ファースト・コンタクト

2021年06月30日 水曜日

ハズラフ・ドゥルール製作・監督・脚本・編集・視覚効果、ジェーン・ペリー主演の2017年のイギリス映画「ファースト・コンタクト(The Beyond)」

ある日地球の直ぐ側の宇宙空間に謎の現象が発生し、船外活動をしていた宇宙飛行士がそれに飲み込まれてしまった。
地球の科学者達はその現象をヴォイドと名付け調査を開始した。
無人探査船をヴォイドに送り込むとヴォイドはトンネル状になっており、その奥には惑星らしき物が見えた。
科学者達はより詳しい調査の為に軍が秘密裏に開発していた人間の脳を移植して機械の体と接続して動かすロボット「ヒューマン2.0」を使ってヴォイドへと送り込もうとしていた。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので見てみたシリーズ。
題名と宇宙モノ位の前知識で見てみた。

終始、科学者や関係者へのインタビューを繋ぎ合わせているドキュメンタリー風の構成になっていて、何が起こっており、それにどう対処するかをじっくりと描いており、全く知らない話を順番にキッチリと説明しながら話が進んで行くので結構見入って、どうなるの?でおもしろく見れていた。

ただ、ヒューマン2.0という脳を機械と繋いで機械の体を動かすという現代の科学を遥に超えたオーバースペックなガジェットを出してしまった事で急にSFが過ぎしまい、せっかくのモキュメンタリーが近未来フィクションになってしまう所で急に気持ちが離れてしまった。
しかも、このヒューマン2.0の顛末が長く、しかもよくよく考えたらヒューマン2.0を使う理由はヴォイド内の圧力が高過ぎて生身の人間では耐えられないかららしいけれど、ヒューマン2.0も完全な機械ではなく人間の脳が入っているし、ヒューマン2.0でも宇宙船に乗って行くのだから頑丈過ぎる宇宙船作った方が早い様な気ばかりして、ヒューマン2.0がいらない気がずっとしていた。
このヒューマン2.0が必要な理由って見続けると分かったのは、向こうの生命体の意図が地球上の球体が展開する前に分かってしまうとネタばらしが早くなってしまうので、人間の記憶ではなく機械やデータを再現する為に時間がかかるヒューマン2.0でないといけないという訳。

それに終盤になって向こうの生命体の意図ばらしから話が古臭くなるし、急に荒くなるしで、一気につまらなくなってしまった。
向こうの生命体は地球を守ってくれたというオチではあるけれど、地球人は危険だから地球を滅亡させる宇宙人とか、逆に地球人は見込みがあるので救ってやるとかのSFって、もう50~60年前にやりつくした古い話だと思うけれど、何で今更これやったのだろう?
この手の宇宙人の技術的に進んだ種が上から目線で勝手に干渉して来るって欧米的と言うか、キリスト教的なのか、そこまでお節介と言うか自分の価値観押し付け過ぎな宇宙人SFって飽き飽き。
別に、地球人の事は全く知らないのですが通りかかったら地球が大変な事になりそうなのでちょっと助けましたよ…なお人好しなお隣さんでも良いのに。
直ぐに宇宙人を神的な存在にしたがるけれど、スターウォーズやスタートレックで育つと宇宙人はちょっと違うお隣さんの感覚が基本になってしまっているので、自己啓発的な宇宙人ってどうにも馴染めない。

この終盤での地球を守る話辺りになると、今までやたらと説明的にじっくりと描いていたのに説明が無くさっさと話しが進んでしまい、突然荒くなるもの良くない。
多分、土星?辺りで謎の現象が起き、これの影響で地球に何かが落ちて来るのだけれど、この詳しい説明が一切無し。
自然現象の衝撃波なのか、ヴォイド的な人工的な何かなのかも説明が無く、これまでなら科学者達がその現象に出会った説明と、現象の調査データからの予想になり、それにどう対処するかを描くはずなのに、それが一切無く、直ぐに地球が危ないからの球体の展開になってしまう。
更に突然地球の側にもう一つの地球が出来るけれど、それに関する詳しい遭遇と分析の説明もやらない。
これって、ヒューマン2.0に時間をかけ過ぎて時間が無くなってしまって押し込んだ感があるし、まるで打ち切り漫画の最終回の様な詰め込み感。
普通、地球の側にこんな大きな物体があったらどちらも引力圏に入って地球の空気や水が向こうに行ったり来たりで環境がグチャグチャになるし、そもそも二つの惑星がぶつかって終わりじゃん。
まだ、地球を守る防衛の仕組みは分からなくもないけれど、惑星作っちゃうとかやり過ぎなファンタジー。
この惑星の出現は本当に蛇足。
地球とほぼ同じ環境なのに何故か大量にヒューマン2.0を送り込むとか意味不明だし。

この映画でどうしても気になるのは、わざとらしいカメラの演出。
人物が話している時はドキュメンタリー風の固定なのに、それ以外は手持ちカメラ風のぶれた映像となり、一々ピントがぼけた映像にしてから焦点を合わせるとか、見難いしわざとらしい。
今時こんな下手くそなカメラマンがいたり、カメラの仕組み的にピントってぼけるの?
それにドキュメンタリー風なのに所々に入る映像は映画・ドラマ的な狙って作った映像だし、ピンマイクやガンマイクで音を拾っていないのに戸を閉めた部屋の外からのカメラの映像に綺麗に音が乗っているとか、何故ドキュメンタリー映像を貫かず中途半端な映画・ドラマ的な嘘映像を挟んでしまったのだろう?
それに、この映画の中のドキュメンタリーは始めに一人の科学者を追った所から始めているので、別にヴォイドに関してのドキュメンタリーを撮影するつもりではなく、一人の科学者を追おうとするとたまたまヴォイドを追う事になったという非常に都合の良い話になっているので、初めの部分はいらないかも。

この映画、序盤は謎の現象を追うドキュメンタリーとして結構おもしろく、どうなっているの?で見れたけれど、ヒューマン2.0が出てしまって急に作り物が過ぎ、向こうの生命体の意図が見えるとガックリ来てしまい、終盤ではドキュメンタリー構成もおざなりになってしまって、見終わるとあーあ…と残念感が一杯だった。

☆☆★★★

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