レミニセンス

2024年06月13日 木曜日

リサ・ジョイ製作・監督・脚本、ヒュー・ジャックマン主演の2021年のアメリカ映画「レミニセンスReminiscence)」

海面が上昇して多くの地上が水没してしまった近未来のマイアミ。
退役軍人のニック・バニスターは記憶を視覚化・追体験させる装置で記憶を呼び出す水先案内人レミニセンスとして過去を懐かしむ人々に過去の記憶を提供していた。
ある日、鍵を何処かで無くしてしまったと言うメイがやって来て彼女の過去を見たニックはメイに惹かれ二人は付き合い始めた。
しかし、数か月が経つとメイは突如として消えていなくなってしまった。
メイの行方を探すニックだったが見つからず、検事から依頼で麻薬の密売人の記憶を呼び出す仕事を受けるとその密売人の記憶の中にメイが現れ、事件を追いながらメイを探し続けた。

ヒュー・ジャックマンが出ているSFっぽいという理由と、Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので見てみた。

始めはいなくなった彼女を探す恋愛話だったのが徐々に犯罪事件の話になり、主人公の自分の記憶や人々の記憶を見ながら真相に辿り着こうと探るミステリーになり、これが結構おもしろい推理モノで中々見入ってしまった。

ただ、この映画の後に付いていた製作者インタビューやメイキングでも監督のリサ・ジョイが話していたけれど、この映画では記憶はまるでハードディスクに記憶された詳細な映像データの様に扱っていたのでそこがどうにもしっくり来ず、話の展開上そうならないと面倒臭いというのはあるにしろ記憶の絶対感がいまいち納得しないままでいまいちモヤモヤ感が抜けないままだった。
記憶って非常に曖昧で、同じ事でも自分の記憶と他人の記憶が全く違う部分があったり、自分の記憶でも覚えている部分以外ほとんど覚えていない事がほとんどだし、記憶だと思っていたモノが後から何かの情報で上書きされて出来た本当ではない記憶だったり、自分自身で捏造した、捏造されてしまった記憶だったりと記憶なんて当てにならない事が多々。
記憶ってそんなモノだと思っているので、そこの記憶の齟齬とか捏造とかを一切突かない緩さが気になって、そのままスラスラ進んで行くのに何処かでいまいち付いて行けない部分があった。

最後も主人公は過去の繰り返しだけになってしまって、それを何か良い感じで締めてはいたけれど凄く怖いと言うか、薄ら寒さを感じてしまって恐怖で終わった印象。
良い感じで見せているけれど悪く言ってしまえば、引き籠って同じオナネタでオナニーし続けました…で、これって良い話?
それにあのままだと食物摂取とか排便とかどうしているの?という疑問も感じて、と言う事は主人公は時々は起きて食事して、髪の毛切って、爪切って、あのムキムキな筋肉という事は筋トレして再び記憶にという事?と説明の無い部分も気になったし、どんなに良い記憶でも何年も何十年も見続けても飽きないの?とも思ってしまったし。
この監督は高級な霜降り肉のステーキを毎日食べ続けられるぜ!な人なんだろうなぁ。

あと気になったのは、主人公が犯罪者のボスの所に行って殺されそうになった所にタンディ・ニュートンがまあ丁度で助けに来てくれるという展開だったけれど、この後タンディ・ニュートンが何でこんな上手くやって来たのか?とか、何でこんなに強いのか?とか一切説明が無いので凄く都合の良いだけの展開に思えてしまった。

この記憶で人を追ったり、事件捜査って何だかフィリップ・K・ディックっぽいし、最終的に何だか幸せの様で悪夢みたいな話だしリサ・ジョイは影響受けているのかな?と思ったのだけれど、このリサ・ジョイの夫ってこの映画の製作でもあるジョナサン・ノーランなのか。
ジョナサン・ノーランって「メメント」の原案だったり、「インターステラー」の脚本だったりと記憶や過去と現在の映画が好きな人なので夫からの影響が強そう。

この映画から10~20年前位の映画やドラマで見ていたヒュー・ジャックマンやタンディ・ニュートンが出ていて、最近の映画を見ていなかったので何か年取ったねえと思ってしまった。
でも、やっぱりヒュー・ジャックマンが裸で水から出て来るとどうしてもウルヴァリンに見えてしまう。
この映画ではそれって狙っていたのだろうか?

おもしろかったのがあの記憶を映し出す立体モニターで、映画を見ている時は何も無い所で役者は演じているのだろうなぁ…と思っていたけれど映画の後に付いていたメイキングではちゃんとあそこに薄い膜のスクリーンがあって、そこに映像を映して、それを見ながら役者が演じていた事。
しかもそのスクリーンは撮影カメラに合わせて動かせるので映る映像も立体に見える様にしていて、完全CGだと思っていたら凄い手間とこだわりで驚いた。

それとこの映画を見ていて思い出したのが、少し前にYouTubeで見たアメリカのニュースで「サン・フランシスコ湾に家が漂っている(https://www.youtube.com/watch?v=vvW_Cyc7t6c)」というので、この映画みたいに本当に海上に家が浮かんでいた。
どうやらこれは湾の奥の方でボートハウスに住んでいる人が結構いるみたいで、その家が流れて来たみたい。
なのでこの映画の景色ってアメリカ人からするとSFではあるけれどそれ程行き過ぎたSFでもないんだろうなぁ。

この映画、記憶を使った人探し、事件捜査としては中々おもしろかったけれど、記憶の曖昧さ、当てにならなさが全然無いのでしっくり来なかった部分はあるし、最終的に何だかなぁ…な感じで終わり、おもしろくはあるけれど結構微妙な映画でした。

☆☆★★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply