水爆と深海の怪物

2021年08月25日 水曜日

ロバート・ゴードン監督、ケネス・トビー主演の1955年のアメリカ映画「水爆と深海の怪物(It Came from Beneath the Sea)」
見たのは2007年のカラーライズ版。

アメリカ軍の最新鋭の潜水艦がテスト航行で巨大な何かと遭遇する。
潜水艦についた生物の一部らしい物体を持ち帰り、二人の科学者に分析してもらうと、これは放射能を浴びた蛸の一部で巨大な蛸が餌を求めて襲ったのであろうという見解が出た。
各地で船舶の謎の沈没が起こり始めると、やがて巨大な蛸がアメリカの西海岸に現れてサンフランシスコの町を襲い始めた。

古いSF映画を見ようと思って見付けた映画なんだけれど、Amazon プライムビデオでのサムネイル?の画像は1950年代の映画のポスターっぽい感じなのに、制作年は2007年って表示されているし、映画が時始まってのオープニング・クレジットでも©2007と表示されているので調べてみたら、どうやら元々は白黒映画だったのを2007年に彩色したカラーライズ版として出したかららしい。
リマスターもしているのかカラーではっきりと見えていたけれど、やっぱりオリジナルの白黒で見るべきだったのかもしれない。

映画自体は、水爆実験によって餌の魚を取る事の出来なくなった巨大な蛸が替わりに人間の乗っている船を襲い始めたというパニック・モンスター映画ではあるのに、中盤まで潜水艦の艦長と科学者二人の会話劇で進んで、巨大蛸を見付けようとする話よりも艦長と科学者の恋愛劇に軸が移りがちで間延びしているし退屈。

ストップモーション・アニメーションをレイ・ハリーハウゼンが担当していて、そのウネウネする巨大蛸の特撮を見たいし、巨大蛸対人間の戦いを期待するのに、それは最終盤に少しだけなのでモンスター映画としても楽しくない。

巨大な蛸も、多分普段から蛸を食べない西欧文化では蛸が不気味で恐怖の対象にはなったのだろうけれど、普段から蛸を食べる日本文化側から見ると「でっかいけれど蛸だしなぁ…」と恐怖感が無く、逆にもっさりと動くので間抜けな動物に思えてしまった。

ただ、この時代感を見ると結構興味深い。
水爆実験と巨大怪獣は正に時代だし、1954年に「ゴジラ」だから全世界的に巨大怪獣モノのブーム期だったのか。
パニック・モンスター映画だけれど、中年男性と若い女性のロマンスというのも如何にもなハリウッド映画だし、研究室で薬品も近くにあるのにパッカパカと煙草を吸っている危なっかしさと煙草の吸い過ぎ感も時代だし、女性科学者が恋愛よりも研究だと言って珍しがられる等、今とは違う時代感が見られるのはちょっとおもしろかった。
それに、出て来る潜水艦や機械や装備等はこの当時の現実の最新鋭の物だけれど、今見ると物凄いレトロ・フューチャーなSFに見てしまって、そこで楽しめてしまった。

あと、この当時の日本の特撮映画とアメリカの特撮映画の大きな違いだと思ったのは軍の兵器の描写に関して。
日本の特撮映画だと潜水艦や戦艦はミニチュアで作ったり、セットに舞台装置を作ったりするだろう所を、この映画ではほとんどを資料映像で本物の映像を使っている。
やっぱり実物の映像は強くて説得力があるけれど、逆に安く仕上げる為の資料映像の流用だったのかな?と思ったし、安く仕上げる為に巨大蛸も最後の方にしか出て来なかったのかな?とも思えた、お金事情も見えてしまった。

この映画、パニック・モンスター映画なのにほぼロマンス映画で積極的にワクワクドキドキ感を消しに行っているし、そのロマンス映画もよく分からない展開で好きになっているのでおもしろくないし、巨大蛸の特撮を見るには物足りなさ過ぎるしで、それぞれの要素がそれぞれの要素の良い部分を潰してしまっている気がしてならなかった。

☆☆★★★

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