空飛ぶ円盤地球を襲撃す

2021年08月26日 木曜日

フレッド・F・シアーズ監督、ヒュー・マーロウ主演の1956年のアメリカ映画「空飛ぶ円盤地球を襲撃す(Earth vs. the Flying Saucers)」
見たのは2007年のカラーライズ版。

宇宙線を観測する為の宇宙ロケットの開発・打ち上げの責任者である科学者のラッセル・マービン博士と妻のキャロルがロケットの打ち上げ現場に向かう車内から謎の空飛ぶ円盤が音を立てて上空を通り過ぎて行くのを目撃した。
アメリカでは以前から謎の飛行物体の目撃情報が相次いでおり、軍は謎の飛行物体の撃墜命令を出していた。
マービン博士の下には打ち上げた宇宙ロケットが次々と墜落しているという報告が届いていたが、更に新たな宇宙ロケットの打ち上げを行おうとしており、その打ち上げ現場に空飛ぶ円盤が飛来。
中から人型の物体が現れた為、軍が攻撃を開始。
しかし、空飛ぶ円盤の反撃によって数百名の死者を出した。
マービン博士は空飛ぶ円盤が通り過ぎた時に偶然録音していた空飛ぶ円盤の音声が実は異星人からの交渉の誘いだった事を見つけ出し、異星人と直接会って話を聞き出す。
異星人は母星を無くし地球に飛来し、地球の代表者との交渉を求めていた。
一方でマービン博士は空飛ぶ円盤に対抗する為の兵器開発を進め、交渉期限の日に大挙して現れた空飛ぶ円盤と新兵器での戦いが始まった。

映画「水爆と深海の怪物」を見たので続けて古いSF映画を見てみようと思ったので見てみた映画。

話は空飛ぶ円盤が地球を襲撃するという邦題原題そのままの内容で、前半は謎の空飛ぶ円盤が一体何なのか?のミステリーから後半のアメリカ軍対空飛ぶ円盤の戦争と分かりやすいはずなんだけれど、地球側も異星人側も行動原理や目的の説明が足りなくていまいち分かり辛くてついて行きにくかった。

始めの時点で問答無用で空飛ぶ円盤を撃墜しようとするのは何故なんだろうか?
1956年だからソ連の秘密兵器が領空侵犯をしているから撃墜しようとするならまだ分かるけれど、そういう説明も無く、訳の分からない物はとにかくぶっ壊せ!って危な過ぎる。
実際、異星人側は交渉をしようとしていたのに軍が攻撃をしたので反撃にあって全滅しているし、空飛ぶ円盤という当時からしても超技術の物体に攻撃すれば反撃にあうとか思いもしないとかあり得ない。
これが、まずは敵を知ってから、交渉を行ってからの攻撃ではなく、とにかく攻撃。とにかく戦争という戦争が続いているアメリカへの皮肉かと思いきや、最終的には空飛ぶ円盤を全滅させ、異星人皆殺しで「我々の星だ」で終わるのでそういう意図も無い様で、逆に最後まで含めて今見ると相当な皮肉にしか思えない。

異星人側も母星が無くなって住む所が無くなったらしいので地球にやって来たみたいだけれど、異星人が求めていたのが地球側との交渉で、その交渉で何をどうしたいのかが全く描かれないので異星人の目的が不明。
残った少数の異星人が地球で暮ら為の交渉をするつもりだったのか、それとも異星人による地球人の完全支配を交渉で勝ち取れると思っていたら余りに馬鹿過ぎだし、地球人は地球から出て行けとか、地球人を自分達の奴隷にするとかの異星人が地球に住んだ後をどうするのかの話も無く、異星人はどういう事を目指していたのかが分からないので異星人襲来の恐怖感が無いし、接触・交渉をしに来た異星人を先制攻撃をしたのが地球側のなので地球側の過剰防衛・過剰攻撃感があって「異星人は悪だ!」という対立軸がはっきりせずに、何が何で?ばかりで一向に地球側視点で見る事が出来なかった。

この異星人、博士を通じて交渉しようとする時はわざわざ走行中の自動車に空飛ぶ円盤で飛んで行って話している言葉を空飛ぶ円盤から音声で流して聞かせ、しかもその音声は異星人に合わせているので地球人が理解出来ない早さになっていて全く理解させられないという、空飛ぶ円盤やその他諸々の科学技術と比べると頭の悪過ぎる方法を取る。
異星人が着ている防護服は手足が一本の円管なので、出来の悪いロボットみたいに不器用にゆっくりとしか動けないし、これがてっきり防御力を高める為に重い鎧みたいな構造なのでゆっくりしか動けないと思ったら、銃の弾が当たったら速攻で死んでしまう位防御力が無い防護服で、機動力は低く防御力は無いというクズみたいな防護服で攻撃を仕掛けていて余りに頭が悪い。
地球人が勝たなくてはいけないからとは言え、異星人は超技術を持っているのに頭が悪いって侵略SFモノの伝統なのか。

特殊効果はお馴染みレイ・ハリーハウゼンで、空飛ぶ円盤は生物ではない機械なので非常に良く出来ているはいるけれど、空飛ぶ円盤から異星人が出て来る時には空飛ぶ円盤の中心部分が円柱状にガボッと飛び出す構造には笑ってしまった。

それにこの時代の空飛ぶ円盤はまだ空飛ぶ円盤という言葉が誕生してから初期なので、空飛ぶ円盤が回転しているのが興味深い。
空飛ぶ円盤は後には円盤が回転する必要はないので形状が円盤なだけだけれど、この時代は空飛ぶ円盤という言葉が誕生した1947年のケネス・アーノルド事件での謎の飛行物体を目撃したケネス・アーノルドへの新聞記者の取材で、物体の形状ではなく、その飛び方を「コーヒーの受け皿(ソーサー)を投げた時の様な飛び方」と言ったのが「Flying Saucer」として新聞で報道した事によって空飛ぶ円盤になっちゃったという顛末をそのまま引きずっているのか、空飛ぶ円盤がちゃんと回転しているのがおもしろい。

この映画、早い段階で空飛ぶ円盤を出して宇宙からの侵略モノSFとして設定は揃っているのに、異星人は交渉したがっているの急に攻撃して来たりと目的がはっきりせず説明不足で、異星人=悪にしないといけない強引な展開で訳の分からなさばかりを感じてしまって全然楽しめなかった。

☆☆★★★

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