グレートウォール

2021年05月31日 月曜日

チャン・イーモウ監督、マット・デイモン主演の2016年の中国・アメリカ合作映画「グレートウォール(長城 The Great Wall)」

黒色火薬を探し求めて旅をしていたヨーロッパ人のウィリアム・ガリンとペロ・トバールは砂漠で謎の生物と戦い、万里の長城に辿り着く。
万里の長城では兵士達が戦いの準備を始めており、捕虜となった二人は万里の長城に押し寄せる謎の生物の大群を目にする。
兵士達は2000年前から60年毎に押し寄せる饕餮(とうてつ)を倒す用意をしていた。
ウィリアム・ガリンとペロ・トバールは万里の長城に上がって来た饕餮を倒した事で認められるが、ペロ・トバールは兵士達が持っていた火薬を持ち出して逃げようと提案。
ウィリアム・ガリンはリン・メイ隊長の生き方に動かされ、饕餮と戦う事を選択する。

Amazon プライムビデオで配信が終了間近だったので見ようと思い、マット・デイモンが万里の長城で怪物と戦うという話を何処かで見たか聞いたかで知っている位で見てみたが、緩い部分はあるものの大群系サバイバル・アクションとしては結構おもしろかった。
ただ、これまでの色々なモノの寄せ集め感も。

謎の生き物が大群で押し寄せるって「スターシップ・トゥルーパーズ」的だし、饕餮が大群で押し寄せて饕餮の上に饕餮が乗って万里の長城に登って来るのは「ワールド・ウォーZ」的で既視感はあるものの、このワラワラ感は結構好きだし、饕餮に対して謎の兵器や仕掛けや装備で結構善戦するというのも、ただやられて悲壮感が漂わなくて好き。

この禁軍の装備や装置はニヤニヤ感があって楽しい。
映画内でマット・デイモンがハロルド2世の下で戦ったと言っていたので11世紀頃だとは思うけれど、その当時として超技術がわんさか。
人力で機械が伸びたり、巨大な投石器や矢や槍の発射装置。
万里の長城に登って来る饕餮に対して真上から矢や槍を発射すればいいのに、バンジージャンプ装置で人が飛び降りて槍を刺して戻って来る効率と頭の悪い戦術には笑ってしまった。

展開も饕餮との戦いに集中しているので見やすく、60年の準備期間からすると足りない気がするけれど人や武器は揃っているので饕餮との戦いは拮抗しており、禁軍の攻撃に対して裏をかく饕餮群が最後は都まで押し寄せてしまうとかもいい。

ただ、なんだかなぁと思う部分も。
主人公がわざわざ西欧人なんだから、もっと西欧と東洋の価値観や文化の違いを見せても良かったのにと思うけれど、そこは少々。

各主要人物は結構立ってはいるけれど、もう少し立ちそうな感じもする物足りなさがあるし、各人物のアクションが意外と少なく、武侠映画的な雰囲気もあるのにアクションの物足りなさもある。
禁軍の隊長達の活躍が大してなかったし、将軍に夜の調査をさせるなだったしで、禁軍の上層部のアクションが見たかった。

饕餮をただの伝説上の怪物にはせず、隕石の落下から出て来たと言う地球外生命体のSFを出している部分は良いけれど、磁石を近づけると活動停止状態になったり、あれだけの数の饕餮が女王が死んだだけで完全に活動停止してしまうとか都合良過ぎ。
饕餮の大群をどうやって全て倒してめでたしめでたしにするかの発想を思いつかなかったからだろうけれど、女王を倒したら解決だと軍師だけが主張しているのがそのままとか都合良過ぎ。

余り前知識が無かったので、見終わって知って、意外だった事も。
マット・デイモンが出て来て、舞台が中国なので、これは全世界向け、特に欧米向けにわざわざ英語を喋る西欧人を主人公にし、英語を喋る中国人も出ているのかと思ったけれど、この映画自体が中国とアメリカ合作映画だからという理由もあったのか。
見ている限りでは中国側の影響が強い様で、やたらと広々としたセットなので人物間の距離があるとか、大勢を動員しているとか、中国側の衣装がやたらと極彩色で派手で時代考証とか関係無いとか、隊長達はイケメン若手俳優っぽいとか、本来なら男性だけの軍隊の中に綺麗な若手女性俳優がいるとか、近年の中国の映画やテレビドラマっぽい要素が沢山。
製作に中国電影集団が入っているので、多分ここのやり方なのか?

監督がチャン・イーモウだとは知らず、チャン・イーモウってもっと情緒的な映画の人だと思っていたけれど、こういうハリウッド映画的な怪物映画も撮るんだと意外。
チャン・イーモウならもっとワイヤーアクションをやって、武侠映画的なアクションが見たかった。
リン・メイ隊長はある程度見せ場あるものの、禁軍の将軍や隊長達の見せ場がほとんどなかったので、万里の長城に上がって来た饕餮を各人が独自の特殊な武器を持った将軍や隊長達が剣技や槍技でバッタバッタと蹴散らすとかだったら笑いながら見れたのに。

アメリカ側の製作がレジェンダリー・ピクチャーズで結構納得。
レジェンダリー・ピクチャーズって、結構粗目のアクション映画や怪獣映画が多い印象で、だからこの映画も中国怪獣映画なのかと思った。

こういう怪獣アクション映画にウィレム・デフォーアンディ・ラウが出ていたのが意外。
アンディ・ラウは美味しい役でカッコ良かった。

字幕で見ていたので「饕餮」は何と読むのか分からず、何と言う怪物と戦っていたのか最後まで分からず仕舞い。
吹き替え版を見たら「とうてつ」と言っていて、そこで初めて知った。

吹き替え版で言えば、こういう複数の言語で喋る場合、英語の台詞が日本語に吹き替えられ、中国語はそのままなので頭の中が変な感じになる。
これはまだマシだけれど、欧米の映画で日本語が出て来る吹き替え版は全部が日本語なので何が何だか。

吹き替え版だと、やっぱり原語の台詞の音の響き方と吹き替えの処理された音の響き方の違和感は気になる。

言語で言えば、主人公が英語なのはイングランド出身なのでまだ分からなくはないけれど、他の西欧人も英語を喋るのはどうだったのだろう?
11世紀当時って、イングランドは一地方の一国家位で、英語も一地方言語位なのかな?
この当時のヨーロッパでの共通語的な言葉ってラテン語とかフランス語だったのだろうか?

この映画、内容的に正に中国とアメリカが合作した映画で怪獣映画をやったのがそのまま出ている映画で娯楽映画として気楽に楽しく見れるけれど、合作映画にしては内容的に合作の意味合いが薄いし、武侠映画的な要素もあっていいのにそこも薄くてアクション映画としては物足りず、脚本やアクションをもっと煮詰めて、更に色んなモノを詰め込んでも良かった気が大きくする映画だった。

☆☆☆★★

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