燃えよドラゴン

2014年12月13日 土曜日

ロバート・クローズ監督、ブルース・リー主演の1973年の映画「燃えよドラゴン(Enter the Dragon)」。

少林拳の門弟であるリーは、師匠から少林寺の掟を破ったハンという弟子の存在を知らされる。その後すぐ国際情報局の使者からハンが開催する武術大会にリーも呼ばれている事を知らされる。ハンは麻薬や売春を大きく扱う犯罪組織のボスらしいが手出しが出来ない島に暮らしている為、リーに武術大会に出て調査して欲しいと依頼する。更にリーの妹がハンの部下に殺されてしまった事も知り、リーはハンの武術大会に挑むのだった。

この映画、復讐に燃えるブルース・リー対悪いボスという分かり易い構図なのに、話は意味不明な部分が多いし、展開や脚本が変。
主人公リーは少林寺を背負い、犯罪者の調査、妹の復讐と物凄く色んなモノが背景にあるけれど、他の登場人物に関しては背景がスッカラカンな程何も描かれない。早い段階からリーの仲間っぽくなるジョン・サクソン演じるローパーは何かしらで借金を負い、それが返せないから武術大会に来たらしいけれど、この借金関係の話はその何かしら以上の話は無く、そもそも武術大会に出たら?勝ったら?賞金が出るのかも話には一切出て来ないので、凄いお座なりな設定。ジム・ケリー演じるウィリアムズも、白人警官に「黒人が何処行くんだ?」といちゃもん付けられ、警官をなぎ倒してやって来たという事しか描かれず、何が目的なのかも一切出て来ない。もう一人の招待選手がいるのだけれど、その人の背景は一切描かれず仕舞い。それに何で彼等をハンが目を付け武術大会に招待したかも不明だし、格闘モノで武術大会を開くなら、普通その人物がどんな拳法や流派なのかを少しでも見せないと戦いになっても盛り上がらないし、見ている方は訳の分からないままなのに、ウィリアムズが空手をやっていたらしいというだけでローパーは何の使い手なのかも分からないまま。それにハンは少林拳を学んでいたのに、ハンの島での武術施設で訓練しているのは空手の様だしで意味不明。このハンも「少林寺の面目を失墜させた!」と少林寺の師匠が言っているけれど、実際に何をして少林寺に迷惑をかけたのかは不明だし、武術大会を開いている意味もよく分からない。武術大会とは言っているけれど実際はハンが営む裏稼業に仲間として引き込む目的があるらしいのだけれど、それに誘ったのはローパーだけで、ウィリアムズはハンの島を夜抜け出していたので怪しいという事だけでボッコボコにして殺してしまうし、少林寺から恨まれている事も知っているのにリーを招待する意味も分からない。別に「少林寺の門弟を見せしめに殺してやろう!」という感じも一切無いし。
それに武術大会も意味不明。リーを含めた四人以外にも出場者がいるのだけれど、その人達は外部から来た人なのかハンの配下の人間なのかもよく分からないし、武術大会もどういった組み合わせで戦っているのか?そもそもどうやったら勝ちで、勝ったら何になるのかも訳が分からない。
終盤でも、ハンの用心棒をリーが殺した時は非常に冷静に、紳士的に対応していたのに、ハン配下のマッチョマンを倒すとハンは行き成り激高し、リーとローパーを大勢で殺させようとする、もう意味不明な人物。その乱闘に地下牢に幽閉されていた町の飲んだくれ達が解放され乱入し、何故か町のゴロツキ共がハンの下で修業していた部下達を一掃してしまうという無茶苦茶な展開。その後も、潜入捜査していた女性捜査官はどうなったの…?とか、結局ローパーを出した意味は…?とか、最後の熊の爪が刺さっている場面で終わる意味は…?とか脚本はグッダグダで酷い。

展開も武術大会が開かれると早い段階で言っているのに、武術大会になるのは残り一時間位の遅い開始で、それまでの別にどうでもいい話が長く、結局はブルース・リーを見るだけの映画になっている。
ブルース・リーのギッチギチに鍛えられた体は凄いし、戦いの動きもしなやか。最後の鏡張りの部屋でのハンとの対決なんて映像的に上手い。そして何と言ってもブルース・リーの顔芸大会に爆笑。相手を必至に踏み潰す時の顔なんて、そこまで笑いが無かった分ケッタケタと笑ってしまった。ただ、それ以外の場面だとブルース・リーの表情って物凄く小憎たらしい顔をしている。この演技ってどういう意味なんだろうか?それに序盤で年少の同門生に「怒りは駄目だ!」ときつく言っていて、しっかり振りが入っているのに、後半の妹を殺したハンの部下やハンに対して戦う時は物凄い怒りを表に出し、容赦無く殺してしまっており、これって「なんだかんだ口では言っているけれど、所詮戦う人間はこんな奴…」という皮肉なのかしら?

あと、一番初めにブルース・リーがスパーリングをしているのだけれど、その相手がサモ・ハン・キンポーで「おお!」と思う。…と、サモ・ハン・キンポーに驚く場面だけれど、ガッチガチに鍛えたブルース・リー対太っちょのサモ・ハン・キンポーじゃあ真面なスパーリングにならんだろ…とも思ってしまった。それに、ハンの部下達も誰もがガリガリか小太りな人ばかりで全然強そうに見えないのも何だかな…。

この映画、全てに置いて説明不足なので話はつまらない以前に意味不明。普通にブルース・リーの事だけを描いて作ればまだましになったのに…と思う。ブルース・リーの戦いを見るにしても、武術大会と振っておきながら武術大会と言うよりは原っぱで練習試合している程度のモノしかなくて全然物足りないし、昔この映画見た時は最後の鏡張りの部屋での戦いももっとおもしろかった様に思えたと思っていたけれど、改めて見るとなんか物足りないし。
それにしてもこんな酷過ぎる脚本でも成り立ってしまうのって、1970年代の香港映画だからって事なのかなぁ?

☆★★★★

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