ゼロ・グラビティ
2022年06月10日 金曜日アルフォンソ・キュアロン製作・監督・脚本、サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニー共演の2013年の映画「ゼロ・グラビティ(Gravity)」
ライアン・ストーンとマット・コワルスキーとシャリフの三名はスペースシャトルから宇宙空間で船外活動を行い、ハッブル宇宙望遠鏡の修理を行っていた。
管制から報告が入り、ロシアが自国の人工衛星の破壊を行った所、その破片が他の人工衛星にぶつかってしまい大量の破片が分散し、猛スピードでスペースシャトル付近へと迫っていると言う。
三人は慌てて作業を中断してスペースシャトルへと戻ろうとするが大量の破片が到来して次々とぶつかり、スペースシャトルは大破。
シャリフは死亡し、ライアン・ストーンとマット・コワルスキーの二人だけが生き残った。
二人は宇宙服の酸素やジェットパックの燃料も少なくなり始めた中、付近の国際宇宙ステーションへと向かい出した。
宇宙空間での船外活動中に事故が起こり、乗っていたスペースシャトルが壊れて宇宙に投げ出されたらどうなるのか?を描き切る現代を舞台にしたハードSFで、何とか生き延びて地球に帰ろうとするという話だけで一本映画を作った非常に真っ直ぐな映画という部分で非常に爽快だし、常に宇宙空間の映像を見せ続けるという映画という部分も非常に素晴らしい。
最後に少しだけ地球が出ては来るけれど、初っ端から宇宙空間での船外活動から始まって、そのまま一気に宇宙空間の映像だけで見せ切っていて、ちゃんとサスペンスでもあるし、アクションでもあるしで、ずっと掴まれたままで見切ってしまった。
映像もこれでもかと言わんばかりの無重量状態の宇宙空間を見せ、宇宙服のマスク部分に反射して映る歪んでいるけれどクッキリ映る地球とか、登場人物視点で周囲がグルングルン回る映像とか、上下左右も無い宇宙ステーションでの移動とか、綺麗だったりおもしろい映像がたんまりと連続して来て没入感や宇宙空間にいる疑似体験感は凄い。
ただその分、ここは緊張する場面とか、今危険な所とかを音楽で盛り上げたりする従来の演出があると結構覚めてしまった。
宇宙での虚空感や虚無感を見せるなら音楽は管制やジョージ・クルーニーが流している音楽だけで、後は無音の方が緊迫感はあった様な気がした。
あと、展開と映像が主軸でもあるので人物の掘りがそんなに深くなかったのも気になった部分。
サンドラ・ブロックは大分絶望感で生きているのに何故宇宙まで来ているのか?とか、宇宙で死んでも全然構わない風だったのに地球との通信だけで地球にそこまでして帰ろうという理由がいまいち見えて来なかった。
多分、普段前向きに生きている人はサンドラ・ブロックがすんなりと入って来るのかもしれないと思うのだけれど、わたしはいまいち入って来ず、作中の台詞でも人は何時か死ぬって言っていた様に何時かは死ぬんだから何かがある訳でもない地球に別に帰らなくてもいいんじゃないの…と思ってしまったのは、わたしに色々と問題が有るのかもしれない。
ジョージ・クルーニーは常に前向きで、陽気で冗談を言い、何故か自信があるって結局何時ものジョージ・クルーニーで役の背景が全然見えて来ない人物ではあった。
ジョージ・クルーニーはジョージ・クルーニーなんだけれど、サンドラ・ブロックは良い演技。
映画「アド・アストラ」のブラッド・ピットもそうだったけれど、宇宙空間で一人で生き方や死に方を考えるという設定って役者が輝く設定なのかと思ったし、この設定だと役者が色々と発揮しまくれるんだろうなぁ。
この映画、初めから宇宙空間での映像を見せて掴み、そこから一気に生きて地球に帰るという話で突きっきり、ローラーコースター映画として抜群に良いし、映像的にもまあ見せるし上手い。
話が心に響くというモノでもないけれど、見せる映画としては非常に良く出来たハードSF映画だった。
☆☆☆☆★