコメディっぽいのが気になった。愉快な音楽や、盛り上げて急に切ってくすぐるとか。それ以外でも動きでの笑いを取ろうとしているのだけれど、これがどれも外している。面白かったのは「子猫を蹴ってミンチに」位。笑いの天才「モンティ・パイソン」のテリー・ギリアムがどうした。ただ、フランス側の美術や話は最もテリー・ギリアムっぽさが出ていて、そっちをもっと見たかったりするのだけれど。
やっぱり問題なのはCGで、非常に凝ったセットで撮影しているのに、CG部分は合成が完全に浮いているし、実写のCGと言うより精巧なアニメーションで、折角の雰囲気が壊れている。美術やセットがテリー・ギリアムっぽくって非常に良い分、余計にCGの安さが目立つ。
役者は、主役のグリム兄弟、マット・デイモンとヒース・レジャーは何時もと雰囲気が違い非常に良い。ドイツ人っぽい見た目のマット・デイモンは現実志向で勝気な兄を、ヒース・レジャーは弱気な文学青年っぽい弟を演じ、この二人が映画を作っている。だけど、全く似てない兄弟。
この二人は良いけれど、王女の話になると主人公兄弟二人が急に脇役の様になってしまっている位、結局モニカ・ベルッチの美しさが持って行ってしまっている感はある。魔女は綺麗な分だけ恐怖の対象で、図抜けた登場人物。
最近のティム・バートンとかもそうだけれど、テリー・ギリアムの様な非常に個性の強い監督って良い映画も撮るのだけれど、自分のやりたい事を前面に出しまくる映画じゃなく、変に一般受けを狙った映画を作ると、雰囲気は素晴らしいのに話が大しておもしろくなかったり、如何にもハリウッド的な普通な映画で終わってしまう事が度々ある。これもそんな映画。
☆☆☆★★