西部開拓史

2012年04月12日 木曜日

まさに題名通りなアメリカ西部の開拓の歴史を描いた映画「西部開拓史(How the West Was Won)」。

1800年代中頃から50年位のアメリカ西部の開拓の物語を主人公が変わりながら描かれる。
西部劇でも、男臭いハードボイルドな銃撃戦モノなら興味はあるけれど、開拓の大河は「ふ~ん…。」位にしか思わない程興味は無いので、まあ退屈。一応一家族の人々が中心になって描かれ、はっきりと分かれてはいないけれど五章に別れ、時間が過ぎ、登場人物が変わって行く構成。しかし、その構成のせいで各人達の話をじっくりと描く訳でも無く、特に劇的に見せる訳でも無く、どの話もあさっり次々に進み全体にまとまりがない感じで、軽く撫でただけの様な薄い話を並べたばかりで物足りなさ過ぎる。章ごとに話が飛びまくりで、その間のどうしたのかもモヤモヤする所。
初めも、20歳というけれど20歳には見えず、実際演じているキャロル・ベイカーは30歳過ぎている長女と、50過ぎのジェームズ・スチュアートとのまあ早々とした恋愛話が始まって、すでに何じゃこりゃ感一杯。その後は地味な恋愛話を中心に展開されていたと思いきや、後半からは急に銃撃場面中心の話になるし。監督が第一章と二章と五章はヘンリー・ハサウェイ、第三章はジョン・フォード、第四章はジョージ・マーシャルとバラバラなので、雰囲気や展開もバラバラ。そのせいもあり、ジェームズ・スチュアートやグレゴリー・ペックジョン・ウェイン等有名俳優が出ているのに、誰もが脇役的。
撮影は全編壮大な実際の景色なのに、馬車の上での場面はほとんどが背景との合成で興醒め。激しい場面だからでもそうなのに、止まっている場面でも合成なのは流石にしょっぱい。それに、3台のカメラを使って撮影した「シネラマ」なので横25m以上の巨大なスクリーンで上映出来、非常に迫力はあるのだけれど、3台のカメラを使っているので丁度1/3ずつのカメラの境になっている所に影が出来、映像が気になる。特に人物がその境目に寄ると物凄く歪み、昔万博とかであった実験的な全方位映像を見ているみたい。

これを見ていて気になるのは、そこに皮肉の意味がどれだけあるのか分からないが、先住アメリカ人は盗賊的に少し出て来るだけ、良い人はビーバーを狩っているけれど、この時代からビーバーの絶滅の危機が始まっていたり、やたらと盗賊が多く、それから身を守る為に銃が必要等の、ある意味西部開拓史の暗い部分がさらっと出て来るだけの扱いな事。描きたいけれど製作上色々あってここまでしか出来なかったのか、初めからそんな事頭に無かったのか、分かりかねる所。日本でもやたらと「古き良き時代」を強調し過ぎるきらいがあるけれど、まあこれも「How the West Was Won」という題名から分かる様にそんな苦境の中頑張った人達がいたという話で、もっと「古き悪しき時代」を全面に押し出した開拓史映画って無いのだろうか?

西部開拓史だから歴史大河として描くという事なのだろうが、二時間半なのに結構話が省かれた感は強く、バラバラとした短編を一気に見せるので話にまとまりが無い感が強い。展開や構成としては連続TVドラマ向けなにの、映画一本でしているので物足りなさが出て来てしまう。

この映画の始まりの音楽を聞いていると「この音楽、何かと物凄く似ている…?」と小首を傾げ、先住アメリカ人襲撃の場面を見ていると「何か見た事ある様な…?」と思って調べてみたら、「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」がこの映画をオマージュ的に使っているからかと分かり、スッキリ。音楽のホーンの主旋律の間に「♪ジャンジャジャン」と入りまくる所なんか、まあ似ている。

☆★★★★

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