グラン・ブルー完全版

2012年01月26日 木曜日

監督リュック・ベッソン、俳優ジャン・レノを有名にした映画としても有名な映画「グラン・ブルー(Le Grand Bleu)」。その無編集版とも言える「グラン・ブルー完全版(Le Grand Bleu/VERSION LONGUE)」。

最近ではリュック・ベッソンが関わっていたり、ジャン・レノが出ているなら、まあ見る必要はないだろうと思わせてしまっているが、昔は名前だけで期待感や興行にも繋がった、そのきっかけになり、それが良く分かる映画。
話は外さないの青春恋愛物語。恋愛の部分よりも、ジャン=マルク・バールとジャン・レノの気持ち良い男の友情、ライバル関係に目は行く。純真で物静かなジャック・マイヨールをジャン=マルク・バールがと、男気溢れる兄貴なエンゾをジャン・レノが見た目からしてもはまり過ぎな配役で演じ切っているし、認め合い、競い合う爽快な関係が心地良い。水中でシャンパン飲みながらの潜りっこ何て、演出として最高に上手いし、お洒落過ぎる。他の人達も皆優しい人なので、全体的なほっこり感がまた良い。
海中の映像は素晴らしい。光が差し込み、水色な浅い所から、真っ暗な中一つの電灯だけで潜って行くのにはゾクゾクする不安と美しさ。
演出や編集も小気味が良く、小洒落た台詞も地中海周りの景色だからこそすんなり受け入れられるし、この心地良い雰囲気を作り出し、それがすっと溶け込み、染み渡って行く。ただ所々、振りの直後に話が展開したり、3時間弱もあるのに場面をはしょった感のある編集だったりが気にはなった。一番気になったのは、胸毛ワッサワサのおっさんが半ケツ丸出しの海パン一丁で夜の町うろつく姿。その事に気付いたら、笑いの場面。それと、カラーに変わった一番初めの「アーユーター!」が、ニューシネマライナーだった事を知り喜んだり。

雰囲気は良く、良い映画なのだけれど、何だか妙に安っぽい。その理由は音関係。元々撮影では皆英語で演技しているのに、後からフランス語で会話を吹き替えているので、口と声は合っていない事も多いし、声が音響的に浮いている。フランス映画のはずなのに香港映画見ているみたいな感じに陥った。流石に、同一場面なのに、撮影時の同録の英語がいきなり吹き替えのフランス語になるのは酷い。音楽も、エリック・セラの劇伴がダサ過ぎ。この二点が終始気になって、良い映画なのにぶち壊しまくり感は強く、良さ半減。スリー・クォーター減。
それと良く分からないのは一番初めの子供の頃の場面。潜水師の話だから、青い海、青い空、白い雲を期待するのに白黒。それが暫く続いて、折角の景色は楽しめず。しかも父親が落ちて行くのに、祖父は子供も海に入れさせないだけで、全く何もせずで、これがその後のトラウマになり…だったら分かるけど、別に全く平気だし、余り効果的な掴みではない様に思えた。

ジャック・マイヨールはイルカの事になると周りの事が見えなくなり、イルカましっぐら。彼の純粋さを見せているのだろうけれど、イルカが出て来ると完全に行っちゃってる危ない人にしか見えない。最後まで見ると、イルカが出て来るとやばい、イルカにはまるのは壊れ始めているから、イルカは死の使い…にしか思えて来ない。その最後の場面が哀しさを出して印象的なのだけれど、この最後の場面が、この映画自体が予言じみていて怖い。それは実際のジャック・マイヨールもイルカに興味を持って行かれていたけれど、この映画の13年後の2001年に鬱病の兆候を見せ、その後自殺したという事。この事を知ってしまうと、この映画は恐ろしさと哀しさで溢れて来る。

映画それ自体は非常に心地良いし、なかなか良い映画だとは思うのだけれど、ジャック・マイヨールと言う実際の人物を使っているのに、その本人の現実とは全然違う作られた物語でしかなかったり、ジャック・マイヨールのその後を知ってしまうとどうにも良い映画とは言えず、ゾゾッと寒気が走る恐怖な映画になって来る。

☆☆★★★

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