ワンス・アポン・ア・タイム

2013年10月02日 水曜日

2011年からABCで始まった連続ドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム(Once Upon a Time)」。日本ではNHK BSプレミアムで放送が始まったので見てみた。

白雪姫が結婚式を開いている所へ継母の魔女が現れ、呪いをかける。やがて白雪姫が妊娠するが、呪いはすぐそこまで迫っていた。そこで産まれたての娘一人を何処かへと送り出す。
現代のアメリカでは保釈金取立人のエマ・スワンの元へ十年前に養子に出した息子と言う少年が現れたので、見知らぬ田舎町へ送り返しに行く。しかし、その子が言うには、その町の人々は自分達の記憶は無いがお伽話の登場人物で、悪い魔女によってその町に閉じ込められており、白雪姫の娘であるエマが彼らを助け出せる存在だと言う。

要は、現代にお伽話の世界の登場人物が存在していたらと言う話。
第一話から、CGバリバリ使い、セットや衣装、小道具まで中世ヨーロッパを基にしたお伽話の世界を作り上げ、一方の現代もちゃんと外で撮影も行い、非常にお金をかけて作っている様子。映画並みの映像にはなっている。
ただ、話が微妙。全てが現代の世界にお伽話の登場人物がいたら…と言う企画だけが先行しているので、何故19世紀以前のヨーロッパのお伽話の人々が21世紀のアメリカのメイン州の小さな町にいるのか?とか、何故1812年に書かれたドイツの民話集であるグリム童話の「白雪姫」と、1883年にイタリアのカルロ・コッローディが書いた児童文学「ピノッキオの冒険」という完全フィクションのピノッキオが同じ世界で存在しているのか?とかは一切無視。一番よく分からないのは、悪い魔女の皆の幸せを憎んでかけた復讐の呪いと言うのが、皆の記憶を消して時間を止めてアメリカの片田舎に普通の生活をさせておきながら閉じ込めておく事で、それが何故復讐なのかが分からない。これって、要は「アメリカの地方の町で暮らしている人々って、都会に出ようとしても出れない、まるで牢獄に閉じ込められて泣く泣く暮らしている惨めな人達みたいだ」と比喩的に言いたいのか?エマも都市部からやって来るし。
お伽話の人々がアメリカのメイン州にいるのって、魔法を作った人がそこの現代人で、お伽話の世界が彼の空想の世界から出来ているという事なのかと思ったけれど、魔法を作ったのがルンペルシュティルツキンと言っているので違うみたいで、結局色んな事に対する理由や説明が「魔法だから…」で済まされるのはキツ過ぎる。何でも「魔法だから…」になると、もう何でもありだし。

それに物語が見え見えなのも、見て行くかどうかがしんどい。初めから「白雪姫」のハッピーエンドから始まり、やたらと魔女に「ハッピーエンド」と言わせるモノだから、このドラマもやがてエマの尽力によって徐々に登場人物達が記憶を取り戻し、エマに協力しながら町長と対立し、最終的には皆が元の世界に戻って幸せに暮らしましたのハッピーエンドでしょ…と思ったら、見て行く気が薄れる。
しかし、アメリカではすでにシーズン3が開始されているので、皆が記憶を取り戻した後の方が長くなっていて、それがどんな展開にしているのか、引き伸ばし感は無いのかが見てみたい気はする。
それに毎回の構成が、製作にエドワード・キッツィスアダム・ホロウィッツという「Lost」の製作者が入っているからか、現代のアメリカでの話とお伽話の世界の話を交互に見せる様な「Lost」的な構成で、「こりゃあ、主題の話が中々進まないぞ…」と思わせてしまうのも痛い所。「Lost」も話が全然進まない割りに島以外の話に時間割くモノだから、一度途中で諦めて見るの止めた位だから、同じ調子だと途中で止めてしまうかも。

主人公エマ・スワンは何処かで見た事あるなぁ…と思ったら、「Dr.HOUSE」のアリソン・キャメロン役を演じていたジェニファー・モリソンだった。吹き替えの声優は違うけれど、このドラマでは正解。このエマ・スワンは結構蓮っ葉で怒りっぽい感じなので、北西純子でいいじゃないかしら。
おもしろいのはこのドラマの主役級の三人、エマ・スワン役のジェニファー・モリソン、町長レジーナ役のラナ・パリラ白雪姫役のジニファー・グッドウィンが皆30代半ば。確かにこの時期が女優として出来上がりつつも伸びて行くのに一番良い時期なんだろうけれど、見事に30代半ばの女優で揃えているのがおもしろい。白雪姫も、その継母も、白雪姫の子供も実は本当は2・3歳しか違わないのはクラクラして来る所。何よりレジーナ役のラナ・パリラが、この時まだ34歳なのは驚いた。40過ぎかと思っていた。見事なおばさん感。

それに何故か、アメリカではこのドラマが始まった2011年の10月末から、このドラマと同じように童話の登場人物が実在するという連続ドラマ「GRIMM/グリム」がNBC系で始まっていて、何で似た様な企画が通ったのか不思議。映画「トワイライト」シリーズが当たり、その後テレビでも吸血鬼やら狼男やらのドラマが出来始めての、こんな童話への流れなんだろうか?
それにアメリカでも言われていたらしいけれど、DCコミックスのヴァーティゴ(Vertigo)から出ている「Fables」という2002年からのコミックスのシリーズが、童話の世界を追い出された空想の登場人物達がニューヨークで暮らすという話で、このドラマがそっくりと指摘されていたよう。で、この「Fables」、コミックスだとそれ程でもないみたいだけれど、TPBの方では毎年年間の上位に入って来ている人気作で、最近のドラマ「ウォーキング・デッド」のヒットもあるので、所謂グラフィック・ノベル関連としてテレビドラマ業界の人に注目されて、根本の要素だけ頂いてのこの「ワンス・アポン・ア・タイム」なのではなかろうかとも思うけれど、どうんなんだろう?

で、一方の日本のNHKの作りはと言うと、やっぱりクソ。ドラマ本編前後に謎の、真っ黒オリーブオイルこと速水もこみちによる独り語りが入り、何か関係あるのか中川翔子の歌が最後に流れる。この構成全く意味不明。速水もこみち部分は早送りかスキップしてしまうので詳しく見ていないけれど、何故速水もこみちが語らなくてはいけないのか?こんなの入れるんだったら、ドラマに出て来る童話や民話の本来の話や登場人物に関する解説を入れた方がどれだけ良いか。重要人物であるルンペルシュティルツキンなんて、元はどんな話のどんな人物なのかも良く知らないし。
録画して見ているから早送りやスキップ出来て良いけれど、時間通りに見ていたら確実に見なくなる。こんな構成が視聴者にとって良いと思っているのが意味不明。

このドラマ、まだ二話しか見ていないけれど、二話目にして「Lost」並みに話が進まなくなって結構不安。あと何話か見るけれど、乗って行けない気がする。
 
 
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