黒い罠
2011年12月24日 土曜日オーソン・ウェルズ監督・脚本の「黒い罠(Touch of Evil)」。
オーソン・ウェルズの監督映画と言えば「市民ケーン」が当時としては革新的な映画でやたらと評価が今でも高いが、何回か見た覚えがあるけれどそれ程ピンとは来ていなかった。だが、これを見て何となくオーソン・ウェルズの才能が分かって来た。
やはり、何と言っても始まりの長回しの場面。カメラを上下左右自在に動かし、人物を入れ替えながら見せるのは、今見ても色褪せない輝きがある。また、その他の場面でも、画の構図や動き、照明の当て方や陰影の付け方等、非常に印象的な見せ方が多い。そして、本人演じる刑事のその濃さ。一線を越えてしまった人物だけれども、結局は感が当たっていたりと役柄的にも濃さを見せるが、オーソン・ウェルズの役柄の作り込み、演じ方も凄い。この映画が1958年製作なのでオーソン・ウェルズはまだ43歳だが、体中に何かを詰めてでっぷりと太った様に見せ、顔も50・60歳にしか見えない老けた汚い顔になり演じている。
オーソン・ウェルズが監督・脚本・出演と張り切りまくりなのでどうしても彼に目が行くが、他の出演陣もチャールトン・ヘストン、ジャネット・リー、マレーネ・ディートリッヒ等豪華。
話的にはアメリカの悪徳警官とメキシコの麻薬捜査官という人物が中心になり一風変わっているが、今でも通じる様な、ある様な出来事だし、今でも映画の題材として使われる様なフィルム・ノワールで、なかなか堅い感じで良い。それに編集も、カットの切り替えが早く、さっと次に行ったり、余韻を持たせたりと、結構現代的な流れ。
公開当時は興行的にはそれ程良くなかったらしいけれど、後年カルト映画として持てはやされるのも頷ける、非常に映像的に良い映画。それに何と言ってもオーソン・ウェルズの個性がガンガン前に出て来る映画。
☆☆☆☆★