ネットにはアメコミの色んな話が落ちているなぁ…突っ込みたい!と言う話

2017年06月16日 金曜日

いや、中々酷い記事を見た。
この「アメコミ作家の研究 その1 アレックス・トス Alex Tothhttp://www.sanspo.com/otacul/news/20170614/otc17061414310002-n1.html)」という記事。

時々アメコミ関連の権威らしい人のアメコミのヒーローモノをよく知らない人向けの記事って、アメコミのヒーローモノをちょっとだけ知っている人からも突っ込み所が多い事が多いけれど、この記事なんか正にそう。
一々突っ込んで行く所多過ぎ。ウズウズと突っ込みたくなってしまったので無謀にも突っ込んでみる。

まず、現在マーベルの公式サイトでも「マーベル」表記なのに、今だに「マーヴェルコミック」表記。しかも「コミックス」の「」を付けていないし。「DCコミック」も同様。

~米国でのアメコミ出版物のビジネスは低調で、~」と書いているが、いやいや、ちょっと調べれば分かる事なのに「1990年代のバブル的ブームが弾けて売り上げが落ち込んだけれど、2000年代になって徐々に回復し、最近ではそのバブル期以上の売り上げになっている(Comichron Comic Book Sales by Year)」という事も調べずに勝手な先入観で書いているじゃん。

その日本でのアメコミ出版物の人気だが、これも決して高くはない。だがそれは米国のように「刊行されているが売り上げ低調」なのではなくて「刊行されていないから売り上げがない」という状態。」と言うのも本気で知らないのか、それともその結論ありきなのでとぼけているのか?
日本語翻訳版はここ何年も、ShoPro Booksヴィレッジブックスから何冊も出版され続け、最近では毎月10冊弱出版されている第何次かのアメコミ翻訳本出版ブーム真っ最中。
しかも、映画の効果もあってか以前に比べて期間も長いし、翻訳冊数も半端無い状態って事も、アメコミの日本での現状を書いているのに本気で全く知らなかったら余りに間抜けだし、やっぱりこんな現状を無視しても結論ありきなのかしらん?
この現状を知っていても、それでも「刊行されていない」と言っているのか、それともShoPro Booksやヴィレッジブックスに儲けさせたくないから「刊行されていない」事にしているのかしらん?

アメコミの制作手順とは、ストーリー(原作)、ペンシル(下書き)、ドローイング(ペン)、カラーリング(着彩)、レタラー(吹き出し文字)、カバーアート(表紙画)などが~」と書いているけれど、普通は、「ライター(原作)、ペンシラー(下書き)、インカー(ペン・線入れ)、カラリスト(着彩)、レタラー(吹き出し文字)」と役職名で紹介するか、行程なら「ストーリーやプロットを作る(原作)、ドローイング(下書き)、インキング(線入れ)、カラーリング(着彩)、レタリング(吹き出し文字)」だよね。行程と道具と役職名が混ざっていて何を指しているのか分かり難い。
「知らない日本人向けに分かりやすく…」と言う事なんだろうけれど、何故大手の新聞記事で普通は使わない独特な呼び方するんだろう?流行らそうとしているのかな?

この記事の一つの結論として「まず根本的な問題として「作家ブランドの確立」がある。」と書いていて、どうやら日本の漫画の様に原作者や漫画家と漫画作品が繋がって認知されないとアメコミは売れないらしい。
だとしたらライターやペンシラーがよく変わるオンゴーイングは翻訳版出しても売れないという事になるけれど、ペンシラーが変わっている「New Avengers(Vol.1)」の翻訳版「ニューアベンジャーズ」シリーズは何故最終巻まで翻訳版が出版されたの?と言う話だし、ライターもペンシラーも違うデッドプールの様々なシリーズが出版され続けているのは何故?と言う話だし。

それに疑問なのが、今の日本でアメコミのヒーローモノを売り出すという話なのに何故アレックス・トスを出して来るのかも分からない。
アレックス・トスの作品を今出版すれば売れるって事?
今の「デップー!!」とか「俺ちゃん!!」と言って喜んでいる世代や、「DC:リバース」を翻訳本で出そうとしている現在の翻訳状況でアレックス・トスの本出してもどれだけ売れるんだろうか?と思うのだけれど。
前2ページと後ろのアレックス・トスを紹介する2ページは関係が無いのかもしれないけれど、だったら初めの日本どうこうの話は何?と言う話だし。

この「アメコミ作家の研究」が「その1」だし、この「その1」で日本でのアメコミ状況に言及しているから、今後は「ニューアベンジャーズ」シリーズが最後まで出たという事は日本でもそれだけ売れた、人気があったライターのブライアン・マイケル・ベンディスのどういった所が日本でも受けたのか?とか、「バットマン:梟の法廷」から始まる「Batman(Vol.2)」の翻訳版が今でも続いているのは、ライターのスコット・スナイダーやペンシラーのグレッグ・カプロの何が日本でも受けたのか?とかのアメコミ作家の研究になるんじゃないかと期待しているのだけれど。どうなんだろう?
 
 
この記事の著者の高橋信之と言う人、元々わたしが日本のアメコミ解説者?批評家?の人達を詳しく知らないので検索してみたのだけれど、この人のアメコミ関連の記事はほぼ見つからなかった。
出て来たのが「『バットマン』より強大だった『ドラゴンボール』。実は貧弱だったアメコミ市場http://blog.freeex.jp/archives/51501404.html)」という記事だったけれど、こちらも突っ込み所多過ぎ。

アメリカでのコミコンはサンディエゴのコミコンとニューヨーク・コミコンの「二つだけです。」と言い切っているけれど、ちょっと調べただけでも40イベントあったんですけれど…(List of comic book conventions
じゃあ別にシカゴ・コミコンとか、ボストン・コミコンが、あるわけじゃないんですね。」と言う問いに対しての「二つだけです。」と言う返答だけれど、シカゴでも「Wizard World Chicago」は前身のイベントは1970年代から開催され、「Chicago Comic & Entertainment Expo」といったコンベンションはあるし、ボストンでは正に「Boston Comic Con」が開かれているんですが、この人本当に専門家なの?

今はシーズンを分けて二つやってるんですよね。」と言うのも意味不明。
コミコン・インターナショナル(サンディエゴ・コミコン)は非営利団体のコミコン・インターナショナルが運営していて、ニューヨーク・コミコンの方は営利団体のReedPOPが運営している別イベントじゃん。

それにこちらでも「アメリカでも面白いのは、アメコミの市場ってあまり変わってないんです。部数も落ちてるかもしれない。」という意図的な嘘なのか、本当は調べも何もしていないのに知ったかしているだけのか分からないけれど、こんな事言っているし。

バットマンも全世界のライセンスを合わせても5~60万部ですよ。」とも言っているけれど、これも事実とは違う。
Diamond Comic Distributorsの2016年の売上上位だけをざっと見ても、バットマン・フランチャイズで300万冊越えていますけれど…。

マーベル・スタジオは映画の製作がメインの会社ですね。「マンガがあってもいいよ」ぐらいです。」って、マーベル・スタジオズとマーベル・コミックスは別会社だけれど、マーベル・スタジオズの人間って映画がヒットしているからそんなにコミックスに対して尊敬の無い態度なの?
ケヴィン・ファイギとかの発言はサービス・トークで、何処かでコミックスを見下した発言していた?これって、この人の単なる妄想でしょ。この発言って、マーベル・スタジオズの人に対してもマーベル・コミックスの人に対しても相当失礼な発言。

この高橋信之と言う人、「日本ではアメコミが売れていないのではなく、刊行されていない!」、「アメリカでもアメコミは落ち込んでいる!」と言う事実とは違う前提の話ばかりで、「日本の漫画・アニメ凄い!アメコミ大した事ない!」という信仰にも近い前提ありきで、ちょっと調べればこんなわたしでも分かる事実も無視のよくあるアレ。
こんなわたしみたいな雑魚のグダ話よりも、権威のあるアメコミ研究家さん突っ込んであげて…と思ったり、思わなかったり。

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