ドラゴン危機一発

2015年11月16日 月曜日

ロー・ウェイ監督・脚本、ブルース・リー主演の1971年の映画「ドラゴン危機一発(唐山大兄)(The Big Boss)」。

従兄弟の紹介で製氷工場に勤める事になったチェン・チャオアンだったが、仕事を紹介してくれた従兄弟や友人が行方不明になる。彼等は製氷工場の工場長と社長達が麻薬の運び屋をしていた事を知った為に彼らに消されていた。チェン・チャオアンは従兄弟達を探し始めるが、やがて社長達の悪事を知る事となる。

ブルース・リーが渡米して香港に戻って来てからの映画一作目だそうだけれど、非常に微妙…と言うか、話は粗く、展開はもっちゃりしているし、ブルース・リーのアクションもおもしろくはないしで出来は良くない。

主人公のチェンは仕事が無いのでやって来たらしい事や、何故かチェンは無茶苦茶に強く、母親から戦う事を止められている事が語られるけれど、それらの詳しい説明は無いままで主役の背景が全然見えて来ない謎だらけの人。そこを省いたのだから本編をしっかり描くのかと思いきや、仲間が行方不明で主人公が社長達に簡単に騙されているだけの話がダラダラと続いて大分退屈。
チェンは強い割に抜けまくっていて、社長達に良い様に騙されてもあんまり怪しみもしないし、まんまと接待攻撃に取り込まれ、酒を飲んでフラフラ遊んでいるわ、売春婦と寝てるわでカッコ付けている割に駄目駄目。
終盤になってやっとブルース・リーのアクションが弾けるけれど、武器を使ってバンバン人殺して行って、皆殺しにしてしまう。最後の社長も殺害して動かなくなった後でも何度も何度も殴り続けていて、こんな単純かつヤバ過ぎる主人公をどう見れと言うんだ?

中盤までジェームズ・ティエン演じる従兄弟のシュウ・シェンが主役で、ブルース・リーのアクションも目立つ場面もそれ程無いという微妙な構成は、どうやら元々ジェームズ・ティエンが主演でブルース・リーが脇役だったらしいのが、ブルース・リーが目立つので彼が主役になったらしく、それで前半ブルース・リーの活躍が薄いらしい。
前半ブルース・リーが全然戦わない理由として、「母親に喧嘩をするなと言われた」らしいのだけれど、それならブルース・リーの怒りや鬱憤が溜まって爆発させた時に初めて戦うモノだと思いきや、工場でのストライキからのゴタゴタした喧嘩で戦い始めるというしょうもないたがの外れ方で、折角の縛りが全然活きていない。
始めに登場した屋台のおねいさんも中盤に再び出て来るので何か後々活きて来るのかとも思っていたけれど、全く何も無いままで、何の登場か分からないまま。

それに、東洋人の中に東南アジア人の様な顔付きの人がいるし、看板とかにタイ文字が書かれている事に気付き、主要登場人物達が香港人?なのに何故か舞台がタイらしい事をずっと疑問に思っていたのに、その説明は一切無く、場所の設定が終始意味不明。

あと、社長一味の策略が甘いし粗過ぎって笑ってしまう。氷の中に麻薬を入れて運んでいたけれど、工場では氷を切り分けているので絶対何時か気付かれるじゃん。そして、麻薬が見付かるとまずその相手を買収はするけれど、拒否したら殺害。当然仲間は気付くので、また殺害。そんな粗い事していたので直ぐ別人に気付かれてしまうと言う頭の悪さ。

それにジャッキー・チェンリー・リンチェイの映画ではそれ程感じないけれど、ブルース・リーの映画って脇の役者のアクションのしょっぱさを物凄く感じてしまう。動きはぎこちないし、攻撃も受けも下手で所々でぼうっとしての待ちや戸惑っている人もいるし。周りのアクションの下手な感じの中、ブルース・リーだけが張り切ってアクションしているので、逆にブルース・リーが浮いてしまう。
にしても、ブルース・リーは平成ノブシコブシの徳井先生にしか見えなくなってしまった。

この映画、ブルース・リーは出ているけれど彼のアクションは少なくあんまりおもしろくないし、何より話は物凄くこじんまりしていてグダグダとして展開は遅いし、アホとアホが殺し合うだけだし、話も展開もおもしろくない。正直な所、ブルース・リーの魅力だけで持っている。

☆☆★★★

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