ナショナル・トレジャー
2015年08月04日 火曜日ジョン・タートルトーブ製作・監督、ニコラス・ケイジ主演の2004年の映画「ナショナル・トレジャー(National Treasure)」。
ベン・ゲイツは一族に伝わるテンプル騎士団の財宝を子供の時から探していた。ベン・ゲイツはイアン・ハウの支援を受け、財宝の手掛かりとなるパイプを見付け、更に手掛かりがアメリカ独立宣言書に残されていると断定。イアン・ハウはアメリカ独立宣言書を盗む出そうと言い出すがベン・ゲイツは反対し、イアン・ハウに殺されそうになる。イアン・ハウの略奪計画を止め様と様々な機関に警告をするが取り合ってもらえず、仕方なく自分でアメリカ独立宣言書を盗み出そうとする。
現代版の「インディ・ジョーンズ」を狙っているのは分かるけれど、それには全然及ばない出来。
流れとしては、「何かの骨董品を見つける → それに謎の文章があり、それを辿ると別の場所の骨董品を発見する」の繰り返し。これが何度も何度も同じ事の繰り返しの上、その謎の文章を主人公が一人で読み解き、主人公の持っている知識だけで確たる客観的な証拠も見せないまま速攻結論に到達するので、見ている方は訳の分からないまま話がさっさと進んでしまい、謎解きの爽快感が全然無い。何度も何度も手掛かりばかりに到達する展開だと、昔の人達の用心さよりもお宝を見つける遊びの為にわざと面倒臭くしている様にしか思えて来なくなり、繰り返せば繰り返す程、コメディ染みて来る。
謎の答えとなるのは独立戦争前後の人物や物や建物が関係する場所なので、もう独立戦争関係の名所観光映画。わたしはそこら辺の歴史はよく知らないし、興味が無いのでおもしろくないのかもしれないけれど、アメリカ人が見たらおもしろいモノなんだろうか?例えば、糸井重里ではないけれど、徳川埋蔵金を探して東京や群馬の赤城山を駆け回り、幕末の人物達が関与していた…みたいな、そこら辺の時代の場所や人をとにかく突っ込んでごった煮にした映画を日本でしても、やっぱりコメディ染みたモノにしかならないと思うけれど。
その謎解きばかりだけだと展開の減り張りが無いと思ったのか、支援者だったショーン・ビーン演じるイアン・ハウが敵対者として襲って来てのアクションもあるけれど、地味でアクション映画としても全然おもしろくない。
それに微妙なのは各登場人物の背景がほとんど描かれず、誰も彼もペラペラな薄い感じしかしない事。主人公のベン・ゲイツが歴史や古い物や建物に詳しいのは長年財宝を探しているので分かるけれど、独立宣言書を盗み出す時の完璧な計画と言い、恐るべき手際の良さと言い、最早CIAのスパイか工作員かと思える程なのにその技術は何処から得たのかも描かれないので謎の人物でしかなく、どれだけ独立宣言書の盗難で見せようとしても白けてしまうだけ。ただ、話にはベン・ゲイツは歴史を専攻していたのにマサチューセッツ工科大学の機械工学の学位を取って海軍の訓練部隊にもいたとか言う経歴が出て来るけれど、出来過ぎ。頭の悪い中学生が考えたみたいな安っぽい人物設定で、これまた白けてしまう。
ダイアン・クルーガー演じるアビゲイル・チェイスも歴史に興味あるという事以外は人物描写がほとんど無く、その歴史の知識も先にベン・ゲイツが解説してしまうので展開上全然必要も無く、単に主人公に当てるヒロインという立ち位置以外ない。
ジャスティン・バーサ演じるライリー・プールはそもそも何でベン・ゲイツと組んでいるのか?と言う疑問以外にも、コンピューターに詳しいという設定も序盤だけで中盤以降はコンピューター使う場面がほとんどなくてその設定も活かせてないし。
イアン・ハウは宝が欲しいだけで支援していた以外は何にもないし、イアン・ハウ自体が結構賢く謎にも速く気付くので、そもそもベン・ゲイツいらんのじゃないの?と思ってしまうし、FBI捜査官が多く出て来て目立ちそうな雰囲気がある割りに活躍しないとか、どの人物も全然立たないまま話だけが展開してしまう。話にも引き込まれないわ、人物にも魅力が無いわで脚本がつまらないし、不味い出来。
あと、そもそも何で第一次十字軍後のテンプル騎士団が見付けた大量の財宝がアメリカにあるのかさえ理由が不明。フリーメイン達がアメリカに財宝を持って来たらしく、独立戦争位の時期にはイングランドに財宝を取られない様にしていたらしいので、フリーメインの内部分裂で大量の財宝をアメリカに持って来たという事なんだろうか?
ここら辺は単にアメリカでお宝冒険映画を作ったという理由をちゃんと説明出来ない拙さがあるし、結局見付けた財宝はヨーロッパで集められたお宝ばかりで、本来アメリカにとって重要なお宝であるはずの独立宣言書が初めは手袋して丁寧に扱っていたのが、後半になると素手でサッと拡げたり、自動車に轢かれたりと扱われ方がドンドン雑になってしまうという、「ヨーロッパから持って来られたお宝の様に、アメリカという国自体侵略によって出来ており、独立宣言書の扱われ方の様にアメリカは一部の人間の利害によって雑に好き放題されている」という自虐的な皮肉かと変に勘ぐってしまうお宝の扱いの拙さもある。
役者は何故かジョン・ヴォイト、ハーヴェイ・カイテル、クリストファー・プラマーといったベテラン俳優が登場しているのだけれど、唯一ジョン・ヴォイトが張り切っている位で後はそんなに目立たず。ジョン・ヴォイトはこの映画と同じ様にお宝探しで遺跡を破壊するだけの映画「トゥームレイダー」の主人公ララ・クロフトの父親役で出ていたのに、何でまた似た様な役で出たんだろうか?
この映画、冒険映画やお宝探し映画としても謎解きが主人公の独り善がりで見ている方は置いてけ堀で謎を解く姿を見せる楽しさが全然無いし、アクションも中途半端、主人公のスーパーマン振りだけで見せて、どの人物も設定を活かさずただいるだけになってしまうし、話を展開させるだけの都合の良いつまらない脚本で終始煙に巻いた感じばかりだった。
☆☆★★★