ミスト

2012年01月25日 水曜日

スティーヴン・キングの小説「霧」が原作の映画「ミスト(The Mist)」。

スティーヴン・キング原作の映画だと、特にホラーでも怪物系の映画っていまいちなモノが多いが、この映画は結構評価が高く、見てみてそれも成程と思えるモノだった。
早い段階でのアレの出現と、はっきり見せてしまったので、「ドリームキャッチャー」を思わせる急な安っぽさで萎えはするけれど、それ以降の人間模様が良く出来ているので全く集中力は衰えない。異常な状況に追い込まれた時、人は冷静にいるか、感情で走るかの人間の本性を描き出し、血迷い事言ったり、無謀に走るよりは、慌てずしっかり考えて行動しましょうという、まあ普通の結論に最後の最後まで落ち着いている。
やっぱりおもしろいのは、宗教を如何に使っているかと言う所。宗教を強く信じる人をいじって、「危ないよ!」と叫んではいるけれど、宗教は人をまとめるのに便利でもあると見せていたり、それが現実のアメリカだけでなく、世界での狂気の比喩だったりして、大分皮肉的。この映画の設定自体、周りが五里霧中で誰が敵なのか、外からは何が何の理由で襲って来るのか分からないという現実の最近の情勢の比喩だったり、その日常の中の非日常の狂気によって無理矢理生贄にされるのは若い兵士で、それを何とも思わず、他人には「人殺し!」と叫ぶ狂気は現実を皮肉たっぷりに描いたりもしている。
この映画は終盤までおもしろいのだけれど、最後が何だか取って付けた感がする。スティーヴン・キングの原作だと、最後は出て行く所で終りで、読者に投げかける形で終わらせているらしいけれど、この映画は結末を見せる為に急に演出や脚本がお座なりになっている気がする。本来なら最後の行動への会話だったり場面がもっとあっても良いのに無いので、何故彼らだったのかが良く分からず、今まで立っていた人物達が急に誰でも良かった感が出るし、ガソリンスタンドや銃販売店、ラジオ等の情報も探す場面は一切無いし、最後にあの女性を出すのは無茶だし、何よりあれだけの一本道なのに主人公の自動車が来た方向と同じ方向からすぐさまあれだけ大勢で来るのは演出として完全に失敗している気がするのだけれど。最後の「どうだこの結末!」に持って行きたいのは分かるけれど、最後が急に穴が開いた感じが強くて、もう少し丁寧にすれば良いのにとは思った。あと、エンドクレジットでほぼ音なしのまま流れて行くのが5・6分あるのはキツイ。わたしは最後まで見る派だけれど、劇場だったらイライラしっぱなしで、主人公じゃあないけれど「ワー!」って言いたくなっていただろうに。

序盤の攻撃でいきなりしょっぱいモンスター映画の雰囲気になり、意外性を求めていたのに諦めてそちら目線で見始めるのだけれど、中盤の群像劇でその目線は変わり、ガンガン引っ張られ、終盤にかけてワクワクしながら見るのだけれど、最後まで見ると後味悪過ぎでぐったりし、心持と感情がグルグル回され、変な気分で終わる映画。

初めに「遊星からの物体X」のポスターが飾ってあり、「そう言う映画か…。」と思わせる仕込みがあると思ったら、この「ミスト」の監督フランク・ダラボンは「遊星からの物体X」と似た感じの設定の映画「ブロブ/宇宙からの不明物体」の脚本を書いていて、繋がりっぽいモノを見せている。更に「遊星からの物体X」のポスターの前の描きかけの画がガンマンだったのでクリント・イーストウッドの映画か何かかと思ったら、スティーヴン・キングの「ダーク・タワー」のポスターで、実は映画の初めにポスターで映画内容語っているというネタバレ。

あと「ミスト」と見ると、どうしても「M”i”st」じゃあなく「MYST」の方を思い浮かべてしまう。まあ「MYST」を映画化しても、最近のCGでいくらでもあの世界を再現できるだろうし、映画化企画もありそうな感じだけれど、あの謎を解き、世界を歩き回る楽しさのアドベンチャーゲームの要素が無くなるので、出来ても非難ばかりになりそう。

☆☆☆★★

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