メン・イン・ブラック:インターナショナル
2022年07月29日 金曜日F・ゲイリー・グレイ監督、クリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソン共演の2019年のアメリカ映画「メン・イン・ブラック:インターナショナル(Men in Black: International)」
シリーズ四作目で、これまでの主人公だったトミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスは出演していないスピンオフ。
モリー・ライトは子供の時に宇宙人と出会い、その時宇宙人を見た両親は黒スーツの男達に記憶を消されたのを見て以来、その秘密組織に入る為に彼らに接近しようとしていた。
ある日モリー・ライトは黒スーツの男達を見付けて後を追い、彼らの基地に潜入する事が出来たが直ぐにバレてしまい捕まってしまった。
モリーは記憶を消されそうになるが説得してMIBのエージェントになる事が出来た。
モリーは見習いエージェントMとしてロンドン支部に赴任し、エージェントHについて任務に就く事になった。
一作目から三作目までを続けて見たので続けてこの映画も見てみたけれど、この映画は非常につまらなかった。
メン・イン・ブラックのおもしろさって、トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスのやり合いのバディムービーのおもしろさが根本にあって、そこに実は既に宇宙人が暮らしているという設定やアクションモノとしてのおもしろさがあるからのおもしろさだったのに、それがこの映画にはほとんどなかった。
クリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンは心機一転でこういう組み合わせもありなんだけれど、この二人のやり取りが全然おもしろくない。
笑いに振り切る訳でも無く、真面目に行く訳でも無くて非常に中途半端な楽しくない会話が続くだけ。
これまでだと仏頂面でボケるトミー・リー・ジョーンズと、それを突っ込みつつ喋りまくるウィル・スミスの対比が効いていたのに、クリス・ヘムズワースは出来る奴なのかボンクラなのか分かり難い上に、ジョークが常に滑っている感じだし、一方のテッサ・トンプソンは現場での実務訓練さえ受けていない元オペレーターの新人なので、そこの出来なさ加減を描くのかと思いきや結構対応出来ていて出来る奴っぽい描かれ方をするので二人共人物として際立たず、対比が効いているのかいないのかが分からないまま。
クリス・ヘムズワースは役的にもあるのだろうけれど、喋る話はつまらないし、失敗も多いので見ていてもカッコ良くは見えず、最後は「俺、記憶消されてた…。」で間抜けで終わるし、出来るエージェント感が説明台詞だけで行動には見えて来ないので上滑りして、主人公としての魅力が無かった。
テッサ・トンプソンはMIBに憧れ続けて来て、やっとMIBになれたというのを見せているのにMIBに興味津々なのは初めの少しだけで、「これ何ですか?」とかあちこちで聞きまくる事もしないし、一作目のウィル・スミスみたいに勝手に物に触って大騒動みたいな事も無く、折角のMIB憧れ設定が全然活きていなかった。
話も結構序盤で「MIB内部に裏切者がいる…」で一気に興味を無くしてしまった。
何時頃からかハリウッド映画では敵に主人公側の行動がバレていたり、主人公側が上手く行かずに内部に裏切り者がいるという展開になると、それが大体仲の良い人物かボスだったという同じ様な展開をやって来ているのを何度も見てしまっているし、しかも登場人物達の関係性がまだ紹介程度の一作目なのにそれをやられた所で何の意外性も無く「そうですか…」にしかならない事をこの映画でもやってしまい、結局役者の名前的に一番大きいリーアム・ニーソンが敵でしたという何の捻りも無い事をやっていて、何もおもしろくなかった。
わたしはこういう展開が本当に飽き飽きして大嫌いで、序盤の「MIB内部に裏切者がいる…」というのを出して来た時点で話の展開の予想はつき、それがほぼそのままで、何で擦られ続けている展開をわざわざここでもするのだろう?と思ってしまった。
他にも「メン・イン・ブラック:インターナショナル」と銘打った事でヨーロッパ各地を回る話にしていたけれど、これをするとよっぽど上手く移動理由を作らないと都合の良い理由であっち行ってこっち行ってになってしまうのに、正に急に意味も無く話に出て来た人物が絡んでそこに行かないといけなくなるという取って付けた様な脚本の都合の良い展開で、これも飽き飽きで全然おもしろくなかった。
宇宙人達もこっそりと存在しているという訳でもなく堂々としていて、これまでのシリーズだと宇宙人が既に密かに地球人の中で暮らしているというのがおもしろかったのにそこもほとんど描かずで、そこを求めていたから余計につまらなかった。
それに、シリーズ毎度の悪い宇宙人が何かの物を狙って地球の危機を引き起こすけれど、悪い宇宙人は何をしようとしてその物を欲しがっていたのかがいまいち分からないというのは、このメン・イン・ブラックシリーズの一作目からのお馴染みの伝統。
何かのゲートからやって来て地球を破壊しようとしている悪い宇宙人がハイブで、それを阻止する独立した全世界規模の秘密組織で、クリス・ヘムズワースはソーだしで、何かほとんど「エージェント・オブ・シールド」
この継ぎ接ぎ的な展開は監督のF・ゲイリー・グレイとプロデューサーのウォルター・F・パークスが相当揉めたらしいというのが原因なのだろうか?
何でも全体を統括していたデヴィッド・ボーベールがスタジオを退社した事で後任がおらず、ウォルター・F・パークスが撮影中も脚本を毎日書きなおして主演の二人に送っていたり監督の仕事まで踏み込んでいたらしく、F・ゲイリー・グレイは何度も監督を降りようとしていらしい。
こうなるとこの散漫で都合の良い展開は仕方がなかったのかもしれない。
あと、このシリーズで毎度気になるのが原作のクレジットなんだけれど、一作目のオープニング・クレジットでは「BASED ON THE MARVEL COMIC BY LOWELL CUNNINGHAM」
二作目では「BASED ON THE MALIBU COMICS BY LOWELL CUNNINGHAM」だったけれど、「メン・イン・ブラック3」とこの映画では「BASED ON THE MALIBU COMIC BY LOWELL CUNNINGHAM」
何故一作目だけマーベルなのか?だし、マリブ・コミックスは1994年からマーベル傘下だけれど、その後マリブ・コミックスから「The Men in Black」のアメコミが出版された訳でも無いし、「The Men in Black」の一番初めはエアセル・コミックスからの出版なのに何故マリブなの?だし、何故今回も「MALIBU COMIC」で「S」が無いのかもよく分からない。
この映画、取って付けた様なおもしろくない展開の連続で、クリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンのバディムービーとしてもやり取りや関係性がおもしろくないし、アクションやガジェットもいまいちで、全部が外していた気がしてしまった。
このシリーズって二作目の時点から苦肉の策感が強く、この映画も「3」がヒットした事で続編を作りたいけれどトミー・リー・ジョーンズも歳で「3」でさえほぼ代役状態だったし…なので、完全に別人でリブート的スピンオフの苦肉の策をしたら見事に滑ってしまった感じ。
☆★★★★
関連:メン・イン・ブラック
メン・イン・ブラック2
メン・イン・ブラック3