アビス 完全版

2012年03月18日 日曜日

ジェームズ・キャメロン監督の映画「アビス 完全版(The Abyss)」。

これ、二回位は見たはずだけれどあんまり覚えていなかった。元々最近見た映画は覚えているけれど、昔見たモノはさっぱり覚えていないというのもある上に、海中で謎の巨大生物が登場するという映画がC級まで多くあるし、何でか知らないけれど「アビス」と聞くと関係無いのに「コクーン」を思い浮かべてしまう。

汚れが付き錆びた金属、パイプや格子、行き過ぎない現実の延長線上のSF的機械、海中なのに宇宙空間の様な光線の表現とか、まさにジェームズ・キャメロン。このハード寄りの薄汚れた作りたい雰囲気をしっかりと作り上げ、本当の様に映すのが上手い。
金属ばかりで狭い採掘基地内と広々と水しかない海との対比とか、静かな海中と海上は嵐で世界中が戦争の危機に直面している対比とか設定も上手いし、水中でのマスク越しの制限された視野とか、カメラの動かし方、何か作業をしながら自然に会話するとか演出もきっちりしてるなぁ。やっぱり流石はジェームズ・キャメロン。
それに合成は時代的にあんまり良くないけれど、模型やストップモーション・アニメーションでの動き等、CG的な軽さでなく、重さや存在感を感じるSFXもやっぱり良い。
これを見ているとジェームズ・キャメロンは同じで、基本は変わらないというのが分かる。軍人は暴走するし、異質な者との交流、人類の愚かさ、そして最強なのは女性という姿勢。最近の「アバター」でも同じで、何十年経っても同じ。あの伸びて来て、周りが映り込む水のCGなんて、それが好きなのねと良く分かるし。液体呼吸のガジェットとか、現実から少しはみ出してはいるけれどはみ出し過ぎていない感じも変わりはしない。
役者は、エド・ハリスは真面目なおっさんで見慣れた感じはするけれど、まだ40前なのに髪の毛が寂しく、しかも水に入ると哀しい事になってしまうのが気になるのと、ジェームズ・キャメロン初期のお馴染みの顔マイケル・ビーンが出ていたり。皆意外と自然な感じで演技がなっている。

これ、途中までハードよりなSF過ぎないSFで楽しいのに、結局説教臭い昔ながらの安いSFになってしまうのが玉に傷。蛇足とはこれの事を言う。冷戦終結直前の時期にこんな結末といい、今更感は公開当時の1989年でもしょっぱさありありだったんじゃないだろうか。それ程のヒットでもなかった様だし。これは完全版だったけれど、公開版の方はこれよりも30分程短く、大津波関係の話が切られているそうだけれど、むしろそっちの方が良い様な気もして、完全版と公開版を見比べてみたい。

一番凄いのはこの時期に「アビス」放送したNHK。しかも、途中で緊急地震速報がでかでかと画面半分位まで入り、大津波が戻った所で「この地震による津波の心配はありません」の字幕。「アビス」は対話と行動で大津波を防いだけれど、実際はそんな人間思いな事は一切無い訳で、悪過ぎる冗談を発している姿勢は凄い。

☆☆☆★★

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