宇宙戦争(1953年)

2021年07月08日 木曜日

バイロン・ハスキン監督、ジーン・バリー主演の1953年のアメリカ映画「宇宙戦争(The War of the Worlds)」
H・G・ウェルズの1898年のSF小説「宇宙戦争」が原作。

カリフォルニアの村に隕石が落ちて来た。
その近くで休暇を過ごしていた天文学者・物理学者のクレイトン・フォレスターが隕石の調査に呼ばれたが、隕石は熱を持っていたのでその日の調査は諦めた。
その夜。隕石から謎の物体が伸びて来て光線を発射し、隕石の見張りをしていた男達を消し去ってしまった。
その隕石から出て来たのは火星人の侵略兵器で、次々と同じ様な隕石が降って来た。
クレイトン・フォレスターは軍隊を要請し、軍隊は兵器に攻撃を仕掛けるが全く歯が立たず、兵器は町へと侵攻して行った。

BBCのドキュメンタリー「決定版!SF映画年代記」を見てから、その中で紹介されていた古いSF映画を見ていたけれど、侵略モノの金字塔と言われる一番初めの映画「宇宙戦争」を見てみた。
ただ、これを今見ると相当分かり難い。
この映画の内容がこの当時どれだけ斬新でSFとしておもしろかったのか?とか、見ている人にどれだけ響いたのか?とか、これで恐怖を感じたのか?とか、この特撮でどれだけ現実味を感じていたのか?とかが今となってはよく分からず、今の感覚でそのまま見てしまったので、そんなにおもしろい?評価が高いの?になってしまった。

1953年の映画なので全体的に展開が遅く、都合良く主人公の台詞で説明してしまったり、恐怖を描くにも人物を描くにも中途半端な感じ。
始まりで火星人が地球を狙っているという説明をしてしまっているので、一番最初にネタバレをしておいて、そのネタで引っ張るのだから、何がどうなるの?では見てないし、火星人は分かり切っているのだから早く火星人を出せ!になってしまう。

あと、変にのんびり感があるのも展開が遅く感じられてしまった部分。
隕石が落ちても周辺を立ち入り禁止にせず見物人がわんさか来て、暫く経ってから放射能があるので危ない…とか、そもそも危機意識が皆無だったり、周囲を殺人破壊兵器がのさばっている中で主人公と女性が家に入って食事始めた時には、この人達現状理解出来てる?と突っ込んでしまったし。

それに、火星人に対して敵意が無い事を示す為に白旗上げて近づいて殺された人が出て来たり、対話だと言って聖書をかざしながら前に出て行って殺された牧師いたりと、これの意図がいまいち分からず。
文化も全く違うであろうと知る以前の火星人に対して地球文化で問題ないだろうと考えて行動してしまう馬鹿さにしか見えないけれど、これは単に火星人が地球人とは違う無慈悲さという事を表現したいだけなのかな?
既にガンガンに破壊を始めていた兵器に対して宗教で平和に解決出来ると考えた牧師はさっぱり分かんない。
これって、映画「マーズ・アタック!」とか、映画「インデペンデンス・デイ」でやって来た宇宙船に対してビルの屋上で歓迎している人達が光線で大爆発するのを既に見ているのもあって、地球人の感覚で接してやられるって今だと笑かしにしかなんないけれど、この当時のこれはどういう感覚だったのだろう?

火星人は火星人で物凄く攻撃的なのに隕石が墜落してから何故かマゴマゴして侵略を中々始めないし、何故か人口の多い都市部から攻めずに人の少ない山から始めるので、中盤辺りまでが結構退屈。
兵器が町を攻撃し始めた辺りからはおもしろくなり、火星人を分析して反撃に転じようとしていたら暴徒によって資料が無くなり科学での抵抗さえ出来なくなった絶望感や、人々が逃げ惑い祈るしかない状況になっている絶望感等、パニック映画として中々上手い。
特撮も町の建物を壊す兵器は中々良いし。

ただ、良く考えると火星人は地球に移住しようとしているのだから、あれだけ壊しまくったら後で片付けが相当大変そうと思ってしまった。
あれだけの科学技術なのだから地球人だけを殺す毒ガスとか生物兵器とか使えばいいんじゃ?と思ったけれど、それだと落ちが成立しないか。

最後の落ちは、まあ原作そのままなのでしょうがないとは言え、原作が当時の最新科学だった細菌を扱っているのでのちゃんとした落ちになっているけれど、1950年代にこれって、当時の人の反応はどうだったのだろう?
しかも、細菌をキリスト教と結び付けるのは当時のアメリカっぽいのかもしれないけれど、今見ると宗教が過ぎ、SFとしては「バトルフィールド・アース」よりも…な気がしなくもない。

この映画、今見てしまうとこの当時としては特撮が良いんじゃないの?位で、展開は中盤辺りまでいまいちだし、主人公がぱっと見ただけで全ての事物を理解出来て説明しちゃう都合の良さだし、製作費的になのか侵略の特撮やぶっ壊しが弱いし、恋愛劇や人間ドラマとしても中途半端に思えて、まあ当時の映画だからなぁ…になってしまった。

☆☆★★★

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