バンク・ジョブ

2014年07月31日 木曜日

ロジャー・ドナルドソン監督、ジェイソン・ステイサム主演の2008年のイギリス映画「バンク・ジョブ(The Bank Job)」。
1971年に実際に起きた「Baker Street robbery」事件を基に脚色されている。

1971年のイギリス。表向きは黒人の貧困者の救済をしているマイケルXという男は裏では麻薬の売人で、揺すりや脅しを繰り返し裁判にもなっていたが、王室の醜聞の写真を持っているという事で逃れていた。その写真の隠し場所である銀行を見つけた政府は、秘密裏に写真を奪うように一人の男に命令する。彼は策略を巡らし、借金を抱えた町の自動車販売人に銀行強盗を実行させようとする。その男は仲間を集め、裏に何があるか知らないまま、金の為に銀行強盗を計画するのだった。

別の目的が隠された銀行強盗。話を持って来た女性を怪しむジェイソン・ステイサム。娼館を経営していて、マイケルXとも関わり合いがあり、話の何に絡んで来るか分からないデヴィッド・スーシェ。ハッキリとは分からないが銀行強盗が行なわれている事に気付いた警察等々、様々な伏線が張られ、銀行強盗だけでも中々ワクワクするけれど、銀行強盗後の多方面から追われる展開が更におもしろい。ただ、後半になると前半の陽気さのある裏をかいて進んで行く展開から非常に重苦しいサスペンスになり、前半後半で別物の雰囲気になってしまう。
それに、中盤辺りから思い始めるのは「何でこんなに繋がりがある権力者や犯罪者が皆で揃って警備の厳しい大銀行ではなく、中小銀行に大事な証拠を預けまくっているのか?」。展開はおもしろくなるけれど、都合良過ぎ。それに最後の収束は、そこまで広げた割に物凄くあっさりしているはちょっと微妙な感じかな。

登場人物は、やっぱりわたしはジェイソン・ステイサムは微妙。他の無敵のアクション映画よりも、この映画の冴えないチンピラ風は似合っていると思う。出る映画出る映画微妙だったり、駄作が多いジェイソン・ステイサムの中では白眉の出来。それでもぬらりひょんみたいな顔で、結構高い声なのにかすれて喋る渋くてカッコ良い風が全然渋くもカッコ良くも思えず、このカッコ付け感がどうにも好きじゃない。それに、最後のジェイソン・ステイサムだからの取って付けた様なアクション場面がいらない。それまで追われるサスペンス映画だったのに、ジェイソン・ステイサムだからの理由無き無敵格闘なんて必要か?ロンドンの煉瓦造りの壁の有用な利用法はおもしろかったけれど。むしろ、ジェイソン・ステイサム主演じゃなければ、変にアクション性を出さずもっとおもしろかった様に思えて仕方ないし、題材的にジェイソン・ステイサム主演の必要性を感じられなかったんだけれど。
それよりも、良かったのは娼館を経営する役のデヴィッド・スーシェ。デヴィッド・スーシェと言えば、もちろんエルキュール・ポワロだけれど、あのポワロとは見た目も演技も別モノ。白髪眼鏡で、裏稼業の見た目の怖さが素晴らしい。

この映画で気になるのは、実際におこった「Baker Street robbery」との差異。調べてみた限りでは、実際の「Baker Street robbery」では、近所のハンドバック屋から地下通路を掘り、地下金庫に侵入。アマチュア無線家が屋上の見張りと強盗の無線会話を拾い、警察に通報。銀行強盗が分かり、報道された四日後、政府が国防上の機密保持の為に報道規制を引く「D-Notice」が発令され、その後の動向が分からなくなる。二年後に四人の男がこの事件の犯人として裁判を受け有罪に。警察はこの事件の首謀者は、捕まらなかった自動車販売人だと見なしていたらしい。
「D-Notice」が発令された事により、今でも訳の分からぬままなので、政府と銀行強盗を直接関連させたこの映画を作った模様。確かに話としては小説や映画以上のおもしろさがあるし、それを題材に映画にする、したい気もよく分かる話で、こんな事が実際にあったとは凄い。

この映画、実際に起こった事件を基に、そこにイギリスらしい王室の陰謀を絡めて最後まで一気に展開するサスペンス映画で中々おもしろかった。ただ、前半と後半の毛色が変わる所や、前半で役が立った人物が後半で全然出て来なくなる切り捨ての部分とか、おもしろくはあるけれど多方面に広げて全員が上手い事関連してしまう都合良過ぎる世間の狭さは微妙ではあるけれど、ジェイソン・ステイサム映画にしては上出来。

☆☆☆★★

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