ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章

2021年06月27日 日曜日

三池崇史監督、山﨑賢人主演の2017年の日本映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章
漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第4部が原作。

杜王町に引っ越して来た高校生の広瀬康一は不良に絡まれていた所を同級生の東方仗助に助けてもらう。
東方仗助は不思議な力を持っており、それは使用者の意思で出現し、自由に操れ、それぞれが違う特殊な能力を持ったスタンドと呼ばれるモノだった。
杜王町で犯罪を犯した片桐安十郎は謎の男に矢で射抜かれてスタンド能力を手に入れた。
片桐安十郎は自分を捕まえようとした警官の東方仗助の祖父を襲おうと迫っていた。

わたしは「ジョジョの奇妙な冒険」は子供の時から読んでいた好きな漫画の一つで、しかも第4部が一番好き。
以前にその4部を実写化したという話を何かで知ってはいたが全く食指が動かず、更に監督が三池崇史なら見る訳もなかった。
ただ、Amazon プライムビデオで配信が終わりそうなのを見つけ、見るべきか見ないべきかで何日か悩み、まあただだからと思って見てみたが、これが本当に酷く、見続けるのが結構苦痛だった。
何処にも現実味は無く、皆はヘンテコな演技だし、展開は結構次々と早いのに演出が間延びしていて、アクションもおもしろくないという悪い所ばかりが目立っていた。

始まりの時点で杜王町の説明が、「ここ十年で発展した町」と言っているのに、その映っている町はどう見ても歴史のあるヨーロッパの町にしか見えず、「住みたい町に二年連続で選ばれた」と言っているけれど、町のあちこちに落書きや張り紙があり、1980年代風の不良がそこかしこにいて、犯罪も多い結構治安の悪い町として描かれていて、説明と描いている事がチグハグ過ぎ。
ヨーロッパの古い街並みの中を日本人の学生達が歩きまくっている違和感と現実味の無さは半端ないし、名も無い通行人や群集は日本でよく見る人々なのに、その中で話に関わって来る人物だけは変な髪型で奇抜な服装をしていて周りから浮きまくっていて、漫画の要素を無理矢理現実に押し込んでいるので違和感しかない。
東方仗助の髪型を馬鹿にする不良も東方仗助の髪型と大して変わらず、東方仗助の髪型ネタが成立していないし、虹村兄弟の髪型も相当変だけれど、そこには誰も突っ込まないし。

演技も誰かの台詞が終わると次の人が喋ってと、きっちりと台詞が割り振られている感が凄く、それが演技が下手に見せているのかもしれないけれど、「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦漫画だから成立している台詞をそのまま言うと常に滑っている感も凄いし、現実的には言わない台詞を連続かつ大げさにやっているのかで誰もがわざとらしい演技にしか見えなかった。
特に最後の虹村兄弟の場面では舞台公演の録画を見せられているのか?と思える位の声の出し方に動き方だった。

台詞もやたらと間を取って話し、まるで撮影時のアクションからカットまでをそのまま使ったのかと思える位の台詞の前後の空白の多さ。
この間の開け方で、常に間延びしている感じがしてならなかった。

展開は漫画なら数話に分けてじっくりと描くのをサッとなでる感じで進めてしまい、わたしは漫画を見て知っているけれど全く知らない状態の人が見てもついて行けるのかは疑問。
何も分からない状態でスタンドが何で、スタンドを操っている?とか、更に各スタンド毎に特殊な能力があるの?とか、一人にスタンド一体かと思ったら虹村形兆はいっぱいスタンドいるじゃん!で、どこまで理解して見れるのだろう?
特に第4部って、その前の第3部でスタンドの基本的な所から始まって、色んな能力のスタンド使いが出ての第4部で、東方仗助のスタンド能力はそれまでのスタンド能力の中でも異質だったけれど第3部を知っているからすんなりと受け入れられたし、虹村形兆はそれまでが一人にスタンド一体だったのを覆すスタンドで驚きと新鮮さがあったけれど、その特殊なのを一話目からやっても訳分かんないじゃないの?
空条承太郎とか、ジョセフ・ジョースターとか、矢とか、そもそものスタンドとか、漫画読んでいると知っていても読んでいない人には説明不足なので不親切で、第4部の漫画通りに進める為に本当ならもっと説明しないといけない部分を相当削ってしまって完全に漫画読んでいる人向けにしか作っていない様な気がする。

アクションも漫画通りにスタンド同士の対決になるけれど、この映画でのスタンドは半透明に近く、しかもキラキラしていて、そもそもが見難く、更に東方仗助のクレイジー・ダイヤモンドや空条承太郎のスタープラチナとかは動きが速いので戦い始めると何をしているのか本当に見辛い。
それに結構スローモーションを多用するけれど、空条承太郎のスタープラチナは時を止めるので、時を止めるのにスローモーションを使うとそのスローモーションが何なのかが分かり難くて仕方なかった。
これ漫画だと、クレイジー・ダイヤモンドやスタープラチナの攻撃の時は一コマに腕が何本も描かれた形で表現されるので、ぱっと見でもどういう攻撃で何をしているのかが把握出来るけど、映像にすると早く腕を動かさないと凄さが表現出来ない一方で見辛くなってしまうと言う致命的な欠点が出てしまう。

一番最後の虹村形兆が死んでしまうのは漫画でもそうだったのは覚えていて、だけどこの早い時点で吉良吉影のシアーハートアタックが出て来て続編で吉良吉影を出したかったのは分かったけれど、漫画ではどうだったっけ?と思って漫画を見てみたら、レッド・ホット・チリ・ペッパーに電気の中に引きずり込まれていて、ああそうだった!思い出した。
それにしても音石明って不遇な人物。
漫画でも第4部の敵と言えば、まず吉良吉影で、音石明は余り挙げられない印象だけれど、映画でも省かれる予定だったのか。
実写で、長髪でエレキギターを持ってエレキギターを弾きながら戦う音石明出したら相当バカバカしくておもしろくなったはずなのになぁ。

この映画見ていると、相当人物が浮きまくっていて不自然だし、説明不足だし、台詞が常に滑って小寒くて、スタンド対決がつまらないので、レッド・ホット・チリ・ペッパー確認後に漫画をパラパラと見ていたら、漫画では当然ながら人物は別に浮いてないし、詳しく説明が入っているし、台詞も違和感が無く読めて、スタンド対決もおもしろくて、やっぱり「ジョジョ」を実写化すべきではなかったなぁと思った。
「ジョジョ」って漫画の中でも人物の服装が独特だし、台詞回しや擬音や効果音も独特で、それでもこの映画では服装や擬音を抑えて現実に合うように作っていても違和感が凄かったし、漫画でのスタンド対決のおもしろさや見せ方が全然表現出来ていなかったので、「ジョジョ」の漫画での表現は中々実写での表現では出来ないのか。
それとも三池崇史の「ジョジョ」への理解の無さなのか、ただ単に技量の無さなのか…。

漫画の実写化の難しさなのか、漫画だと東方仗助って結構ふざける事もあってお茶目な感じもあったのに、この映画の東方仗助ってそれが無く、髪型を馬鹿にされると子供でもボコボコにしそうなサイコパス感があった気がする。
この東方仗助って、漫画通りの台詞を言っているだけで非常に空虚に感じられてしまったし。
それに空条承太郎の女子高生に対する「やかましい!俺は女が騒ぐとむかつくんだ!」は漫画をそのまましていて、漫画では第3部からの承太郎も分かっての場面でそんなに違和感は感じなかったのに、この映画だと白い長いコートに白い帽子で、帽子にへばりついたヘンテコな髪型で変な目立ち方をしているおじさんが女子高生に切れるって相当ヤバかった。
この映画だと、この空条承太郎の前が無いので、行き成りこの格好で勝手に切れて女子高生に罵声を浴びせる大人って、関わっちゃいけない人にしか見えなかった。

この映画、お金のかかった出来の悪いコスプレ漫画再現ごっこにしか思えなかった。
興行的にも失敗だったみたいだし、一作目から「第一章」と付けて内容的にも続編作る気満々だったのに四年近く経っても続編の音沙汰さえ無いのはこれでは当然か…。

☆★★★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply