落下の王国

2011年10月08日 土曜日

この「落下の王国(The Fall)」は、予告を見てその映像美が気になったのか、紹介の話を聞いてその物語と現実の交差が気になったのかは忘れたが、前から気になってはいたので見てみた。

怪我をし恋人を奪われ生きる気力の無い男が、骨折した少女に勝手に作った物語を聞かせながら、現実と物語が交差しながら立ち上がる話で、久々に映画で泣きそうになった。
始めはこの劇中の物語が余りに飛び過ぎたファンタジーでついて行くのがしんどく、諦めかけたのだが、物語が現実の男や少女と繋がり変化し始めて行く辺りからは一気に掴まれた。徐々に男が少女に救われて行くのは涙無しでは見られない。ここはこの病院に教会があり神父もいるが、この男を救ったのが一人の特に難しく考えていない普通の少女だったのが、何とも印象的。終わりも実は暗雲立ち込めてしかいないのに、とても爽快に終わっている二重構造も上手い。

この映画は映像美が取り上げられる事が多く、確かに美しい画で非常に印象的だけれど、空想とは言え、現実の世界各地での撮影が唐突に場所を変えるので見ていてクラクラしてくる。また、衣装も取り上げられる事が多いが、はっきり言ってやり過ぎ感ばかり目立ち、浮いていて違和感ありまくり。ほとんどスター・ウォーズの世界。
で、素晴らしいのは構成と少女の演技。現実を反映し変わって行く空想物語がやがて現実を変えるという構成は上手い。それにこの少女の演技が素晴らしい。天才子役と言うと、「感情豊かにいかにも演技してますよ、私役者ですよ。」といった見ているとイラッと来るTVの人気者の様なあざとさが無く、色んな事に興味があるけど集中力が続かない普通の子供を演じているというよりも、演技ではなく映画で普通に遊んでいる感じなので、微笑ましく見ていられるし、それがガンガン響いて来る。

映像美が取り上げられやすい映画だけど、この映画は話の構成と心を鷲掴む様な男の哀しみと希望、少女のただ好きな気持ち、心の有り様が素晴らしい映画。
ただ、この邦題「落下の王国」ははっきり言ってダメな付け方。原題の「The Fall」は、落ちてしまった男の、物語に没頭する男と少女の、それでも男は諦めずにの「The Fall」という様々な意味が含まれていて、エンドロールの最後の「The Fall」で唸るのに。

☆☆☆☆★

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