ベア・ダンジョン

2010年05月05日 水曜日

「トンネルズ&トロールズ(T&T)」は、個人戦や、敵味方のヒット数を比べての集団戦もありの派手なTRPG。
そして、世界初のTRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)」と名前の構成、略し方も似ているのは何狙い?のTRPG。
で、その「トンネルズ&トロールズ」のRPGシナリオ「ベア・ダンジョン(Dungeon of the Bear) 現代教養文庫」を読んでみた。
 
 
0505 ©社会思想社
 
しかし、これがいまいち分かり難いと言うか、不条理と言うか…。
まず、この表紙からして「?」。この本の題名は「ベア・ダンジョン」だから、『地下迷宮で冒険者が熊の化け物と戦っている絵』なら分かりやすいのだが、冒険者達が船に乗り海竜と戦っていて、「あれ?これってダンジョン探索のシナリオじゃあないの?」といきなり混乱必死。実際そういう場面はあるのだけれど。この全面絵ではなく、丸で囲んでの絵は印象的で結構良いんだけどねぇ。

実際のシナリオは、ベア・ダンジョンへの導入の「ダンジョンからのモンスターの侵攻を防ぐ為に建てられた『監視の城』」の話は様々な背景が見えてなかなか楽しいのだが、ダンジョン探索はきっつきつ。
「触れたら問答無用で熊や狼に変えられてしまう宝石」やら、「はめると吸血鬼になる指輪」とか、「触れたプレーヤーが日光を浴びた瞬間に爆発してしまう宝石」、「強い剣だけど100分毎に何か生き物を殺さないと剣に殺され、しかも手放す事は出来ない」とかとか。さらに「罠だと気付かずそこへ踏み入れ、セービング・ロール失敗すると即死」の部屋や通路もわんさか。海外アドベンチャーゲーム並みの理不尽さ。ゲームブックの「君の冒険はここで終わった…」なら、前のパラグラフからやり直すし、コンピューターゲームならセーブ地点からやり直せるけれど、素直にこのシナリオをすると「今の手待った!」と落語に出てきそうな隠居の将棋指しみたいな事が頻繁に行なわれて、プレーヤーのやる気が削がれまくりそうなモノ。
そこまで厳しい割りに、物凄くプレイヤーに甘い所もわんさか。ダンジョンの一レベルで何千枚もの金貨を入手出来るし、さらに凄いのは「無限に近い大量に銅貨がある部屋」があったり。そこまでやってしまうとさらに下層への冒険・探検がバカらしくなりそうなものだけど…。
それと、物凄く不親切なのは、ダンジョンの各所を紹介する前に大概はそのダンジョンの地図を本に掲載するはずなのだが、この「ベア・ダンジョン」はベア・ダンジョンの地図が一切本に載っていない事。「地図はゲームマスターが勘で書け!」という事ではなく、別紙で挟み込んである。だから、「帯やら挟み込みの紙を躊躇無く捨ててしまう、あれすぎる新古書店」で紙無しで購入するとこの本は本当に、既にあるダンジョンを鋭い勘で自作しなくてはならない!う~ん、酷い。
 
 
もはや「ソウ」とか「ファイナル・デスティネーション」の様なスプラッタースリラーかとも思える程の殺す気満々、むしろそれの為の邪悪なダンジョンで、仲間が次々と動物や吸血鬼、さらには黄金に変わって行くのを見ながら、この「ベア・ダンジョン」の作者とゲームマスターに侮蔑と呪いの言葉を吐き続けるのもおもしろいのじゃあないのだろうか?…おもしろいのだろうか?

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