トーク・トゥ・ハー
2011年10月23日 日曜日始めは献身的な哀しい愛の物語だと思って見ていたら、半分を過ぎた辺りの事実が見え始めた辺りから雰囲気が変わり始める映画「トーク・トゥ・ハー(Hable con ella)」。ベニグノ視点で見れば悲しくも美しい愛の話だけれど、アリシア視点で見ればサイコスリラー。まあ、不幸な過去があり、それを受け入れた良い人が犯罪犯し、最終的に素晴らしい感じで終わられても「そうですか…。」で終わってしまう。特殊であればある程、それが自分の中で重なる所や共感性が無いとさっぱり響かないというのが良く分かる映画。
ベニグノは身勝手で行ってしまった人物というのは分かるのだけど、良く分からなかったのがマルコの方。何年も前に別れた女性が居なくて寂しくて本当に泣くし、それ以外でも結構泣く場面が多くて、「こんな少女の様に敏感でポロポロ泣く様な、禿げ上がったいかついおっさんいるか?」とずっと引っかかりぱなしだったし、ずっと付きっ切りで看ていた彼女をあっさり見限りそれ以降何ら葛藤も無いし、ベニグノに入れ込む理由も良く分からず、最後の友情を超えた愛なのか、ただ優しさから来るモノなのか分かり難く、基本的にはこのマルコ視点なので見ていてもどうも乗り込めなかったのが、この映画が全くだった理由の一つでもあると思う。やたら泣くおっさん、度を越えた友情は熱いスペインのラテン男だからかとも思ったけれど、監督・脚本がペドロ・アルモドバルで、おすぎやピーコが絶賛していたから、そういう事なのだと理解。だとすると、前半の闘牛士は単なる接点と身を入れる為の便利な道具感が出て来て、何だかなの構成。
どうも乗り切れないのは演出も。ヨーロッパ映画だからなのか、それともアート系、芸術狙いなのか、思わせ振りな程長い間を取るけれど終わりは余韻も残さずばっさり暗転というのが、どうも苦手。それに途中に出て来る舞台や歌、映画がどうもしょっぱい。舞台は芸術と言ってもしょっぱいし、話には関係無いおっさんの歌アップでは感動しないし、白黒映画は上手く昔の雰囲気があって非常に良い出来なのだけれど、最後は失笑を誘う様な受け狙いのエロ漫画みたいで、しかもそれが引き金になるのだから何だかなぁ…。
アカデミー脚本賞を取っているけれど、話が遠回りして結局それがいるのか良く分からない事もあるし、出来事が都合良過ぎな事もあるし、行っちゃった人間の独り善がりを気持ち良く、綺麗な風に描いたから評価が高いのだろうけれど、見ていても別におもしろくはなかった。
☆★★★★