ドライヴ

2014年12月04日 木曜日

ニコラス・ウィンディング・レフン監督、ライアン・ゴズリング主演の2011年の映画「ドライヴDrive)」。
ジェイムズ・サリスの小説「ドライブ」が原作。

昼は自動車の修理工やスタントマンをし、夜は犯罪者の逃亡の運転手をしている男。彼がアパートメントの隣人の女性と知り合い、お互いが惹かれ合うが、彼女には子供がおり、刑務所で服役している夫を待っており、やがてその夫が出所して来た。

主役のライアン・ゴズリングの台詞は極端に少なく、たっぷりと間を持たせる演出ながら、映像も脚本も無駄を削ぎ落とした洗練さで、非常に見入り、息を付かせないまま一気に見せ切る映画で、光る中々素晴らしい映画だった。
何と言っても主人公のライアン・ゴズリングの演技と彼への演出が目を引く。主人公は無口でポツリポツリと喋る位だけれど、時々ニコッと笑ったり、無表情を務めている事での感情の表現等、非常に抑えた演技だけれど顔で語るライアン・ゴズリングの上手さや、読み取れる様な人物と構成にした監督の演出の上手さが際立つ。それ以外の部分でも極力台詞で見せる事をせずに出来事や行動で感情を見せ、気取らないけれど上手さやカッコ良さが出ている演出や編集が心に響いて来る。やたらとスローモーションを多用すると、その場面の鉤括弧の強調し過ぎで段々と飽き飽きして来るのに、この映画でもスローモーションを多用していたにも関わらず、それ程気にもならなかったのは雰囲気や流れと非常に合っていたからか。でも、スローモーションの多用はその場面を強調し過ぎの感は少しある。

展開も、好きになった人に夫がいて、しかも服役中と来ればその後の展開は何となく予想は付くけれど、この設定から結構意外な方へと進み、序盤の微妙な恋物語の柔らかい雰囲気、まったりとした恋愛映画から一転して転げ落ちて行く流れも上手い。これを見せられると、後半の展開を想像するだけに嫌な不安しか出て来ず、実際そうなったら前半の柔らかさが効いて来るモンだから、良く感がえられている。主人公の過去は全く明かされないどころか、彼の名前さえ分からないままなのに(クレジットでも「the driver」)、分からない分普通の男として見させ、それが主人公への共感性を生み出して、後半の彼の狂気的な行動さえ納得して、共感性を持ったまま進めて行けるので、人物設定も上手い。
でも、主人公が刺されてしまう事に関しては、「あれっ?」とつまずいた。それまで相手が行動に出る前に察知し先に行動に出ていた主人公が、もう相手がどう出るかも、自分がどうするかも決めていたはずなのにも関わらず、相手よりも先に行動しなかったから、最後への叙情的な余韻をちょっと狙い過ぎたかな?と思う所ではある。

運転手という設定の部分も、監督のニコラス・ウィンディング・レフンがデンマーク出身だからか、カーチェイスがアメリカ映画的なとにかく突っ走ってバンバン自動車が壊れて行くという様なモノにせず、警察に見つからない様にまぎれて普通に走る、見つかっても慌てずに潜むとか、非常に現実味のある、かつ緊迫感があるモノにしていて、そこでも上手い演出。始まりのカーチェイスなんか抜群に上手い。逃亡劇として非常に緊迫感はあるは、抑え目だけれど派手な走りもあるは、これ程仕事に対して徹底的に厳しい人物が、何で仕事中にそこまでバスケットボールの試合が気になるのか?という事に関しても、実はそれが上手い振りになっていたりする部分もあるし。ただ、この始まりの部分が非常に興奮する分、これ以降のカーチェイスがほとんど無いというのは結構肩透かしだったりもする。「ドライヴ」なんだから、もっと運転で見せる場面があっても良かったのにと、この始まりの一幕を見てしまうとどうしても思ってしまう。

役者陣も濃くて非常に良いし、上手い配役。
ライアン・ゴズリングは語らないけれど、見ていると感情が分かって来るという演技で素晴らしいのだけれど、この人ちょっと顔が長いので、真剣な役よりもコメディ向きの気がして仕方無かった。
相手役のキャリー・マリガンは、この時で26歳だけれどそれ以上に若く見え、置かれた境遇もあって非常に可愛く見え、この幸薄い感じは良い。
その他にもブライアン・クランストンアルバート・ブルックスロン・パールマンといった濃い顔も並んで、この人達の存在感もバンバン前に出て来る。やっぱり、濃いおっさんが脇を固めると締まるよなぁ。

この映画、カンヌ国際映画祭での監督賞を始め、色んな映画祭や賞で受賞やノミネートされるのも頷ける非常に素晴らしい出来。色んなモノを削ぎ落として削ぎ落として乾いた感じに見える中、主人公の感情が煮えたぎったり、台詞以上に語る所が非常上手い見せ方だし、好き。

☆☆☆☆★

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