羊たちの沈黙

2014年02月09日 日曜日

ジョナサン・デミ監督、ジョディ・フォスターアンソニー・ホプキンス共演の1991年の映画「羊たちの沈黙(The Silence of the Lambs)」。原作はトマス・ハリスの「羊たちの沈黙」。

FBI訓練生のクラリス・スターリングは、クロフォード捜査官から精神病院に入院している犯罪者の精神科医ハンニバル・レクターの様子を見て来る様に依頼される。クロフォードは女性の皮膚を剥ぐ連続殺人事件を捜査しており、ハンニバル・レクターからその事件の何かの情報を得られないかと考えていた。ハンニバル・レクターと対面したクラリスだったが、全てを見透かすハンニバルに戸惑いながらも彼の言うヒントを追い始める。

やっぱり、流石におもしろいし、凄い。元の原作がおもしろいからだろうけれど、ジョディ・フォスターといい、何と言ってもアンソニー・ホプキンスの演技は凄いし、じっとりと描く演出も引き込まれるし、アカデミー賞で五部門受賞するのも分かる出来。
やっぱり構成が上手い。主人公が駆け出しの若いやる気が走る新人なので、観客もジョディ・フォスターに移入して初めから事件を追っている気持ちになるし、最早ムービー・モンスターのハンニバル・レクターにもクラリスの様に恐怖を持ちながら興味を持てる様になっている。そして、この映画の本筋はバッファロー・ビルの犯罪捜査なんだけれど、それよりも関連するハンニバル・レクターとクラリスの対決の方が主になる展開は、にんまり。この二人は対面はするけれど、常に透明の壁や檻等の隔てる物があり、近いけれど離れているという精神的な距離感と実際の距離が重なる演出とか上手い。この距離感が、「資料を返す」と言ってハンニバルがクラリスの指に少し触れる一瞬の場面の効果が大きくなるし。それに、やたらと真正面からの顔のアップが多く、これによってお互いが正面向かって話しているという事でもあるし、実は最後のバッファロー・ビルの暗視スコープ目線からの映像も違和感無く入れ込めるという振りでもあるし。一番はアンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターの演技を見せる為の演出なんだろうけれど。
これ以外にも演出は光り、上手いと思ったのは、始まりのジョディ・フォスターがFBIの事務所に呼ばれて行った時、エレベーターに乗ったら周りは全てごつい男性ばかりで、小っちゃいジョディ・フォスターがちょこんといる場面。これだけでクラリスがFBIでどんな立場なのか分かるので、ここですでに掴まれてしまった。
ハンニバル・レクターの大仰な檻はちょっとやり過ぎの感もあるけれど、始めの精神病院と言い、豪華なだだっ広い部屋での檻とか、非常に印象に残る舞台装置。この後の色んな映画やテレビでこの手の亜種が増えたのも分かる。

そして、やっぱり主演の二人。ジョディ・フォスターはこの後のジョディ・フォスターを知っているから若さに注目するけれど、初め出て来た時はおぼこくてあんまり印象的では無かったのに、話が進むにつれ初めの新人感とオドオド感が、何時の間にかしっかりした捜査官に変わって行き、光る様な存在になって行くのが素晴らしい。
アンソニー・ホプキンスと言えば、このハンニバル・レクターと今でも言われる位、この役の演技は素晴らしい。この圧倒的な存在感、顔の恐ろしさは類稀に見る人物になっている。

この映画で、ハンニバル・レクターという映画史に残るモンスターが登場し、これ以降にハンニバル・レクターの亜種やプロファイリングブーム等多方面に渡り影響を与えたのも分かる映画。話もおもしろいけれど、二人の演技や各場面での演出を見ているとニタニタが止まらないという所でもおもしろい映画。映画一本見ても、多くは短編小説を読んだ位の感覚だけれど、この映画は長編小説をじっくりと読んだ様な感覚に久々になる映画でした。

☆☆☆☆☆
 
 
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