ミッション・ワイルド

2021年06月28日 月曜日

トミー・リー・ジョーンズ製作総指揮・監督・脚本・主演の2014年のアメリカ・フランス映画「ミッション・ワイルド(The Homesman)」
グレンドン・スウォーサウトの小説「The Homesman」が原作。

19世紀の開拓時代のネブラスカ。
一人で暮らしているメアリー・ビー・カディは精神を病んだ村の女性三人をアイオワまで連れて行く教会の役目を負った。
彼女は旅に出る前に不法侵入で捕まり殺されそうになっていた老人ジョージ・ブリッグスを命を助ける条件で旅の同行と手助けを求めた。
了承したジョージ・ブリッグスとメアリー・ビー・カディは三人の女性を馬車に乗せて荒野を進むのだった。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので、わたしが好きなトミー・リー・ジョーンズが出ているので見た映画。

サムネイルで西部劇だと知り、題名からてっきりドンパチの銃撃戦の西部劇かと思っていたけれど、全然違う静かで重いロードムービーで、掴み所が無いと言うか、掴まれ所が無いと言うかな映画だった。

元々わたしは単発的に物事が起こって行くロードムービーがどうにもはまらず、この映画がまさにそんな感じのロードムービーで、しかもはっきりとこれを描きますよ!的ではない描き方なので、ずっと何が何処を向いて何処に辿り着かせたいのかが分からずモヤモヤ。

ヒラリー・スワンク演じるメアリー・ビー・カディは非常に真面目で律儀な女性で、しかもこの時代にピアノを弾けたり、文字が読めたり、銀行に結構な資産があったりして良いとこのお嬢さんっぽい背景があるのに、何故か小さな開拓地で、この時代に三十代で独身で一人で暮らしている理由は全く分からず、その背景がほぼ描かれずで、行き成り何?何?状態。

三人の女性を何処かに連れて行くのは分かるけれど、連れて行った先に何があって、彼女達がそれでどうなるのかもよく分からないまま話が進んで行くので結構置いてけ堀。
この時代だと精神医学も進んでいなくて治療もままならないだろうから、元の家に戻って来る事が出来るのか?とか思いながらも、それじゃあメアリー・ビー・カディは何処まで分かって何の為に頑張っているのだろうか?になってメアリー・ビー・カディにいまいちついて行けず、彼女の自分の不遇の人生の代替として自分に負わせた任務なら自殺もよく分からなかったし。
結局求めていた物が違ったと分かって全部嫌になっての自殺なんだろうか?
ジョージ・ブリッグスは彼女の死後に彼女を称賛する様になってはいたけれど、メアリー・ビー・カディは途中で仕事を放り出した訳だし。

終盤で今まで主人公だったメアリー・ビー・カディからジョージ・ブリッグスに急に主人公が変わるけれど、そこまでの旅で二人の交流がそれ程描かれてもいないし、ジョージ・ブリッグスの新庄とかも余り多く描かれていないので、脇役が急に主人公に格上げされた感じで、どうにも主人公の移行に乗って行けなかった。
ジョージ・ブリッグスは初めは爆発コントで真っ黒で登場したりとか、わざとらしい泣き言で助けてもらったりとかでコメディ寄りの人物かと思っていたけれどそうでもなく、会話も少ない人なのでジョージ・ブリッグスが主人公になってからやっとジョージ・ブリッグスを描き出した感が強かったのもある。

よく分からず不思議だったのが、家も何も無い広い荒野の中に急に荒らされた墓が一つだけあったけれど、あれって旅の途中で死んでしまったのでそこに埋葬したという事なのか。
あの何も無い荒野の中で自分の子供を埋葬するという行為はアメリカ人の西部劇的な感覚だと共感出来るのだろうか?

それに、家も何も無い広い荒野の中に急にホテルがあったけれど、あれは現実味がある話なんだろうか?
まだ近くに小さな集落があって、そこに鉄道が通るとかなら分かるけれど、あの何も無い所で町を作るのは本当にあれに近い事があったのだろうか?
何か、撮影で最終的にホテルを燃やす為に何も無い広い土地にした感じも無くはないのでは?と思ってしまった。

最後の墓標は、誰にも知られず死んだ人を称える人もいる一方で、それさえも簡単に忘れられてしまうという事の比喩だったりするのだろうか?
人生って何かあるようでも結局は誰にも知られず、何も残らないという無常感なんだろうか。

オープニング・クレジットでメリル・ストリープの名前を見付けたけれど、最後の最後に登場するまでその事を忘れていて、何でこの役でメリル・ストリープなんだろうか?
メリル・ストリープが出て来た事でオールスター映画でたまにある、あの人が急にここで出て来て直ぐ退場するお遊び的な驚き要員の感じなってしまっていて、この内容だからメリル・ストリープの登場はいらなかった様な気がした。

この映画、後から思うと誰も救われない哀しい物語としては良いとは思うけれど、見ている間は全然掴まれず仕舞い。
ヒラリー・スワンクやトミー・リー・ジョーンズの存在感や演技で見てはいられるけれど、満足感は薄かった。

☆☆★★★

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