トゥルーマン・ショー

2012年03月23日 金曜日

ジム・キャリー主演の映画「トゥルーマン・ショー(The Truman Show)」。

これ見ていてもTV業界への皮肉と言うよりも、映画業界の傲慢さばかりが見え隠れしてしまっている様に思えた。映画がTVを皮肉っているつもりなのだろうけれど、映画は数百億円かけて何年にも渡って製作する事が出来るけれど、TVで街一つ作り込んでとか、街一つ分の住人を24時間毎日拘束し給料を払い続けるとか、TVでそんな殿様商売が成り立つ前提って、映画業界の当たり前が如何に常識と外れているかを逆に気付かせてくれる。どんだけ有名な映画製作者や映画俳優連れて来て、数十億円かけてテレビ番組作っても少しでも視聴者数や視聴率が落ちれば打ち切りって世界なのに、誰が普通の人の普通な生活を見たがり、それが何十年も続いたりして、映画製作者はTV視聴者とTV業界舐め過ぎ。こういう企画が挙がっておもしろいと思ったのだろうけれど、コメディとしてもこれだけ緩々な設定で、トゥルーマンが死ぬまで番組続ける、続くと思っている気なのか、ばれればそれこそ関係者・会社は裁判でトンデモない額の賠償や、拉致・監禁等々の罪で終身刑行く人バンバン出て来るだろうし、詰めが甘過ぎじゃあ馬鹿馬鹿しくてしょうも無過ぎる。
ジム・キャリーの周りの人間の気持ちも大して描かれないのも手抜き感が強い。偽の妻は急に正義心が出るのだけれど、彼に対する愛情があったみたいな話は一切無いし、親友も自分の給料は彼のおかげ位にしか思っておらず、長年の付き合いなのに実際周りにいる人達が単なる登場人物でしかなく、彼に対する感情がほとんど描かれていないので、物凄くテレビに撮られ続けているというネタを回す為だけに存在している作り物感ありあり。
そして気になるのはジム・キャリーの演技。コメディだからってお馴染みの顔芸と大袈裟な動きは、抱腹絶倒を目指した話じゃあないのだからもう少し抑えれば良いのにと思う。「エターナル・サンシャイン」だともっと普通な人演じていたのに。
この映画は良く分からない事だらけだけど、一番分からないのはトゥルーマンのいる世界を覆っているドームが「万里の長城に匹敵する巨大ドーム」だと言う事。万里の長城ってドームでもないし、万里の長城の何がドームの何に匹敵するのかが分からない。万里の長城は直線に近い構造物で、ドームは半球状の構造物だから、それを比較に出す理由がさっぱり分からない。まあ映画自体、全体的にそういう緩さばかりなんだけれど。

映画の視点としてはキリスト教的な「人が神の如く、他人の人生を操る傲慢さ」を描きたいのだろうけれど、単に映画製作者がテレビを、そしてその視聴者を馬鹿にしているだけと感じてしまう。要は映画が「テレビは馬鹿が見るモノ」と皮肉っているのだけれど、映画がそれしても嫌味ばかりであんまり意味無い。テレビがこういう事すれば意味はあるのだろうけれど。アメリカのTV業界はこんなに馬鹿馬鹿しくお金をかけずに、おもしろいリアリティ番組作っているなぁと思ってしまう。特にこの映画を見てしまうと。

☆★★★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply