セル

2018年09月22日 土曜日

トッド・ウィリアムズ監督、スティーヴン・キング原作・脚本、ジョン・キューザック製作総指揮・主演の2016年のアメリカ映画「セルCell)」。
原作はスティーヴン・キングの小説「セル」。

グラフィック・ノベル作家のクレイ・リデルは契約の為に出ていた出張の帰りの空港で携帯電話で家族に電話していると電池が切れてしまった。
公衆電話を使おうとすると周囲で携帯電話を使っていた人々が突然狂暴化し、無差別に人々を襲い始めた。
クレイ・リデルは狂暴化した人々から逃げ出し、地下鉄で出会ったトム・マッコートと共に狂暴化した人々の中を家族を探しに出た。

ジョン・キューザック主演位の事前情報しかなく、題名が「セル」なので、てっきり携帯電話に謎の通話が来るサスペンス・ホラーかと思っていたら、バイオハザードモノの亜種で悪い意味でビックリ。
ここ二十年位で擦られまくって、最早どんな新機軸を打ち出しても既視感しかないバイオハザードモノやゾンビモノを堂々としている。
しかも、オープニング・クレジットでこの映画の原作と脚本をスティーヴン・キングがしているという事を知り、こんな使い古された亜種の亜種でしかない題材を今更スティーヴン・キングがしていた事にも悪い意味で驚き。
まあ、スティーヴン・キングは「ザ・スタンド」とか、「ミスト」とか、世界が強大な何かによって一気に崩壊した中を生き残ろうとするという話が好きで、お得意の展開なんだろうけれど。

ただ、この狂暴化や世界の崩壊の既視感やお手軽感や適当感ったらありゃしない。
バイオハザードモノやゾンビモノだと感染者や蘇った死者が徐々に増えて行って世界が崩壊していないといけないので時間がかかるけれど、この映画では一瞬で混乱が起こり世界が崩壊するので映画としての掴みや序盤の盛り上げとしては抜群だけれど、見ていても手軽に世界を崩壊させたなぁ…と思ってしまうし、こんな展開何度見た事か…だし。

それに、携帯電話からの謎の音波に関する原因や目的は一切分からないままというのが非常に消化不良だし、そこを曖昧にしたままだと初めに思い付いた設定を適当に放り込んで、あとは知りませんの感じしかしない。
携帯電話から聞こえているのでSF的原因や宇宙人の侵略とかを思ってしまうのに、中盤から携帯人の皆が繋がるとか、一人の目を通して他の携帯人も見ているとか、テレパシーを使って夢を見せているとかの最早見ている方は置いてけ堀で何のこっちゃ?な、作者の独りよがりが爆発し始める。
夢に出て来るレッドフードのボス的な携帯人は殺したはずなのに生きていたり、夢に出て来たりと悪魔っぽくて、携帯電話という小型コンピューターだからSFだと勝手に思ってしまうけれど純然たるファンタジーで、携帯電話からの音波って、映画「死霊のはらわた」のネクロノミコンの呪文と同じ様な、魔法の呪文で合理的な説明なんかは無意味だと考えた方がしっくり来る。
スティーヴン・キングの小説や映画だと時々普通に悪魔が出て来るし。
ただ、それだとこの「セル」って、同じスティーヴン・キングの「ザ・スタンド」と似た様な事していて、そこでも既視感ばかり感じるし。

レッドフードも詳しい説明が無いままなのでどうにも取れるのだけれど、

・レッドフードは悪魔で人間を自分に従う様に改造した?(一気に片付けるために携帯電話が普及するのを待ってた?)

・レッドフードの夢を皆が見ており、主人公は以前からレッドフードの画を描いているので、実は主人公は以前からレッドフードに選ばれていた?

・主人公が描いたレッドフードの夢を皆が見ているのは有り得ないので、実は主人公は早い段階で携帯人になっており、主人公の頭の中での出来事だった?(だからジョン・キューザック主演)

等々を思ってしまったけれど、結局は最後まで情報不足、説明不足なのでどうでも思えるし、観客に想像させると言えば聞こえは良いけれど単に製作側の投げっぱなしジャーマンという仕事放棄でしかないとしか思えない。
わたしは原作小説を読んでいないので全く定かではなけれど、どうやら小説にはレッドフードは登場しないっぽく、個人が無くなった集合体の重要度の方が大きいみたいで、それだとSF的でまだ分かるのに、映画だとレッドフードの存在のせいでより何のこっちゃ?になっている気がしてならない。

ジョン・キューザックって、もっと可愛らしい印象だったけれど、この映画での髪型もあって何だかトム・ハンクスっぽく見えて来た。
サミュエル・L・ジャクソンは何時もの、何が起きても表情を変えずに何時でも下ネタ交じりの冗談を言うという、これまた既視感しかない役と演技。サミュエル・L・ジャクソンって、ずっと同じ所にいる気しかしない。

この映画、まだ原作が2006年で携帯電話が普及した初めの時なら分かるけれど、2016年にこれやられてもネタとして何歩も遅いし、バイオハザードモノの亜種な上、バイオハザードモノのお馴染み的展開、既視感のあるスティーヴン・キング的要素と言い、この映画ってわざわざ作る必要あったの…?と思ってしまった。

☆☆★★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply