海底軍艦

2021年08月06日 金曜日

本多猪四郎監督、円谷英二特技監督、高島忠夫主演の1963年の日本映画「海底軍艦」
押川春浪の小説「海底軍艦」が原作。

各地で技師の誘拐事件が発生。
元大日本帝国海軍少将で海運会社の専務の楠見と秘書の神宮司真琴も誘拐されかけたがカメラマンの旗中進が彼らを救った。
誘拐犯はムウ帝国の工作員23号と名乗り海中へと逃げ去った。
その後楠見の下にムウ帝国から一本のフィルムが送り付けられた。
その内容はムウ帝国は一万年前に海中に沈没したが生き残っており、地上の世界よりも遥に進んだ科学力があり、地上に再びムウ帝国を築く為に地上の世界を植民地としてムウ帝国に差し出せというものだった。
そのフィルムは世界各国に送り付けられ、各地で都市の陥没や船舶への攻撃が始まった。
ムウ帝国の攻撃に成す術の無い人々は、かつて第二次世界大戦時に開発され、神宮司真琴の父親神宮司八郎大佐の指揮下にあり消息を絶った潜水艦イ403潜が必要だったが、神宮司大佐の元上司の楠見もその行方を知らなかった。
神宮司真琴を付け回す男が逮捕されたが、その男は神宮司大佐の部下で、楠見や神宮司真琴や旗中進と刑事を神宮司大佐がいる南方の島へと案内した。
その島では神宮司大佐率いる部隊が戦後二十年間に渡り、大日本帝国を再興させる為に新たな海底軍艦轟天号を開発していた。

別にシリーズではないけれど、この映画の前年に公開された同じ本多猪四郎・円谷英二コンビの東宝特撮映画「妖星ゴラス」を見た事もあり続けて見てみた。

海底軍艦とかムウ帝国の侵攻とかおもしろそうな要素はあるものの、ずっと話が散漫で結構退屈で、全世界への侵略と対抗で壮大な話なはずなのに「妖星ゴラス」に比べると非常にこじんまりしていた。
ムウ帝国対海底軍艦が見せ場なはずなのに海底軍艦が出て来るのが遅く、終始まどろこっしい地上人側の話が続き、最後のムウ帝国対海底軍艦も盛り上がりに欠ける。

ずっと高島忠夫が主人公で話が進んで行くのだけれど、話の軸は神宮司大佐の居場所なので高島忠夫で話を進める必要も無く、何で何処にでもフリーらしきカメラマンが同伴しているのか?がよく分からないし、この展開ならカメラマンは必要無くて刑事が主人公でもよく、人が無駄に多くて話が散漫になっている。
終盤になると轟天号の攻撃が主になるので主人公は神宮司大佐となってしまい、高島忠夫も刑事もほとんどいらない子状態。
だからなのか、無謀にも何の訓練も受けていない高島忠夫や刑事がムウ帝国攻撃部隊に参加していたりする。
高島忠夫と神宮司真琴の関係も恋愛要素を入れ込んではいるけれど、これもいらないっちゃあいらない要素。

海底軍艦が出て来ると、二十年間も自分達だけで島に籠って作っていた轟天号は巨大な潜水艦だけれど空は飛ぶわ、最新鋭の潜水艦よりも遥に頑丈で深く潜水出来るわ、周りの海水が一切凍らない冷凍噴射もするわで、何故かムウ帝国を超える超技術で何じゃこりゃ?
まだ、ムウ帝国の技術を盗んで流用して開発したなら分かるけれど、戦争末期以降籠ってしまった少数の軍人が独自に作ったってトンデモない天才がいたって事?
そこは一切無視で、長年かけて独自の超科学を持ったムウ帝国を二十年間で超えてしまったって無理あり過ぎ。

ムウ帝国はムウ帝国で物凄い科学技術を持っているはずなのに、そうは見えない古代文明感ばかりで、地上人の技術者を誘拐しないといけないとか、海底軍艦の設計図を持っているのに対抗策も無く作るの止めろとか全然進んでいる感じが無い。
世界を支配しようとしているのに潜水艦も一機だけなので初めから轟天号との一騎打ちになってしまい、まあ盛り上がりが無い。
これって多数のムウ帝国軍対地上の全世界軍の大規模戦闘でもムウ帝国が圧倒して、そこから轟天号が一機でムウ帝国軍を蹴散らして、最後にムウ帝国軍の巨大戦艦との一騎打ちとかだと盛り上がるけれど、潜水艦一機対轟天号の戦闘で世界の命運が決まるってしょっぱ過ぎ。
もしかしたら映画の予算が少なかったとかが理由なのかなぁ。

それに、ムウ帝国の中の様子が出て来ると急に安っぽくなってしまう。
世界を支配しようとしている強大な帝国なはすが変なコスプレ舞踏集団の滑稽さに、長年自分達だけの世界で籠っていたからなのか、外部からの攻撃が全く無かったからなのか、戦争に備えた内部の警備はゆるゆるで、もしもの備えは無いし、謎の冷凍銃に対して小刀や槍で対抗していたり余りに頭が悪い。
そもそも何でムウ帝国の公用語は1960年位の日本語なのかも謎だし、「MU」とアルファベットを使っているのも謎。

轟天号一機あれば世界に勝てる!という考えや、神宮司大佐の「戦争キチガイ」等の第二次世界大戦に対する皮肉や反省という非常に真面目な要素もあるけれど、結局はその轟天号が世界を救い、ムウ帝国の老若男女を皆殺しにしてめでたしめでたしというトンデモない皮肉で終わったのは結構驚いた。
この時代だとムウ帝国についての説教じみた登場人物の台詞がありそうなものだけど何も無くスパッと終わってしまい、これってめでたしめでたしのつもりなのか、敵とは言え全ムウ帝国人の虐殺に思いを馳せろなのか、轟天号は今後ムウ帝国に成り代わり世界の脅威になるんじゃないか?の不安を描いているのか、どう捉えたらいいんだろうか?

役者陣は「妖星ゴラス」から引き続いて出演している人も多い。
佐原健二、上原謙、平田昭彦、田崎潤等々。
そう言えば、田崎潤は「妖星ゴラス」でも宇宙船隼号の艦長を演じていて、しっかりしていそうでヤバさがある司令官という役柄がはまっていたのか。

この映画、海底軍艦は笑ってしまう超技術ではあるけれど、やり方によってはもっと燃える展開になりそうなのにこじんまりしたままで終わってしまって非常に勿体無い感じ。
無駄に思える人の多さと話の散漫さを無くして、海底軍艦対強大なムウ帝国軍でやりたい放題の戦闘映画が見たかった。
あと、「妖星ゴラス」でも思ったけれど、巨大怪獣はいらない。

☆☆★★★

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