隠し砦の三悪人

2017年08月11日 金曜日

黒澤明製作・監督・脚本・編集、三船敏郎主演の1958年の日本映画「隠し砦の三悪人」。

百姓の太平と又七は一旗揚げようと山名と秋月の戦いに参加したが、秋月は負け、二人は山名の捕虜となってしまう。
何とか逃げ出すと偶然薪にしていた木の枝の中から金を見付け出す。その金は山名の捕虜の時に聞いた秋月の隠し軍用金だった。
二人は金を持ち逃げしようとするが二人の前に謎の男が現れ、太平と又七とその男の三人で金を持ちだそうとするが、太平と又七の前には秋月の姫と思われる女が現れ、謎の男は彼女には手を出すなと言う。

わたしは黒澤映画は有名所は見て来たけれど、何でかこの「隠し砦の三悪人」を見てなかった。しかし、この映画痛快娯楽時代劇として非常におもしろいし、非常に素晴らしい。
筋としては皆で軍用金を持ち出すというのは分かっているけれど、「この先、どうなんの?」「この窮地をどう乗り切るの?」と常にワクワク、ドキドキが続き、太平と又七を中心としたコメディとしても面白いし、剣劇としても非常に緊迫感と興奮があるし、人物は誰もがギャンギャンに立っていて、支配者層と普通の人の違いを人間味を持って描いていて、まあ上手い。

始まりから太平と又七の悪口言い合いながらもノホホンとした関係をはっきりと見せながらも、目の前で兵士が殺されて、実は逃げ場が無い追い詰められた状況だと見せる所で、コメディとしてもサスペンスとしても掴みが抜群過ぎて捕まれて離されなかった。

その後の捕虜達の暴動の圧倒さから、ちょこっとだけ遠くに見える真壁六郎太の登場とか、まあ画的な強さも半端無い。

序盤で真壁六郎太が本物なのかどうかの謎も色々ミスリードを見せながらも、早い段階で軍資金と姫を山名領を通り抜けて運び出すという方向へ持って行き、そこから次々と問題が起こるという展開の移り変わりも見事な早さ。

窮地が次々に訪れ、それを機知でかわして行く楽しさを見せておいて、突然真壁六郎太の走る馬上での切り合いから田所兵衛との一対一の決闘へと一気に雰囲気を変えるという展開が非常に気持ち良い。
特に馬上での切り合いは近年のハリウッドのアクション映画でも感じた事の無い興奮だったし、そこから静と動を意識させる田所兵衛との槍での戦いは興奮が止まらなかった。
ここでの対決は真壁六郎太と田所兵衛の関係性と各人がどういった人間かを見せ、それが終盤の展開に繋がって、田所兵衛の行動をすんなりと納得出来るのだから派手な見せ場と人物を見せる場面とそれが振りになっているという本当に上手い脚本。

上手いのはそれぞれの人物の描き方も。
太平と又七の悪態つきながら喧嘩しながらも危機になれば身を寄せ合う仲良しさと、また喧嘩したりの行ったり来たりでこの二人が単純なアホで、その単純なアホさが問題を引き起こすという展開になるし、真壁六郎太のこの状況だからの覚悟と迫力と機転の良さと清々しさとで、この人物だからこそ上手く太平と又七を操れるし、田所兵衛も付いて来るという展開も分かり、この人物像と物語の展開が合致するのが見ていて本当に気持ち良い。

その人物を立てているのは脚本もあるけれど役者の力も凄い。
太平役の千秋実と又七役の藤原釜足は普通の人間としての狡さや恐怖を見せているけれど、二人が文句を言えば笑ってしまうコメディアンっぷりがたまらない。
真壁六郎太役の三船敏郎は、あの迫力と魅力の塊の様な人物はやっぱり三船敏郎じゃあないと成り立たない。
田所兵衛役の藤田進はおいしい役所ではあるものの、こちらも迫力と清々しさがたまらない。
雪姫役の上原美佐は存在感はあるものの、喋るとまあ下手。上原美佐はこの映画が初出演だったらしいけれど、台詞を言うと素人並みで、もうちょっと何とかならんかったのか?と思える。途中のおしという事にしたのも、作中内のどうのこうのよりも彼女に喋らせないという事が先行した様に思えるし。

この映画、まあ全てが見事。素晴らしい娯楽時代劇。
グイグイ引き込まれてしまう展開。機転だけの問題突破だけでなく、剣劇としても抜群に緊迫感と迫力があり、最終的に清々しいめでたしめでたしで、見終わると太平と又七の様に一時の夢を見ていた様な不思議な気持ち良さがある。最後のあの太平と又七でのサラッとした終わりなんかたまらない。
これを見て、改めてやっぱり黒澤明は凄いなと。

☆☆☆☆☆

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