風と共に去りぬ
2011年10月12日 水曜日よく不朽の名作と言われ、「アメリカ映画ベスト100」の上位に挙がる映画「風と共に去りぬ(Gone with the Wind)」は気にはなっていてとにかく見てみたが、確かに凄い映画だとは思ったけれど別におもしろくはなかった。
何と言ってもヴィヴィアン・リー演じる主人公スカーレット・オハラを見ていてもイラッとするだけで楽しい訳じゃあないから。まず登場して、歳行っているのに元気な少女を演じている時点で「きっつっ…。」と一気に引き離され、わがままで、自分が求める男の為なら周りなんてどうだっていいという自分勝手さで突っ走るので、見ていて呆れ返るばかり。好きな人に振られたから腹いせと身近にいるために興味も無いのに彼の弟と結婚し、その弟はスカーレットを思って死んで行くけれどスカーレットは何とも思っていない。二度目の結婚も相手に興味は無いけれど金の為に妹の婚約者を奪い取り、彼はスカーレットの復讐為に死んで行き、やっぱりスカーレットは何とも思っていない。三度目もクラーク・ゲーブル演じるレット・バトラーと結婚するけれど金の為の結婚で、親友の死に際にその夫に自分の好きな気持ちを告白し、彼が自分の事を愛していないと知るや否や、レットに「彼の事は本当は愛していなかった。あなたの気持ちの気付いていなかった。」とのうのうと話す最悪な人間。特に彼女の側に、他人の事を気に掛ける優しいメラニーという人物を置いているので、ますますスカーレットの気ままさが強調され、メラニーの幸せとスカーレットの不幸を願うしかなくなってくる。金持ち女性の周りを不幸にしてでもの自分勝手な恋愛話は見ていても「…。」で終わる。
もう一方のレット・バトラーも酷い男で、スカーレットを散々誘っておきながら、結婚するとわがままさが魅力だと言っておきながらそのわがままに飽きてポイッと捨てちゃうし、どっちもどっち。このレット・バトラーは、中年と言うより老年に見え、いつもニヤケ顔で別にカッコ良い訳じゃない。黒人差別の問題が良く挙がるけれど、レット・バトラー含めこの映画に出てくる男性全般が、アホか嫌な奴ばかりで、男性蔑視と言うか、誰もが安っぽい人物設定になっている。女性が書いた女性向けの恋愛物語だからそれは良いのかもしれないけれど。
話の展開も、初めは南部の支配者階級のお遊びで別におもしろい訳では無く、中盤になって南部の崩壊からスカーレットの苦難と建て直しの物語になり、強い女性として生きて行くのかと思いきややっぱり自分が求める愛の為なら他人なんてどうでも良い!になってげっそり。後半のレット・バトラーとの恋愛も、暗転したと思ったら時間が急に進んで話が飛んだのに、話はグダグダしているしで、もうちょっとまとまりがあっても良い感じ。最後に「結局誰の愛も手に入れられず、残ったのは…そう!裏切らない土地よ!」で終わったのには何じゃこりゃで腰砕けになった。
それに話の視点は南部寄り、南部の人々は皆素晴らしく北部の人間は悪い奴、南部の駄目な部分は見せないと極端過ぎ。それよりも、題名にもなっている「古き良き時代」を高らかに描くというのが、これだけではなく、日本の昭和三十年代関連のとかバブルは良かったみたいなの過去の称賛モノが全般大っ嫌いなので、白けていた。
当然と言えば当然なのだけど、演出が古い。物語に合わせて、盛り上がる所は盛り上がる、悲しい所は悲しい音楽が延々流れ続けたり、皆が説明台詞過ぎたり、スカーレットがやたらと自分の気持ちや考えを大きな独り言で言ったりする。これ好きじゃないのは何でかなと思ったら、最近でも良くある日本の安いドラマがこれでがっくりするからだった。
☆★★★★
あと、時間の長さはやっぱり問題大。全長3時間42分もあるので途中中断すると、時間を空けて再び見始めるのに意力が必要になるし、かと言って一気に四時間弱は流石にきついし。これを上映した頃、まだ劇場の席が今の様にフッカフカの良い椅子じゃなかったと思われる当時、幕間があるにしろそんな長い時間黙ってじっとして見ているのは大変だったのではなんて思ったりした。
確かに映像は素晴らしい。衣装は皆珍奇だけど豪華で、大きなセットや大勢の人を動員した画や、特に背景との合成は良く出来ていて今見ても欠損無い。ただ、話的に何がおもしろいのかと考えてみても、おっさんが少女漫画やハーレクイーンを読んでも、その設定や構成には興味が行くけれど物語としては別に楽しめないというのと同じ事なんだろうと思う。男性から見て、恋愛映画としては別におもしろくないし、一人の人物から見る歴史映画としても微妙だし、何がしっくりおもしろく見れるのかなと思ったら、悲劇ぶってるけど結局全部自業自得ばかりな人々が織りなすコメディとしてだったらなんだけれど、それだと一回流れが分かってからの二回目じゃあないといけないし、時間も考えるとやっぱりしんどい。