X-ファイル 2016

2017年07月30日 日曜日

アメリカでは2001~2002年に放送されたシーズン9で終了したはずだったのが、約14年を経た2016年にシーズン10として再開され、日本では「X-ファイル 2016」とされた新シーズン。

Dlifeでこれまで「X-ファイル」のシーズン1からシーズン9まで放送していて、わたしは以前地上波で風間杜夫と戸田恵子の吹き替え版、B’zの「LOVE PHANTOM」が主題歌だった時に見ていたけれど、さっぱり内容忘れていたのでDlifeでの放送をシーズン9までほぼ全て見て、そのDlifeがシーズン9に続けて「X-ファイル 2016」を開始したので見てみた。
なので、本来なら十数年ぶりの「X-ファイル」復活で感慨深いモノがあるはずなんだろうけれど、Dlifeで見ていると直ぐに続けてのシーズン10なので特に感慨も無いし、行き成りモルダースカリーが老けているという違和感しかないという事になってしまっていた。

で、肝心の内容なんだけれど、これが十数年ぶりの続編的シーズン10としては最悪最低だし、見たい「X-ファイル」ではない方向に行ってしまい、まあつまらなかった。

復活の大事な1話目の「闘争 Part.1」 で、これまでの「X-ファイル」で9シーズンも使って、あれだけモルダーとスカリーの微妙な関係を描き、最終的には互いに理解し合い何とか引っ付いたのに、いとも簡単に「結局駄目でした」だけで元のビリーバーのモルダーと懐疑的なスカリーが恋人同士でもない相棒で捜査するという元通りになってしまっている。
二人の関係性だけではなく、「X-ファイル」の主題でもあり、散々描いて来た「異星人による入植とそれを阻止しようとしていた地球人の陰謀」は、「実はそんなものは無く、全ては世界を支配しようとしていた一部の人間による陰謀だった!」とちゃぶ台をひっくり返してしまう始末。見ていて、ポカ~ン…。
また酷いのが、今までの様に二人の調査によって引っ張るだけ引っ張って徐々に秘密を見せて行くというやり方ではなく、全て何処に証拠があるのか分からないまま台詞で全部喋って、登場人物達が勝手に納得するだけというやり方も。

この一話で旧シリーズを否定しまくる、そもそもシーズン9までが必要無いという話には愕然とした。
モルダーとスカリーの関係が結実した後を更にどう発展させるかを放り出して旧シリーズの中盤辺りの関係性に逆戻りとか、何より今までの「X-ファイル」を全否定とか、何でこんな事してんの?こんな事するなら続編作る意味無いじゃん。

これらは一旦終わったドラマの続編の内容としては出来が悪過ぎる余りに酷いモノなんだけれど、14年後の続編としての設定としてはちょっと理解も出来る。
そもそも「X-ファイル」はウォルター・スキナーFBI副長官の様なレギュラーもいたけれど基本的にはモルダーとスカリーの二人だけの主人公で、何でも信じてしまい常に独走で突っ走ってしまいがちなモルダーと、常に超常現象に懐疑的で慎重なスカリーがぶつかりながらも事件を解決して行くというこの二人の関係性がおもしろく、旧シリーズでは最終的にビリーバー状態のスカリーと懐疑的になったけれどやっぱり自分が正しかったと分かるモルダーのどちらも信じてしまった状態になったので、その状態では「X-ファイル」の一番見せ所の二人の関係性が成り立たないので元に戻してしまっただけだとも言える。
それに異星人の入植話の全否定も、もう止める事も出来なくなった異星人による入植なので、そのまま異星人が入植していれば異星人による支配から地球を解放する為に戦うという話になってしまい、まるで「フォーリング スカイズ」みたいなドラマになってしまうし、あれから14年も経っているのに未だに全然入植する素振りも見せずそのままの世界が続いているという言い訳の為に一番簡単だったのが嘘だったという事にするというやり方なんだろうと思う。

加えて14年が経つと現実の世界との対応も出て来て、「X-ファイル」が始まった頃の1993年って、宇宙船だと思われるUFOの動画や、異星人の地球侵略話や、政府と異星人の密約の陰謀論がまだ信ぴょう性を感じてしまう様な時代ではあったと思うけれど、今現在、コンピューターとCG技術の発展で個人でも現実味のあるUFO動画を簡単に作れてしまう時代になり、「X-ファイル 2016」でもバンバンそのCG合成UFO動画見せて、まあUFO動画の安っぽさと信用の無さったらなくなったし、現実では宇宙の様々な惑星や衛星や小惑星に大量の資源や水まである事が分かり、現実の科学技術の発展で労働力なら十分機械で事足りる事が分かり、異星人が資源や労働力の為に遥か遠い地球まで来る理由が無い事が分かってしまったし、そもそも異星人が侵略すれば相当な抵抗がある事が簡単に分かる知的生命体が大勢いる遥か遠くの地球までやって来る必要性が無いし、現実の遺伝子工学の発展で「X-ファイル」の異星人は恒星間航行も出来る程の科学技術を持っているのに何十年かけても入植出来ない程生物学や遺伝子研究が稚拙で、異星人が実は馬鹿だと言う事になってしまうので、「異星人は地球人と同じで好奇心や親切心で他の知的生命体を探していた」「異星人の入植は全部陰謀」にした方が手軽に問題解決出来るしなぁ。

ただ、こんなちゃぶ台返しをしたけれど、じゃあ今までのシリーズで見せて来たブラックオイルは何だったの?だし、バウンティハンターや反乱軍の様な反入植側で人間とも対立していた勢力は何だったの?だけれど、それらに関するモルダーやスカリーからの説明は無く、人間の陰謀論で片付けるには説得力が無くて、後先考えずにぶち上げてどんでん返しという派手さだけを取った風にしか思えなかった。

あと、一話目見ても結局何でFBIがX-ファイル課を再開させたのかがいまいち分からなかった。
モルダーがやる気出したら再開って、都合良過ぎ。政府の陰謀ならX-ファイル課を再開させないでしょ。
もしかしたらスキナーが十四年でFBIだけでなく、政府のあらゆる機関や関係者と繋がってトンデモない権力を持っていたので簡単に再開できたのでは?と思ったりもしたけれど、スキナーは未だに中間管理職の小役人から変わった様子も無いし…。
あの部屋を十四年もそのままで残しているFBIも何しているのか分からないし、ここら辺は十年以上経っているのにたった一話でお手軽にかつてに戻しただけの都合良さしかなかった。
 
 
2話目「変異」も政府が関与しているらしい妊婦を使った人体実験の話で、2話目から既にこれじゃない感一杯。
謎で引っ張るも超能力者の脱走劇で終わってしまい、これがこのシーズンの他の話に繋がるなら意味もあるけれど、これはこれで終わってしまい「だから何?」だし。
手のひらのダイイング・メッセージとか、検死で分かった死体の謎とかもほったらかしで終わるという酷い投げっ放し回だったし。
 
 
3話「トカゲ男の憂鬱」はUMAの話で、やっと「X-ファイル」的な話になったかと思いきや、この回は終始コメディでお茶を濁したままで、もう真面に正面からUMAを扱えない時代になってしまったという感じしかしなかったし。
 
 
4話「バンドエイド・ノーズ・マン」は以前の「X-ファイル」らしい都市伝説の怪物を追う話で、やっと「これこれ」感があったのだけれど、作者が想いを込めて画を描けば人殺しをする怪物が誕生する…って大分ファンタジー。
しかも、モルダーとスカリーは別に犯罪捜査でバンドエイド・ノーズ・マンの正体を追い詰めて行く訳でもなくただ振り回されるだけだし、二人の捜査物としてはつまんない。
それに「X-ファイル」的犯罪捜査を軸にしているのに、何故かここでスカリーの母親の話を大きく取り上げてもいるけれど、これってたった6話しかない、新シーズンの一話でやる話か?と思ってしまった。
 
 
5話「バビロン」は内容で言えば本当に酷い。
ほぼ脳死状態のテロリストから次の標的を聞き出す為にモルダーが何時もの胡散臭い超常的方法を試すのだけれど、それが「マジック・マッシュルームでハイになれば、死にも生きもしていないテロリストの精神と会話出来る」らしい。
この時点でモルダーが既に何かやっているとしか思えないぶっ飛んだ話。
しかも、モルダーがマジック・マッシュルームでハイになったと思ったら実はそれはただのビタミン剤で、暗示で勝手にハイになってしまったのに何故かテロリストからの言葉を聞き出しているという、もう意味不明な展開。
これってモルダーの説が正しいのではなく、モルダーは自己暗示で自由にハイになる事が出来、そのトリップ中に他人の精神と繋がる事が出来る、モルダーは実は特殊能力を持った超能力者だという事じゃん。
また、このモルダーのトリップ中の映像が終始デイヴィッド・ドゥカヴニーのおふざけを延々と見せられるだけの酷いモノで、余りに長くてつまらないので早送りしていたら、その後のモルダーの台詞で「ローン・ガンメンと会った」と言う会話が出て来たので、見直したら出てはいたけれどローン・ガンメンの三人共いたのかよく分からない程の一瞬だけの登場で、かつてのシリーズからのお遊びとは言え、やる意味あったの?
それにこの回ではイスラム教徒や移民者のアメリカでの捉われ方を描いているのだけれど、何でここで急に社会批判を出して来たのかも分からないし、この題材が最後の説教臭い二人の納得を見せたい為のモノだと思うと物凄い微妙。

あと、この回では若い二人の男女のFBI捜査官がモルダーとスカリーに協力するのだけれど、「X-ファイル」で見たいのはモルダーとスカリーの話であって、モルダーとスカリーと似た様な次世代の主人公っぽい二人組じゃあない。
特に以前の「X-ファイル」の終盤では、デイヴィッド・ドゥカヴニーが降板し、ジリアン・アンダーソンもあんまり出演しなくなってしまい、ジョン・ドゲットモニカ・レイエスの二人が主人公となって最早何を描く為の「X-ファイル」か分からなくなってしまったシーズン9の「X-ファイル」を思い出してしまい、また新たなモルダーとスカリーを作り出そうとしている感じに物凄く拒絶反応を出してしまった。
 
 
6話「闘争 Part 2」は1話目の続編となる話なんだけれど、これも1話と同様、何かよく分からない話を登場人物達が説明して勝手に納得して行くという展開で、まあつまらない。
「X-ファイル」って、噂や怪しい話をモルダーとスカリーが捜査して様々な証拠を見付けて真実をつかみかけようとすると何か邪魔が入るという、題材自体はトンデモだけれど、ちゃんと視聴者に見せる捜査モノだったはずなのに、この回だけでなく、このシーズン全体が脚本先行で登場人物達が勝手に納得して見ている方は置いてけ堀で、捜査モノとして視聴者ちゃんと見せて行く気があるのかさっぱり分からない。悪い意味で製作側が好き勝手にやっているだけ。
しかも、この回では大規模な陰謀論が実際に始まるのだけれど、スカリーと若い女性捜査官だけで勝手に話が進み、巨大な陰謀で世界が終りかけているのに誰もモルダーやスカリーを邪魔する事もなく、敵はシガレット・スモーキング・マンが椅子に座って喋るだけで、まるで居間で身内同士が言い合いの喧嘩をしている位のこじんまりとした話。まあ、小さく世界の終りの始まりやった事。
この6話は結局様々な方向にネタを振るだけ振って何も解決しないままでクリフハンガーで終わってしまうのだけれど、これだけつまらないのに続き見ようと思うかね?
あと、この回にはモニカ・レイエスが登場するのだけれどジョン・ドゲットは全く登場せず、話にも上らずで、モニカ・レイエスが出て来たのにジョン・ドゲットは無視状態って白ける事。
 
 
役者も14年経てば、そりゃあ歳も取るけれど、以前を見ていると違和感はそりゃあある。
フォックス・モルダー役のデイヴィッド・ドゥカヴニーは1話目は髭を生やしていた事もあって「歳取ったなぁ…」と思ったけれど、2話目以降は髭を剃ったので意外と以前と変わらない。
ただ、顔の弛みは隠せず、かつての男前感は失せてしまっていたのでもう少し痩せたら良いのにと思った。

変わり過ぎなのはダナ・スカリー役のジリアン・アンダーソン
スカリーって、以前はちょっとポチャッとした感じで優しい雰囲気だったのに、ジリアン・アンダーソンが痩せ、ギスギスした感じが凄く、歳を取った女優が色々頑張って若さを保っている様な厳しさが全面に出てしまっていて、スカリーが描かれていない十数年の期間に相当苦労した様な雰囲気になってしまっている。
それに今回のジリアン・アンダーソンが全然感情を出さない様な演技をしていて、スカリーってこんなに冷たい感じだったっけ?と思ってしまったし。
あと、スカリーの髪の毛の色って、確か赤毛に近いはずだったのが今回は金髪になっていたけれど、それに関してドラマ内では一切触れられず仕舞いだったけれど、これって単にお洒落で金髪にしていたんだから触れる必要も無いという事なの?

一番変わらないのはウォルター・スキナー役のミッチ・ピレッジ
ミッチ・ピレッジって、元々剥げていたので若いのか歳取っているのか分からなかったけれど、歳を取っても老けたのか分かり難いので、歳を取った感じがしない。
ただ、スキナーってレギュラーなはずなのに、3・4話には登場していないし、6話もこれまでの回想にしか登場してなかった様な気がする位出番が少なく、以前の様に大して重要な役でもなかった。

そう言えば、日本語吹き替え版で見たのだけれど、もう風間杜夫と戸田恵子版よりも小杉十郎太と相沢恵子版の方が慣れてしまったのでDlifeでの放送も違和感は無かったけれど、気になったのは小杉十郎太の声と言うか喋り方。
相沢恵子は以前のスカリーと変わらずだったのに、小杉十郎太の声は物凄く籠った声で物凄くモゴモゴ言っていた。
これって、デイヴィッド・ドゥカヴニーが太っていたので、それを表した演技なのだろうか?
最近の小杉十郎太の吹き替えのドラマを見ていないので、元々こういう声になったのか演技なのか区別がつかない。
 
 
こんなシーズン10だったのでアメリカの視聴者数はどんなもんだと調べてみたら、1話目は録画視聴者数も合わせて2147万人と相当好調だったのに、2話目にして1438万人と行き成り1/3減少。その後も下げて、1090万~1293万と半分以下になったりもしている。

更にアメリカでの評判はどんなものだと Rotten Tomatoesを見てみたら思ったよりも高く、

1話 59%
2話 86%
3話 100%
4話 85%
5話 69%
6話 32%

と100%まであるけれど、流石に32%って低過ぎ。
1話の期待外れ感と6話の何じゃこりゃ?なクリフハンガーでの評価か。
 
 
「X-ファイル」のおもしろかった所は、モルダーとスカリーが様々な事実や嘘か真か分からない出来事にぶつかりながら全容が見えない大きな陰謀を少しずつ解明して行く所だったはずなのに、この「X-ファイル 2016」ではそれがほぼ無い。
宇宙人話は1話目で捜査から分かった事実も証拠も無く、ただのモルダーの納得と説明だけで全てをひっくり返してしまい、その後はどうでもいい話の連続で、最後の6話も一部の人間の陰謀…と言ってもシガレット・スモーキング・マン以外出て来ないので、シガレット・スモーキング・マンだけの陰謀にしか見えない話で、宇宙人が直接絡んで来る話でも無く、ずっと「何を見ているんだろ?」状態。
はっきり言って「X-ファイル」以降パッとしないクリス・カーターが「かつての栄光をもう一度!」で皆を集めて小手先で作った感しかしなかった。
この続編となるシーズン11は既に製作が決定しているらしいけれど、また同じ様にミニシリーズで、説明台詞と登場人物の納得で物語が進み、底の見えない巨大な陰謀ではなく、シガレット・スモーキング・マンがゴニョゴニョしたら世界が危機になる様な小さい陰謀話で、もう宇宙人話もどっかに行って一部の権力者が悪!みたいな展開で行くなら見る必要も無いか…。
と、言うか、このシーズン10自体、作る必要あったか?と思ってしまったのだけれど…。
 
 
関連:前期見たドラマはCSI 8とCSI:NY 4

« | »

Trackback URL

Leave a Reply