ロング・キス・グッドナイト

2015年08月05日 水曜日

レニー・ハーリン製作・監督、ジーナ・デイヴィス主演の1996年の映画「ロング・キス・グッドナイト(The Long Kiss Goodnight)」。

サマンサ・ケインは教師をし、夫と娘と幸せに暮らしていた。しかし、サマンサ・ケインは八年前に記憶を失くした状態で発見され、八年前は自分が何者だったのかも思い出せず、私立探偵に自分の身元捜査を依頼していた。
クリスマス近くの日、サマンサ・ケインは交通事故に逢い少し記憶を思い出し始め、自然に体が機敏に反応していた。そして、彼女の存在を知った何者かが命を狙って家まで襲って来るが、撃退。自分の正体を知る人物の手掛かりを元に私立探偵と共に出掛けるが、謎の男達に襲撃を受けてしまう。

レニー・ハーリンが「ダイ・ハード2」や「クリフハンガー」のヒットを受けて、製作等一億ドル以上をかけて作られた超大作「カットスロート・アイランド」が「最も興行赤字が大きい映画」とギネスに認定された位コケにコケてしまった次作がこの映画。
汚名返上作として力が入っているはずなのに飛び抜ける所も無く、1990年代によくあった平均点を越えないアクション映画にしかなっていない。

記憶を失くした主婦が実は政府の殺し屋だった…という、まあ有りがちではあるけれど、回し方によっては幾らでもおもしろくなるだろう設定があんまり活きてはおらず、最終的にはバンバン撃ち合って、敵はあっさり次々と死ぬけれど味方はどれだけやられても全然死なないという在り来たりなアクション映画に落ち着いてしまう。
序盤は、突如記憶が戻り始めて超人的な動きをし始め、徐々に自分が何か怪しい事に関わっていた事を知って行くというサスペンスはおもしろいのに、序盤であっさりとその謎が一人の人物との会話で説明されてしまい、その呆気無さで肩透かしを食らった。「そこで引っ張るんじゃないんだ…」と行き成り残念な展開。
その謎明かしも次から次と敵が襲って来て、何とか自分の記憶を辿って解決し切り抜けて行くのだったらおもしろくなるのに、特に次々とアクション場面も無く、記憶を思い出しての話も無く結構まったり話が続いてしまう。主人公の記憶が戻っての今までの生活とかつての自分の差を悩んだり、これからどうすべきか?等を考えるかと言うとそうでもなく、髪切って、濃い化粧をしたのでもう以前の暗殺者になりました…と物凄くあっさり変身してしまう。あれだけ娘や夫を信じて愛していたのに、記憶が戻ったと言うだけで一切忘れてしまいました…なんて、手抜きが酷くないか?この映画では終始、何で主人公が娘を気にしなかったのか?や、逆に何で急に娘を守ろうとしたのか?が全然描かれないので行動原理が伝わらず、「脚本の展開上そうだから…」としか見えなかった。
サミュエル・L・ジャクソンもそうで、「今まで正しい事をして来なかった…」と序盤で言っているモノの、そこまで主人公に付いて行くのも理由が弱いし、彼の言葉で主人公が今までの自分を取り戻す為のサミュエル・L・ジャクソンかと思ったらそうでもないし、単に暗殺者の女性と元警官のコメディリリーフのバディモノという典型的な所に落とし込みたかっただけなんじゃなかろうかしからん?

終盤に行くと、かつてCIAの敵だった相手とCIAの局長の陰謀の為に何故か手を組んでいたり、最後に娘とのお涙頂戴場面を設ける為に逃げて行った娘が木の後ろや物陰ではなく、わざわざ爆発するタンクローリー車の脇に付いている籠の中に隠れたり、敵はあっさり一発の銃弾で死ぬのに何発か撃たれたサミュエル・L・ジャクソンが全然死なないし、死んだと思われた主人公が娘の言葉で息を吹き返したりと、ドンドンと脚本が荒くなって行く。
この映画の脚本家シェーン・ブラックのこの脚本に当時では最高額の400万ドルも出されたというのだから、節穴過ぎるだろう。
ちなみにこのシェーン・ブラックは「ラスト・アクション・ヒーロー」の脚本でゴールデンラズベリー賞の最低脚本賞をもらっているし、マンダリンの扱いの酷さで批判がある「アイアンマン3」の監督と脚本も担当している。よくマーベルはシェーン・ブラックを抜擢したな。

この映画で気になる所と言えば、そりゃあ悪い部分では沢山あるけれど、一番おもしろかったのは、序盤のサミュエル・L・ジャクソンの登場場面。サミュエル・L・ジャクソンの助手に美人局させて金を巻き上げる場面なんだけれど、その美人局の相手は「CSI:マイアミ」のフランク・トリップ役でお馴染みレックス・リンで、助手の方は「CSI:ニューヨーク」のステラ・ボナセーラ役でお馴染みメリーナ・カナカレデス。意外な所で「CSI:マイアミ-NY合同捜査」になっていて笑ってしまった。

この映画、おもしろくなる設定なのにそれが一向に活かし切れておらず、綺麗に平均点を下回る出来の1990年代に量産されたアクション映画の典型の様な映画。
レニー・ハーリンって1990年代前半は大物でハリウッドを背負う感じもあったのに、「カットスロート・アイランド」と続くこの映画でほんとこけてしまった…。この映画の次作「ディープ・ブルー」は、お約束を結構外して来る映画でおもしろかったから、結局は脚本次第なのか…?と思っていたら、この映画は「後半はレニー・ハーリンが脚本とは関係無く好き勝手やった」らしいという情報も見かけたので、どうなんだろう?

☆☆★★★

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