オール・ユー・ニード・イズ・キル

2018年04月22日 日曜日

ダグ・リーマン監督、トム・クルーズ主演の2014年のアメリカ映画「オール・ユー・ニード・イズ・キルEdge of Tomorrow)」
日本のライトノベル「All You Need Is Kill」が原作。

宇宙から謎の生命体が地球に侵略。地球人はそれらを「ギタイ(Mimics)」と呼び、統合防衛軍を築き戦っていたが劣勢だった。
アメリカ軍の広報担当官ウィリアム・ケイジ少佐は将軍から前線での取材を命じられたが嫌だったので将軍を脅して回避しようとするが将軍の怒りを買って二等兵として戦場に出されてしまった。
ウィリアム・ケイジはパワードスーツを装着し戦場に出るが、ギタイによって殺されてしまった。
しかし、目の覚めたウィリアム・ケイジは出撃前の軍基地に到着した時点に戻っている事に気づく。
ウィリアム・ケイジは何度も基地に到着し、出撃を繰り返し死亡すると再び以前に戻るという体験を繰り返していた。
その中で戦場で出会ったリタ・ヴラタスキを助けると、彼女は「戻ったら自分に会え」と言う。

所謂「タイムループ」「ループもの」と言われる話。
ただ良くあるこの類だと、その何度も繰り返される時から逃れようとするけれど、この映画では逃れる訳ではなく、何度も繰り返す事によって戦闘で鍛えらえ、敵の行動を何度も見る事によって敵の先を読んで活躍するという、正にテレビゲームで何度も繰り返してクリアして行くのをやっている。
しかも、初めは難しいアクションゲームを何度もやり直して敵の出現や行動パターンを知って、それに対処する事によって先に進んで行くという所から、実は何処かにいるボスを倒すのが目的だと分かり、ゲームの「ヒットマン」の様に幾つもある侵入方法と幾つもある手法からどれを選んで行動して行くかをオープンワールドでやっている様な展開になり、この拡張は非常に上手い。

この展開が非常に上手く、物語が二転三転しながら、主人公が何度も試しながら正解を見つけ出して行くのは非常にワクワク感と興奮があり、惹きつけられたまま一気に見せた。

ただ、この序盤から終盤までの展開が上手い分、その他の設定や結末がまあ展開の為に都合が良過ぎ、何じゃそりゃ…感で萎える萎える。
そもそもトム・クルーズはどう見ても50前のいいおっさんで、広報官として結構有名という設定があるにも関わらず、新兵としてやって来て、速攻で戦場に駆り出されるとか、まあ現実味が無い。
まだ、周りにもおっさんなのに徴兵されて文句を言っていたり、恐怖に震える人がいたならトム・クルーズも違和感が無いし、むしろこの強引な導入ではなく、初めから若い新兵が主人公ならすんなり入って行けるのに。
多分、この企画でトム・クルーズを配役してしまったからの強引な導入なんだろう。

で、戦闘になるけれど、兵士が装備しているパワードスーツも非常に微妙。
てっきりこのパワードスーツによって兵士達の戦闘能力が飛躍的に上がると思っていたら、兵士達はパワードスーツ無しで走る方が速そうで、ドタドタ走っているので敵の攻撃を避け切れずにあっさりと次々と死んでしまうし、敵の動きが尋常じゃなく速過ぎるので、このパワードスーツは素早さを削いで防御力が高いのかと思いきや、パワードスーツと言っても外骨格程度しかない体が見え見えなので敵に簡単にやられるし、パワードスーツを何の為に着けているのかが分からない。
パワードスーツを兵士一人に一体だと制作費が相当かかるし、兵士がパワードスーツを使いこなせる為に訓練も必要だろうし、それなのにあっさりやられ過ぎで効率悪すぎだろう。
こんな無駄なパワードスーツを作るくらいなら無人兵器を大量に作れば良いじゃん…と思ってしまった。
パワードスーツが無駄だな…と思っていたら、トム・クルーズとリタ・ヴラタスキはパワードスーツの補助によって跳んで跳ねての超人的動きをしていて、一般兵士がパワードスーツを全く使いこなせていないだけだと分かって更にこのパワードスーツの無駄感が倍増。

で、トム・クルーズがタイムループを行う様になるのだけれど、その理由が、「敵は時間を操る力を持っており、大量にいる敵の中で数十万体に一体だけいる希少個体アルファが死亡すると全ての個体に指令を与えている中枢であるオメガが時を戻しアルファの死亡前に時を戻すのだが、ウィリアム・ケイジがアルファの血を浴びて死亡したから」。
いや、何のこっちゃ?
これはSFなのか?
敵は火の玉を吐き出すか、物理的にしか攻撃して来ない、脅威ではあるけれど大分原始的な攻撃をするのに、どういう原理なのかも全く見せない時間を操る設定は、この物語を展開させるだけの都合の良過ぎる設定。
しかも、アルファの血を浴びたら全く別生物の地球人の時間が戻るとか、これも物語を展開させるだけの都合の良過ぎる設定。

それに何故アルファが少ないのか?何故アルファだけが特殊である必要があるのか?という理由も敵の戦略や侵攻からも全く見えないので別に全部アルファでいいじゃん…と思ってしまったし、そんな大事なアルファが他の雑魚と同じく最前線に出て来るので、アルファはやられて情報収集をする役目なのかな?とも思ったけれど、それだったらもっと数が多い方がいいだろうし、アルファの血を浴びたら時間を戻す力が相手に移る仕様は余りに間抜け過ぎるし、オメガを破壊すると全敵が機能停止するという仕様も余りに間抜け過ぎだし、そもそも地球侵攻時には何処でオメガが指令を出して、あれだけ巨大なオメガが地球に移動して来ても気づかないのか?というものあるし、宇宙空間からでかいオメガが移動して来ている時に攻撃受けたらそこで侵略終了になってしまうし、終始敵の設定で穴ばかりを感じたし、展開される為だけの都合の良さしかなかったんだけれど。

都合の良さの極めつけは結末。
オメガを破壊したら大分前に戻ったのにオメガは破壊されたままとか、ハッピーエンドにする為のだけの強引過ぎる展開に白けまくった。
別にトム・クルーズが犠牲になって終わりでも良かったじゃん。

そうなると物凄く「マトリックス」感が出るか。
この映画、終盤になると急にマトリックスっぽくなった。
そもそもギタイがセンチネルズっぽいのがあったけれど、パワードスーツに両腕マシンガンでギタイを打ち落とすのは「マトリックス レボリューションズ」の既視感があったし、最後のオメガは「マトリックス レボリューションズ」でのデウス・エクス・マキナとの取引と破壊の違いはあるけれど、主人公の自己犠牲であれだけの戦争が一気に終結してしまうとか。

あと気になったのは、タイムループで死に続ける話なのに、そこの演出が結構薄い事。
何度も同じ出来事の繰り返しなのに、それを描くのは初めの数回だけで、後は繰り返しをすっ飛ばして新たな展開を見せて行く。
その分、話の展開が早くて次々に新たな展開を見せ続けて飽きは来ないけれど、何度も繰り返さるを得ない面倒臭さや苦悩が薄くて、トム・クルーズの人物が薄く見えてしまった。
まあ、トム・クルーズって、何時も賢い役をしても賢く見えず、そこはかとないアホの子感で溢れているからかもしれないけれど。

この映画、確かに展開は抜群におもしろい。
繰り返される時間から徐々に理解しながら様々な方向に話が展開して行く上手さで飽きさせないけれど、設定とかがご都合主義過ぎて萎えたし白けた。
展開の為に強引でも存在する設定は全く好きじゃない。

☆☆☆★★

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