日本の漫画・アニメーションの世界での実状やいかに? 2010年度版
2011年08月01日 月曜日昨年、近年話題になる日本の漫画やアニメーションの海外での人気が実際はどうなっているのかが気になり調べて「日本の漫画・アニメーションの世界での実状やいかに?」という記事にまとめてみたが、2010年度の数字が出て来ているので2010年度版として調査。
2009年までの世界各国の状況は「日本の漫画・アニメーションの世界での実状やいかに?」へ。
まず日本国内の漫画市場。
出版科学研究所による調査では、2010年度のコミックス・コミック誌推定販売金額は4091億円で、2009年の4187億円から90億円程減少。(出版状況クロニクル35)
ピーク時の1995年の5864億円から約30%減少して来ていて、この市場規模はバブル景気が始まった頃の1988年の4005億円に近い。(漫画の市場規模)
漫画単行本は2315億円で、2009年の2274億円から40億円程増えてはいるが、雑誌の方が2009年の1913億円から2010年は1776億円と140億円程も減少。単行本はピーク時よりも200億円程減り、漫画雑誌はピーク時の半分程まで減少している。
また、漫画雑誌の発行部数は1995年の15億9474万冊から年々減り続け2010年で7億7974万冊、漫画単行本はやはり1995年に山場がありそこから少し落ち込むが、2005年の7億4252冊から2010年の6億3842万冊に減少。(出版月報 2011年 2月号)
一方で新刊点数では漫画雑誌は1995年の4627点から2009年の8899点と倍近く、漫画単行本は995年の2094点から2009年の3028点と1.5倍近くに増えている。(出版状況クロニクル 23)
新たに多くの数を出しているが販売数も販売金額も落ち、今までの「雑誌連載から単行本化」という今までの漫画産業の基本的な形態が崩れて来ており、単行本が年間1000万冊以上売れている「ワンピース」の様な漫画の連載が終了してしまうと市場全体が落ち込むという、怖い一極集中になっている。
日本国内のアニメーション市場。
株式会社 メディア開発綜研の調査「アニメ市場の減少傾向止まる」では、2009年の国内市場規模は2164億円。
ビデオソフトの売上は社団法人日本映像ソフト協会の「JVA REPORT No.145 2010年統計調査報告」によると、日本アニメーションのビデオソフト全体の売上は約754億円、海外アニメーションは76億2200万円。
日本動画協会の「日本のアニメの海外展開 2011年版」の「日本動画協会会員社アンケートによる海外販売売上推移」では、2009年度で82億1900万円で、ピーク時の2006年の168億1600万円から半分以下まで減少している。
また、総務省 情報通信政策研究所(IICP)の「メディア・ソフトの制作及び流通の実態」2008年度調査結果では、日本の地上テレビ番組の輸出金額は75億円、その内アニメが51.5%を占め38億6250万円となっている。
・アメリカ
海外で一番日本漫画市場が大きいアメリカ。
The Comics Chroniclesの「2010 Comic Book Sales Figures」によると、北アメリカのDiamond Comic Distributorsが取り扱うコミックス、トレードペーパーバック、雑誌の売上は、4億1860万ドルで、2009年の4億2947万ドルから2.5%の減少。
アメリカのポップカルチャー業界情報サイトICv2のICv2白書(ICv2 White Paper)によると、のグラフィック・ノベルの売上は、2001年の7500万ドルから2008年の3億9500万ドルへと5倍以上に急激に増加したが、2009年は3億7000万ドル、2010年は3億4000万ドルと年々減少している。(Graphic Novel Sales Grew In 1st Half of 2011)
日本漫画のアメリカでの売上は、2010年は1億2000万ドルで、2009年の1億4000万ドルから15%減少。ピーク時の2007年の2億1000万ドルから毎年売上が減少し、43%の減少とほとんど半分近くまでに減っている。しかも、2011年の上半期でもその減少は緩やかになったとは言え、10%の減少が続いているそうだ。
日本の漫画はグラフィック・ノベルの分類に含まれるので、グラフィック・ノベルの2009年から2010年の減少分3000万ドルの内2/3の2000万ドルが日本の漫画で、グラフィック・ノベル市場は2011年上半期の売上が伸びているという状況と大分対極になっている。
更にアメリカでの日本漫画市場は大分厳しい様で、日本漫画を翻訳・出版、また日本人以外の人が日本漫画の形態で描いたOELマンガも出版していた大手のTOKYOPOPが2011年5月31日にアメリカでの漫画事業から撤退している。(End of an era: Tokyopop shutting down US publishing division)
日本で有名な「BECK」「GTO」「ケロロ軍曹」等を出して、更にアメリカ人の好みが分かった現地人が描いたアメリカ向けの漫画も出していたのに、最終的には6人にまでリストラしてそれでも撤退というのは、落ち込みの激しさは相当だという事だと思われる。
Nielsen BookScanによる日本漫画がそこへ分類されるグラフィックノベルの2010年の個別売上ランキング。(LOOKING AT BOOKSCAN: 2010)
1.DORK DIARIES 16万8330冊
2.TWILIGHT GRAPHIC NOVEL V1 12万6558冊
3.ADV OF OOK & GLUK KUNG FU CAVE 12万4808冊
これ以下は「スコット・ピルグリム(Scott Pilgrim)」がズラッと10位まで6万~9万冊売れている。
1位の「DORK DIARIES」は去年「WATCHMEN」がバカ売れして42万冊も売り上げた事と比べると減ってはいる。
一方日本漫画は、上位50位中9作品しか入っていない。2009年は半分以上の26作品が日本漫画だった事を考えると激減。
日本漫画はやはり「ナルト」が11・12位でトップ。しかし、47巻が5万3000冊で去年と同じ位の売上なのに、48巻は4万2000冊、49巻は2万6000冊と半分以下まで落ち込んでいる。
The Comics ChroniclesのDiamond Comic Distributorsの調査では、所謂アメコミといわれるヒーローモノのコミックスの2010年の売上では「Avengers #1」が17万5100冊で1位。以下「X-Men」や「Blackest Night」等、26位までが10万冊以上売れており、303位までが5万冊以上売れている。(2010 Comic Book Sales Figures)
アメリカではここ数年でピーク時に比べて日本漫画の売上が一気に半減したのは流行の終焉とも言えるが、一体何なのだろう?
違法コピーが槍玉に挙げられる事が多いが、The Comics Chroniclesの「Comic Book Sales by Year」では北アメリカのDiamond Comic Distributorsのコミックス全体の売上では、2003年が3億1060万ドル、日本漫画の売上のピークの2007年は4億3000万ドル、2010年では4億1860万ドルとここ数年は減少しているが、それでもその幅は1割以下程度なのに日本漫画だけが急激に落ち込んでいるし、また、フランスではこれ程急激ではない事を見ると別の理由があるのではないのだろうか。以前の「ICv2白書」でも指摘があったが、「日本漫画ブームの中心のティーンエージャーの少女漫画ファン達が大人になり、もっと大人向けの漫画に興味を持っているの関わらず他のモノに行ってしまった」事が大きいのかもしれない。2010年のグラフィックノベルランキングの2位に「トワイライト」のグラフィックノベルが入って来ているし、日本漫画で「ナルト」の次に18位に「黒執事」や「ヴァンパイア騎士」が入って来ているのを見ると、やはりアメリカの日本漫画の読者の中心がティーンエイジャーの少女で、そこへの販売戦略が上手くいっていないというのがあるのだろう。
アメリカのティーンエイジャーは小遣いが少なかったり、もらっていなかったりとお金を持っていない世代という事を目にする。更に輸入品の日本漫画は、翻訳、印刷と経費がかかり1冊10ドル位するので、日本での翻訳アメコミと同じ位高くつく買い物で、不況もあり、もっと違う所で消費する事が増え段々と読者が減って行く傾向になって行っていることもあるんじゃなかろうか。
続いてアメリカでの日本アニメーション市場。
日本貿易振興機構(ジェトロ【JETRO】)の調査「米国におけるコンテンツ市場の実態(2010-2011)」では、2009年のキャラクター商品等も合わせた日本アニメーションの推定市場規模(小売ベース)は27億4100万ドルで、ピーク時の2003年の48億4000万ドルから半分近くも減少しているが、ここ5年程は大体同じ水準で推移している。アメリカの調査会社NPDの調査では日本のキャラクター商品の約6割が「ポケモン」で、未だ強し。
2009年にアメリカで劇場公開された日本アニメは「崖の上のポニョ」と「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」で、「ポニョ」の興行収入は1500万ドル、「ヱヴァ」は11万ドル。
一方、アメリカのアニメーションは「カールじいさんの空飛ぶ家」が1位で2億9300万ドル。「モンスターVSエイリアン」が2位で1億9835万ドル。(Box Office Performance for Digital Animation Movies in 2009)
2010年アメリカで劇場公開された日本アニメは「サマーウォーズ(Sama Wozu)」で1万5623ドル。(Box Office Performance for Hand Animation Movies in 2010)
一方、アメリカのアニメーションは「トイ・ストーリー3」が1位で4億1500万ドル、「怪盗グルーの月泥棒」が2位で2億5120万ドル。
(Box Office Performance for Digital Animation Movies in 2010)
かつては「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」が8574万ドルの興行収入があり、今でもアメリカでの日本アニメーション興行収入1位なのだが、最近のポケモン劇場版は劇場公開が無くビデオスルーやテレビでの放送で終わっているという状況になっている。
TVでの日本アニメの放送は微増傾向だが、今までに実績のあるアニメが優先され、新たなアニメの枠確保は難しい様。
アメリカでも「ドラゴンボール」の人気は高い様で、「ドラゴンボール改」がニコロデオンの子供向けアニメチャンネルNicktoonsにおいて2010年に最も見られたアニメで、平均54万9000人の視聴者がいた様。
(Nickelodeon Is 2010’s Top-Ranked Cable Network, Marks 16 Years as Number One)
その一方で、幼児・子供向けアニメで一番見られているのは「スポンジ・ボブ」で660万人が見ていたり、大人向けでもある「Family Guy」は一般の視聴率の上位10位にも入って来て、平均912万人も視聴者がいた時もある程。(Fall 2010 ratings: Football on NBC tackles competition, ‘Family Guy’ rallies the youths)
アニメーションも良く違法ダウンロードの影響が言われるが、そのような違法ダウンロードをする年齢層が見るアニメーションの視聴者規模がそれ程大きくないので影響が強いのかとも思うけれど、市場規模がここ数年横ばいなのを見ると、2003年がピークで流行が終焉したという事のなのだろうか。アニメも一時期の勢いは無く、全体を見れば好調とは言えない様子。
・フランス
フランスのバンド・デシネ情報サイトdu9の「Numerology, 2010 edition」によると、2010年のフランスのバンド・デシネ、コミックス、漫画の総売上が2009年より2%減少の3億1320ユーロ。
市場全体が売上冊数は2007年をピークに、売上高は2009年をピークに減少している。
日本漫画の売上高のシェアは2008年の26.1%、8000万ユーロをピークに年々減少しており、2010年は23%で7200万ユーロ。2008年には日本漫画全体で1250万部売れていたのが、2010年には1100万部へと減少。
この状況は「急激に市場が成長し、供給が過剰になっている」、「少数の売れ筋に依存している」と指摘されている。
フランスの日本漫画は、4万冊以上売れたのが9シリーズで、「ナルト・ワンピース・FAIRY TAIL」の売上上位3シリーズが日本漫画の売上全体の25%を占め、売れた日本漫画の7冊に1冊が「ナルト」という状況で、出版社は新規読者の獲得に苦戦しているそう。
個別の売上では、
1.Joe Bar Team 7 (22万6300冊)
2.Les aventures de Blake et Mortimer 20 (22万6000冊)
3.Largo Winch 17 (20万2000冊)
日本漫画では6~8位、11~13位と上位6位まで「ナルト」で、6位の47巻が12万1900冊、13位の51巻が9万3000冊。その後を29位・30位・33位・40位が「ワンピース」で5万冊前後。42位・46位・49位が「FAIRY TAIL」で4万冊程。上位50位中日本漫画は14冊。
2009年は上位50位中日本漫画は13冊と冊数的には変わらず、「ナルト」「ワンピース」「FAIRY TAIL」等の上位の顔ぶれが余り変わっていないのと、売上冊数も大体同じ事を見ると、売れる物は変わらず売れているがそれ以外が売れなくなって来ているといった状況。
「ナルト」の寡占状態が続いているのは、日本漫画の単行本の値段は6.5~7ユーロ位で、アメリカよりも売れる分安くはなっているが、それでも日本漫画の読者の中心となっている若い世代にとっては値段が高い様で、何冊も購入出来る訳では無いので、どうしてもmanga読者は人気シリーズに集中してしまう事がある様だ。また、最終巻が出されるとそれ以後極端に売れなくなってしまうという危うさがある様で、去年売れていた「ソウルイーター」は今年は上位に入って来ていないし、日本で完結した漫画は月に1冊の頻度で出される為、既に完結した漫画はあっという間に人気が落ちる事も。
続いてフランスでの日本アニメーション市場。
フランスの国立映画センター(Centre national du cinema et de l’image animee【CNC】)がアニメーション市場と現状を調査した「le marche de l’animation en 2010」。
2010年のフランスでのアニメーション映画公開数は24本。10本がアメリカ、7本がフランス、日本のアニメは「サマーウォーズ」「えいがでとーじょー! たまごっち ドキドキ! うちゅーのまいごっち!?(Tamagotchi: The Movie)」の2本。個別の興行収入が出ていないので、観客動員数では「サマーウォーズ」が3万2千人、「たまごっち」が4千人。
アニメーション映画全体での1位は「シュレック フォーエバー(Shrek 4 – il etait une fin)」で461万人。
フランスのアニメーション映画のビデオ市場は、2010年が1億1702万ユーロ。2009年の1億1180万ユーロから微減。その内、アメリカのアニメーションが9610万ユーロ。フランスのアニメーションは1122万ユーロ。欧米以外のアニメーションが518万ユーロ。
映画以外のビデオ市場は、アニメーションを一分野として分けておらず、「子供向け」の分類があるだけ。それが2010年が9788万ユーロ。
ジェトロの調査「フランスを中心とする欧州のコンテンツ市場(2011年3月)」によると、フランスにおける日本アニメのDVDの売上は2009年の2107万ユーロから、2010年の1735万ユーロと減少。2005年の3250万ユーロに比べると半分程にまで落ち込んで来ている。
単純に2010年のフランスのアニメーション映画と子供向けビデオ市場を足した2億1490万ユーロと比べると、フランスにおける日本アニメは市場全体の1割以下。
2010年の日本アニメーションのDVD個別の売上は、
1.ベクシル (14737枚 15万ユーロ)
2.劇場版ポケットモンスター セレビィ 時を超えた遭遇 (12783枚 17万ユーロ)
3.劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 裂空の訪問者 デオキシス (11451枚 15万ユーロ)
フランスの国立映画センターの調査は非常に詳しく、フランスでのテレビアニメーション放送の全放送局での全放送時間数まで出していて、その内訳は45.8%が自国フランス、30.4%がアメリカ、14.3%がフランス以外のヨーロッパ、9.5%がオーストラリア・カナダ・日本。オーストラリア・カナダ・日本のアニメの放送時間数も2009年の565時間24分から、2010年は381時間42分と減少。年々フランスのアニメーションの割合が増えている。
元々EUでは各国の文化と産業を保護する為にテレビの放送枠の50%以上を自国を含むヨーロッパ制作の番組にしなくてはならない「国境なきテレビ指令」があるが、フランスでは更に「クォータ制度」があり、放送局はフランス制作の番組を40%以上、EU制作の番組を60%以上にしなくてはならないという義務がある。その残り40%で外国アニメーションの放送となる訳だが、日本のアニメが少ないのは子供の視聴者には暴力的だという事で敬遠される、それ以上の世代やアニマ層はインターネットで見てしまうので視聴率が稼げないという理由がある様。地上波等の放送局によってはほとんど日本のアニメを放送していない事もある様。
ジェトロの指摘では、「ナルト」の爆発的ヒットの後が続かず、多くの作品が提供されているが「ポケモン」「ナルト」「ハローキティ」の様な確実に売れる作品が良く売れているだけだそう。
フランスでもアメリカの様に漫画の売上が上げ止まりから減少に転じ、アニメーションはここ数年で半分近くまでに落ち込んでいる。「ポケモン」や「ナルト」によるブームが起きたがその次の売れる作品がなかなか出て来ない様で、売れるモノが売れ、それ以外がそうでも無く、全体的に減少傾向になって来ているのがフランスでも流れとなっている様。年齢が高くなるにつれ購入も減って行き、さらに2000年以降に生まれた子供は日本のアニメの放送が減った来た時期でもあり馴染んでなく、これからの伸びが難しくなっては来ている。
・ドイツ
Comic Report Onlineの「Der Manga-Markt 2010」によると、2010年の日本漫画市場は2009年から1.3%の減少で、ドイツでも2008年から上げ止まり状態。また、ドイツでの日本漫画の50.9%を占める会社Carlsenでは、150タイトルの内売れているほとんどが「ナルト」と「ワンピース」。この上位の漫画は3万5000冊位は売れるが、それ以外でそうでも無い物になると3000部位だそう。
2010年の個別の売上は、
1.ナルト
2.ワンピース
3.Twilight. Biss zum Morgengrauen
で、ドイツでも「トワイライト」が入って来ていて、欧米での人気は今も高い様子。
フランスでは男性が少年漫画を読む傾向が強いけれど、ドイツでは女性が少女漫画を読む傾向が強く、漫画は女性向けの物で漫画を読む男性はフランスに比べて少ない様。
2010年のドイツでのアニメーション映画の観客動員は、「塔の上のラプンツェル」が全体の6位で258万人、「崖の上のポニョ(PONYO – DAS GROSSE ABENTEUER AM MEER)」が9月のランキングは27位で観客動員は10万人程。(FFA Filmhitlisten)
そもそも日本映画自体、月間の上位100位には「おくりびと(NOKAN – DIE KUNST DES)」約9万人、「戦慄迷宮3D(SCHOCK LABYRINTH 3D)」8万5000人、「歩いても歩いても(STILL WALKING)」6000人と「ポニョ」の4作品しかなかった。
・スペイン
スペイン文化省の「El comic en Espana」によると、2009年スペインでのコミック全体では1514作品の出版数で前年比17.0%の減少、書籍全体では4.4%増加している。販売数も2008年の2290万冊から2009年は2030万冊と11.7%減少。
漫画の割合としてはスペインの漫画は23.6%、外国漫画は全体の75.7%と段々とスペイン漫画の割合が増えて来ている。
2009年のコミックス市場の外国漫画の新刊タイトルの占有率はアメリカの漫画が44.8%、日本漫画が36.7%、フランスが13.6%、ドイツが1.1%、その他が3.8%。なので、スペインでのコミック市場で日本漫画が占める割合は27.8%。2007年の29%から減少しており、出版タイトル数も2008年の980タイトルから、2009年には833タイトルと減っている。
2009年のスペインでのコミック全体の売上は7930万ユーロなので、スペインでの日本漫画市場は約2200万ユーロ。
・イギリス
ジェトロの調査「英国におけるコンテンツ市場の実態(2011年3月)」では、Nielen BookScanによるGraphic Novelsの年間販売数が出ている。
2010年グラフィック・ノベル全体では137万1776冊、一般漫画が68万8201冊、スーパーヒーローモノが27万2413冊、Mangaは39万8158冊。なので日本漫画は全体の29%。
日本の漫画が2008年まで68万5099冊と順調に伸びていたのだが、2010年で4割も減少。
イギリスでは、アメリカンコミックの販売がアメリカよりも遅く種類も少ないので、インターネット等で直接購入する人が多いそう。まあ、翻訳しなくて良い訳だし、直接買った方が安いだろうし。
イギリスの年度別個別の作品の売上冊数ではなく、2001年から2010年12月までのシリーズの販売総冊数が出ており、
1.ナルト (28万6528冊)
2.DEATH NOTE (21万145冊)
3.BLEACH (18万6389冊)
と、やはり「ナルト」が1位なのだが、10年間で30万冊程とは大分漫画市場が小さい。
個別の巻でも10年間で、
1.DEATH NOTE 1巻 (3万5545冊)
2.DEATH NOTE 2巻 (2万5469冊)
3.ナルト 1巻 (2万2875冊)
と、上位26位までが1万~3万冊程度。
しかも、巻数が下るに連れてどんどんと販売数が減って行く傾向がある。これは、漫画が他の商品と同じ様に一時的な流行として捉えられ、長期に渡って読む事が多く無いからだそう。
また、一冊の値段が7~8ポンド位するが、他の欧米諸国と同じ位の値段なのに余り売れていないのを見ると、イギリスは日本漫画市場が成熟する前にブームが引いてしまった様な印象がある。
アニメに関しては地上波アナログ放送では、アニメ番組自体が数番組で、日本アニメを定期的に放送しているのは皆無だそう。
一方、地上波デジタル放送の子供向けやアニメ専門チャンネルで日本アニメを放送しており、「ポケモン」「爆丸 BAKUGAN」「遊戯王」等を流しているそう。意外な事に、「ナルト」「ドラゴンボール」「BLEACH」等の他の欧米でも人気があるアニメーションは、放送した事があるがヒットせず長期放送には至らなかったそうだ。
劇場版アニメーション映画も、2005年全土公開されたのは「ハウルの動く城」と「崖の上のポニョ」の2作品だけ。「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊2.0」「ベクシル ~2077日本鎖国~」「時をかける少女」等が小規模公開、アートセンターでアートとして公開されているそう。
「UK Box Office: 2006」では「ハウルの動く城」は興行収入84万2908ポンド。「UK Box Office: 12 – 14 February 2010」では、「崖の上のポニョ」は221の映画館で公開され興行収入は17万1857ポンド。
日本アニメのDVDの販売数は、2006~2010年11月までの各年発売枚数毎という何だか不思議なまとめ方で、2006年発売の物は145万7885枚、2007年発売の物は11万6071枚、2008年発売の物は18万5920枚、2009年発売の物は21万2432枚、2010年発売の物は16万6397枚。2006年発売の物が異様に多いのはこの年に今までのジブリのアニメをごそっと発売したからで、現在でもジブリ作品が強く売れ筋になっている様。
イギリスではアニメーションはジブリが強いが、それでもテレビでの放送は少なく、特に漫画市場が物凄く小さい事に驚いた。イギリスのコミックだからイギコミ?ブリティッシュコミックだからブリコミ?だと、ジャッジ・ドレッドでお馴染み「2000AD」が思い付くし、「Vフォー・ヴェンデッタ」「Marvelman」でお馴染みアラン・ムーアや、デイブ・ギボンズ、グラント・モリソン、サイモン・ビズリー、ジョン・バーン、ニール・ゲイマン等、コミックス界の著名人がいるのに、アメリカとフランスという漫画大国に挟まれてか、コミックス市場自体がフランスの1割以下という大きさが意外。
・マレーシア
ジェトロの調査「マレーシアにおけるコンテンツ市場(2011年3月)」があるが、余り具体的な数値は出ていない。漫画に関しては海賊版が多く実態の把握は難しい様。
海外の漫画の多くが日本の漫画で、そんな中で人気のある日本漫画は、「ナルト」「ワンピース」「BLEACH」「クレヨンしんちゃん」といった少年漫画がやはり強い様だ。
一方で、インターネットや電子出版が出て来た事で漫画の売上は落ちて来ているそう。
テレビでのアニメーションは、2010年10月の地上波・衛星放送で全113作品が流れており、アメリカのアニメーションが39作品、日本のアニメは34作品、イギリス9作品。
「ナルト」「ポケモン」といった欧米でも人気のあるアニメが放送している一方で、「あさりちゃん」「キテレツ大百科」「ちびまる子ちゃん」「ドラえもん」といった日本的なアニメも放送されている。アジアという文化的にも近い事があるからなのか、有名で人気も高い様だ。
しかし、日本アニメは暴力的や性的だと言う批判も強い様で、「1998年通信マルチメディア法」が基になり放送規制がある。胸元や太ももを少し出しただけでも裸体とみなされ、子供向けアニメとして検閲段階で発禁処分になっているモノもある様だ。ここら辺は宗教的な縛りが強いマレーシアだけでなく、アジアや北欧でもあり、日本アニメの一つの弱点でもある。
これ以外の中東・アフリカ・インド・タイ・中国・香港・台湾・韓国・ブラジルの状況は「日本の漫画・アニメーションの世界での実状やいかに?」へ。
ある程度の数字が出ている国では、全世界的に漫画・アニメの流行がピークを越え、頭打ちや減少傾向が強くなっている。日本漫画・アニメの主な購買層が子供やティーンエイジャーな為、長期連載・放送による巻数・話数の多さが購買への負担になっており、インターネットでの違法視聴・ダウンロードの影響が一番大きい世代でもあるので、厳しくなっている。大きく、安定的に購入してくれる、子供向け、特にアニメは大人も見る様な一般向け作品でないとこれからの更なる伸びは難しいのではないだろうかとも思う。
現在でさえ日本漫画は、欧米ではアメリカンコミックやバンド・デシネ等の大人向けのニッチな市場と年齢層は違うが同じ様に若者向けのニッチな市場、しかも数分の一の小さな市場になっていて、「ナルト」の様なずば抜けて売れる作品が終了した後が果たしてどうなるのかが不安な所。
アニメーションも、ジブリでさえピクサーやディズニー、ドリームワークス等の世界展開している作品に対抗出来ていない状況で、更に最近の子供向けTVアニメーションが減って来ている状況が、海外での市場の減少に歯止めをかけていない様だ。
関連:日本の漫画・アニメーションの世界での実状やいかに?