サブウェイ・パニック

2014年08月06日 水曜日

ジョセフ・サージェント監督、ウォルター・マッソーロバート・ショウ共演の1974年の映画「サブウェイ・パニック(The Taking of Pelham One Two Three)」。
ジョン・ゴーディの小説「サブウェイ・パニック」が原作。

ニューヨークの地下鉄で四人組の男達によるハイジャックが起こり、人質の解放の条件として100万ドルを要求して来た。地下鉄公安局のザカリー・ガーバー警部補が犯人との交渉にあたり、何とか犯人達を捕まえようとする。

話としては地下鉄ハイジャックの一本立てで始めから最後まで行き、地味。地味なんだけれど、これが非常におもしろいし、良く出来ている。
犯人達がバラバラに地下鉄に乗り、集まり始める行動から始まり、何が起こるのか?のワクワク感を引き立てつつつも、地下鉄管制側の混乱と翻弄される当局側をじっくりと描き見応えはタップリ。何より登場人物達の描写や引き立て方が上手い。犯人側は各人が背景に何かしらあって犯罪に手を染めた様な雰囲気を、台詞ではなく演技で見せる。皆落ち着いているのに一人だけおどおどとした犯人がいたり、主犯のロバート・ショウはハイジャックの待ち時間をクロスワード・パズルで時間を潰している様な人物だったりと、喋らずもどんな人物かを思わせる演出が上手い。
一方の地下鉄管制側の人々も、皆おっさん、おじいさんばかりのベテラン揃いで、普通に下品な言葉や差別的な文句を言いながらもなんとか自分の仕事を遂行しようとしている。これがコメディ的で笑えるし、現実味のある人々になっている。特に管制室では、周囲の人々が自分の仕事をしながらも気になるのでウォルター・マッソーの方をチラ見している感じなんて非常に自然っぽい。
人質の人々も反応が至って自然で、近年のパニック映画だと、危機に瀕しているという事をやたらとギャーギャー騒いで表そうとして見てられないけれど、この人質達はハイジャックされても「え?あの人達何してるの?」位の反応。その後も文句を言うけれど、「黙れ!」と犯人が言うと黙るし、大声で叫んでパニックになるのは電車が暴走し始めてから。ニューヨークの市長の登場は少しだけなんだけれど、奥さんの尻にひかれ、部下からは強烈に突き上げられながら判断を迫られる駄目駄目な人な上、こんな時に風邪をひいているというどうしようもなさ。しかも、人前に出て行ったらブーイングされるから嫌だ…と言っていて、人前に出て行くと本当にブーイングされるというコメディ要因でもあって、この市長がおもしろい。主役級の人々もそうだけれど、周囲の人々の反応まで自然な感じで、かつ人物が立っているのが物凄く良い。
話もじっくりと交渉を描き、ハイジャックが終わってからの捜査もちゃんと描き、一人一人調べて行く現実感のある細かさなのも良い。ただ、終盤の行き成りのロバート・ショウの幕切れはどうなんだ?特に振りも無い終わり方だし。その分、衝撃的ではあるけれど。それに、犯人側が殺人を犯すのは別にいらなかなった様な気がする。展開的にどうしても殺さなければならない訳でも無いし、紳士的なままで終わっても全然良いと思うのだけれど。
それにウォルター・マッソーは終始相手の要求を受け入れて、反撃に出るのは終盤から。これは下手にヒーローモノ、アクションモノにしない自然な公務員を描いていて、これはこれで好き。ウォルター・マッソーにしてもロバート・ショウにしても、彼らの存在感や演技力は流石に良い。最終的にウォルター・マッソーの顔芸オチでニンマリしてしまうし、物凄く良い役だし、扱いも。

あとおもしろかったのは、序盤に登場した日本人の視察隊。これはニューヨーク地下鉄がどういったモノで、どうやって運行されているのかの説明をする為に登場させているのだけれど、英語が通じないと思って彼らに冗談交じりで話していたウォルター・マッソーが実は視察隊全員が英語を分かっていて驚くという笑いの要素にもなっていて、しかし実はこの当時徐々に上がって来ていた日本に対するアメリカから見た強かさや不気味さを表している、出ているのも時代見て取れる所でおもしろい所。

この映画、ハイジャックのサスペンスモノとして見ると物足りないかもしれないけれど、コメディ的要素を含んだ群像劇として見ると非常におもしろい。文句言いつつもの会話劇だったり、ちょっとした演出だったり、人々の反応だったり、下手に劇的な見せ場を狙い過ぎて嘘くさくなってしまっている最近のサスペンスと比べると自然だし、上手いし、楽しさがあるし。ニコニコしながら「どうなるの?」という映画は久しぶり。

☆☆☆☆★

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