ミッション: 8ミニッツ

2015年08月07日 金曜日

ダンカン・ジョーンズ監督、ジェイク・ジレンホール主演の2011年の映画「ミッション: 8ミニッツSource Code)」。

コルター・スティーヴンスが目を覚ますと列車の中だった。目の前に座っている女性に「ショーン」と呼び掛けられるが、自分はアフガニスタンでヘリコプターを操縦するパイロットであり、別人と伝えるが、鏡の中の顔は自分の物ではなく、財布に入っていた運転免許証の写真の人物はショーンであり、鏡に映った顔だった。
戸惑うコルター・スティーヴンスだったが、突如列車が爆発を起こす。しかし、次の瞬間には見慣れない閉鎖されたカプセルの中におり、モニターに映った軍服らしき制服を着た女性に呼びかけれていた。

突然自分であるはずが全くの別人と言われ、突然の列車の爆発。そして、謎の実験の様な施設と、訳の分からぬまま話が一気に始まって次々と謎のまま展開してはいるけれど、「自分は自分だが、何故周りの人間は違うのか?」という謎を解明して行く事や、その後示される「列車の爆破犯人の捜査」や、「主人公が本当に置かれている現状」等、謎解き要素が示され混乱無くこの映画が何のかが分かる様に出来ており、非常に上手い構成になっている。
その前半の構成だけでなく、徐々に明かされる主人公の現状から犯人の捜査への集中へと話が転び、そこから更に自分は何をすべきなのか?したいのか?という自己証明や自己の救済に向かって行く展開も見事。八分しかこの状況におれず、八分過ぎてしまえばまたやり直しという設定も、初めに感じた「このSF短編小説の様な一ネタで一時間半も描けるの?」という疑心暗鬼も主人公の変化を上手く描いて行く事で引っくり返され、もうずっと集中して見てしまった。
推理モノであり、タイムループの様だけれどそうではないという新たなSFだし、そこに恋愛や人生も入れ込んで来て、盛り沢山だし良くまとめ切れたと感心ばかり。

ただ、この話の一番重要な「ソース・コード」が設定を越えて無理をしてしまった為に、見終わると疑問と矛盾ばかり感じてしまい水を差してしまう。
この「ソース・コード」というモノは、この映画内で発明者でもあるラトリッジ博士による説明だと「人間は死んでも脳には死亡するまでの八分間の記憶が残っており、それを集めてプログラム上で再現する事により主人公をその再現内に送り込む事が出来、その中で自由に動く事が出来る」という仕組みらしい。
しかし、話が進んで行く内に大きな矛盾に気付いた。死んだ人の記憶から出来上がっているプログラムなので、その記憶を使われている人達が知らない事や見ていない部分は実際にあった事物なのか、想像なのか分からないはずで、映画内の現実では爆破犯は死亡しておらず、その記憶も使われていないはずなのに何故か仕掛けた爆弾の詳細が出て来たり、生きている爆破犯しか知らない様な事実、例えば駐車場に留めてある白いバンの中に大量の爆弾があるとかがしっかり出て来てしまう。これって、プログラムがアメリカ中のあらゆる場所を細かに監視していても分からない部分もあるし、それを誰がか知っているはずもないのに、話の展開上そこは無視されて進んでしまう。
更に、最後の感動で終わっておけばまだ上記の様な矛盾があってもまだ納得の範囲だったのに、ストップモーション以降の話もしてしまった為に、この「ソース・コード」の設定を越えて勝手に「並行世界生成装置」になってしまい、話がグチャグチャになってしまった。てっきり「ソース・コード」って、映画「マトリックス」の現実世界の繋がれた人々の様に、大勢の遺体、もしくは脳から線を繋いで情報を取って、それをコンピューター上で再構築して主人公の頭に入れているという想像だったのが、主人公の生命維持装置を切っても何故か彼の考えやプログラム上の世界が継続してしまうのは意味不明。主人公の状態は見せたけれど、「ソース・コード」の大元の八分間の情報を集めている遺体なのか脳なのかの映像が一切無いのでプログラムが何なのかさえ分からず、そこを描かない事でやりたい放題してしまっている。並行世界とか出して来ると、もう訳が分からない。
どうやらこの最後の展開は、本来脚本ではストップモーションまでで終わっていたのに、監督がその後を描きたくてこうなってしまったらしい。そんなに無理矢理にハッピーエンドにしなくちゃ駄目だったんだろうか?と思ってしまう。それにハッピーエンドっぽくはあるけれど、じゃあ今まで真面目に生きて来たかもしれない教員のショーンさんは、行き成り意識が無くなり別の男に乗っ取られて彼の人生は?とか、軍人が他人の人生を乗っ取ってそれ以降上手くやって行けたのか?とか、何か嫌な結末に思えるし。

この映画、ストップモーションまでは非常におもしろかったのに、蛇足的な最後の展開によって「ソース・コード」が単なるファンタジーになってしまい、設定も映画のおもしろかった部分も崩壊。見ている途中は「最高!」だったのが、見終わるとそれまでが上手く行っておもしろいモノが出来たと感じたのか、調子に乗っちゃって余計な事したなぁ…という感じばかり。

☆☆☆★★

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